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勾留とは?逮捕との違いと勾留を回避するための3つのポイント
はじめに
ご家族が逮捕された後、「勾留(こうりゅう)」という言葉を耳にすることがあります。逮捕だけでも大変なことですが、この「勾留」が決定されると、身体拘束はさらに長期化し、ご本人の社会生活に計り知れない影響を及ぼす可能性があります。失職や退学、周囲からの信用の失墜など、その代償は大きなものになりかねません。
しかし、「逮捕」と「勾留」の違いを正確に理解されている方は多くありません。実は、この2つは異なる手続きであり、勾留を阻止するためには、逮捕後の限られた時間の中で行うべき重要なポイントが存在します。
この記事では、刑事事件における「勾留」とは具体的にどのような手続きなのか、逮捕とは何が違うのかを明らかにし、長期の身体拘束という事態を回避するための「3つの重要ポイント」について解説します。
Q&A
Q1. 勾留されると、どのくらいの期間、家に帰れないのですか?
勾留が決定されると、まず原則10日間、身柄を拘束されます。さらに、検察官が「やむを得ない事由がある」と判断して請求し、裁判官がそれを認めると、さらに最大10日間延長される可能性があります。つまり、逮捕後の最大72時間と合わせると、起訴・不起訴の判断が下されるまでに最長で23日間も警察の留置場などで生活しなければならないことになります。この期間、当然ながら自宅に帰ることも、会社や学校に行くこともできません。
Q2. 勾留中は、家族と面会したり、手紙のやり取りをしたりできますか?
勾留中は、原則としてご家族も面会(接見)が可能です。ただし、1日に1組、時間は15分程度、警察官の立ち会いのもとで行われるなど、厳しい制限があります。また、事件の内容によっては、裁判官の判断で家族との面会や手紙のやり取りすら禁止される「接見禁止」という処分が下されることもあります。この場合、外部と連絡を取る方法は、弁護士との接見に限られてしまいます。
Q3. 勾留されずに済むケースもあるのですか?
はい。逮捕されたからといって、必ず勾留されるわけではありません。検察官が勾留請求をしない場合や、請求しても裁判官が「勾留の必要なし」と判断して却下した場合には、身柄は釈放されます。逮捕後72時間以内に、弁護士を通じて早期に示談を成立させたり、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを説得的に主張したりすることで、勾留を回避できる可能性はあります。
解説
それでは、「勾留」について、より深く掘り下げていきましょう。逮捕との違いを明確に理解することが、勾留回避への第一歩です。
1 勾留とは何か?- 10日間+10日間の長期身体拘束
勾留とは、逮捕に引き続き、被疑者(または起訴後の被告人)の身柄を拘束する、裁判官の許可(勾留決定)によって行われる強制処分です。
その目的は、逮捕と同じく、被疑者が逃亡したり、証拠(証人や物証など)を隠滅したりするのを防ぐことにあります。しかし、その期間は逮捕とは比べ物にならないほど長くなります。
- 勾留期間
原則10日間 - 勾留延長
やむを得ない事由がある場合、さらに最大10日間の延長が可能
つまり、捜査段階における勾留は、合計で最大20日間に及ぶ可能性があるのです。逮捕からの72時間(3日間)と合わせると、起訴されるかどうかが決まるまでに、最長で23日間も社会から隔離されてしまうことになります。
この20日間以上の身体拘束は、ご本人にとって計り知れない不利益をもたらします。
- 会社を無断で長期間欠勤することになり、解雇されるリスクが高まる。
- 学校の授業や試験に出席できず、留年や退学につながる可能性がある。
- 家族や友人との関係が悪化する。
- 事件が職場や近所に知れ渡り、社会的な信用を失う。
このように、勾留は被疑者の人生を大きく変えてしまうほどの深刻な影響力を持っています。
2「逮捕」と「勾留」の決定的違い
目的は似ていますが、「逮捕」と「勾留」は、その主体と期間において決定的な違いがあります。この違いを理解することが重要です。
逮捕 | 勾留 | |
決定主体 | 主に捜査機関(警察官・検察官) | 裁判官(司法) |
期間 | 最大72時間(3日間) | 最大20日間(10日+10日) |
法的根拠 | 警察段階(48時間)+検察段階(24時間) | 検察官の請求に基づく裁判官の許可 |
逮捕は、捜査の初期段階で行われる、比較的短期間の身柄拘束です。あくまで捜査機関の主導で行われます(逮捕状は裁判官が発付します)。
一方、勾留は、捜査機関(検察官)からの請求を受けて、中立な立場である裁判官がその必要性を審査し、許可して初めて行われる、より重い処分です。これは、不当な身体拘却から国民の自由を守るという、憲法の理念に基づいています。
つまり、逮捕から勾留へと移行するかどうかは、裁判官の判断にかかっているのです。この「裁判官の判断」に働きかけることこそが、弁護活動の鍵となります。
3 勾留が決まるまでの流れ
勾留はどのようにして決まるのでしょうか。逮捕後の流れを追いながら見てみましょう。
逮捕・送致(~72時間)
逮捕後、警察は48時間以内に被疑者を取り調べ、事件を検察官に送致します。送致を受けた検察官は、24時間以内に自らも取り調べを行います。
検察官による勾留請求
検察官は、逮捕から72時間以内に、「このまま身柄を拘束して捜査を続ける必要がある」と判断した場合、裁判所に対して勾留請求を行います。
裁判官による勾留質問
勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を裁判所に呼び、直接話を聞く機会を設けます。これを「勾留質問(こうりゅうしつもん)」といいます。裁判官は、被疑者に対し、疑われている罪について間違いがないか、何か言い分はないかなどを尋ねます。これは、被疑者が自らの意見を裁判官に伝えられる、きわめて重要な機会です。しかし、実際には一人あたり数分から十数分程度で終わることがほとんどです。
勾留決定 または 勾留請求却下
勾留質問や検察官から提出された証拠などを踏まえ、裁判官が最終的に勾留するかどうかを判断します。
- 勾留決定
裁判官が「勾留の理由と必要がある」と判断した場合、勾留状が発付され、10日間の勾留が始まります。 - 勾留請求却下
裁判官が「勾留の理由または必要がない」と判断した場合、請求は却下され、被疑者は直ちに釈放されます。
この流れの中で、いかにして裁判官に「勾留の必要はない」と判断させるかが、勝負の分かれ目となるのです。
【最重要】勾留を回避するための3つのポイント
では、具体的に何をすれば勾留を回避できるのでしょうか。弁護士が実務上、最も重視している3つのポイントを解説します。
ポイント1:逮捕後72時間以内に弁護士に依頼する
何よりもまず、スピードが命です。勾留が決定されてしまってからでは、その決定を覆すのは容易ではありません。勾留を阻止するためには、検察官が勾留請求をする前、あるいは裁判官が勾留決定を下す前の逮捕後72時間以内に弁護士が活動を開始する必要があります。
弁護士は、検察官や裁判官に対し、勾留すべきでない理由を法的な観点からまとめた意見書を提出します。また、勾留質問の前にご本人と接見し、「裁判官に何を、どのように伝えれば効果的か」を具体的にアドバイスします。たった一人で勾留質問に臨むのと、弁護士と綿密な打ち合わせをして臨むのとでは、結果が大きく変わる可能性があります。
ポイント2:被害者がいる事件では、迅速に示談を進める
窃盗、傷害、暴行、痴漢といった被害者が存在する犯罪の場合、被害者との示談交渉を迅速に進めることが、勾留回避に絶大な効果を発揮します。
示談が成立し、被害者から「加害者を許す」という宥恕(ゆうじょ)文言の入った示談書や、「被害届を取り下げる」という内容の嘆願書などを得ることができれば、それは「当事者間で事件が解決に向かっている」ことを示す強力な証拠となります。
これにより、裁判官は以下のように判断する可能性が高まります。
- 「被害者に接触して証拠隠滅(脅迫など)を図る恐れは低い」
- 「すでに当事者間で解決しており、身柄を拘束してまで厳罰を科す必要性は低い」
結果として、勾留請求が却下される可能性が高まります。しかし、加害者側が直接被害者と接触するのは困難であり、かえって事態を悪化させる危険もあります。示談交渉は、冷静かつ専門的な交渉が可能な弁護士に任せることが望ましいといえます。
ポイント3:「逃亡・証拠隠滅の恐れがない」ことを具体的に主張する
勾留が認められるのは、法律上、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があり、かつ、以下のいずれかに該当する場合です。
- 定まった住居を有しないとき。
- 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
言い換えれば、これらの要件に当てはまらないことを説得的に主張できれば、勾留は回避できます。弁護士は、ご本人やご家族から事情を聞き取り、以下のような客観的な証拠を集めて、裁判官に「逃亡や証拠隠滅の恐れはない」と主張します。
逃亡の恐れがないことの証拠
- 安定した職についていること(在職証明書、給与明細など)
- 家族が身元引受人となり、監督を誓約していること(身元引受書)
- 持ち家や賃貸アパートなど、定まった住居があること(登記簿謄本、賃貸借契約書など)
- 病気の治療など、定期的に通院の必要があること(診断書など)
証拠隠滅の恐れがないことの証拠
- 事件に関する重要な証拠(凶器、防犯カメラ映像など)がすでに警察に押収されていること
- 共犯者がおらず、口裏合わせの心配がないこと
- 被害者との示談が成立し、これ以上接触する必要がないこと
- 深く反省し、捜査に協力する意思を示していること
これらの材料を、ただ口頭で伝えるだけでなく、弁護士が法的に意味のある「意見書」としてまとめ、証拠と共に提出することで、裁判官を説得する力が増します。
弁護士に相談するメリット
勾留を回避するために弁護士ができることは、ここまで解説してきたポイントに集約されます。改めて、そのメリットを整理します。
- 勾留決定前の迅速な対応
検察官や裁判官に対し、勾留の必要性がないことを示す意見書を迅速に提出。勾留質問に向けた的確なアドバイスで、ご本人をサポートします。 - 専門家による示談交渉
ご本人やご家族に代わり、被害者と冷静かつ円滑に示談交渉を進めます。早期の示談成立は、勾留回避の最も有効な手段の一つです。 - 勾留決定後の不服申し立て
万が一勾留が決定されてしまっても、諦める必要はありません。弁護士は「準抗告」という不服申し立ての手続きを行い、勾留決定の取り消しを求め、最後まで身柄解放を目指して戦います。 - 接見禁止への唯一の対抗策
もし「接見禁止」がついてしまい、家族との面会もできなくなった場合、弁護士との接見が唯一、外部と連絡を取り、詳細な打ち合わせをする手段となります。ご本人の精神的孤立を防ぎ、防御活動を続ける上で、その役割は重要となります。
まとめ
「逮捕」は最大72時間の短期決戦ですが、「勾留」は最大20日間にも及ぶ長期戦の始まりです。勾留されてしまうかどうかは、その後の人生を左右する、まさに運命の分岐点と言えます。
その分岐点において、良い結果を導き出すための鍵は、以下の3つです。
- 逮捕後72時間以内という時間制限の中で、迅速に弁護士に相談・依頼すること。
- 被害者がいる場合は、弁護士を通じて一日も早く示談を成立させること。
- 弁護士のサポートのもと、「逃亡や証拠隠滅の恐れがない」ことを客観的な証拠で示すこと。
もしご家族が逮捕され、「勾留されるかもしれない」という不安の中にいるのであれば、どうか一刻も早く行動を起こしてください。時間が経てば経つほど、打てる手は少なくなっていきます。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、刑事事件に関する豊富な経験に基づき、勾留阻止・早期の身柄解放に向けた弁護活動に全力を尽くします。ご相談者様の不安に寄り添い、最善の解決策をご提案いたします。まずは、お電話でご相談ください。
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逮捕されたらどうなる?逮捕から起訴までの72時間の流れを徹底解説
はじめに
「家族が警察に逮捕された」
ある日突然、こんな連絡を受けたら、誰でも冷静ではいられないでしょう。頭が真っ白になり、何が起きているのか、これからどうなるのか、不安でいっぱいになるはずです。
実は、逮捕されてから最初の72時間は、その後の人生を大きく左右する、きわめて重要な期間です。この期間にどのような対応をとるかによって、身柄拘束が長引くか、早期に釈放されるか、さらには前科がつくかどうかの分かれ道になることも少なくありません。
この記事では、逮捕されてから検察官が勾留を請求するまでの「72時間」に焦点を当て、その具体的な流れ、行われる手続き、そしてご本人やご家族が取るべき対処法について解説します。
Q&A
Q1. 逮捕されたら、すぐに家族に連絡できますか?
いいえ、逮捕直後にご本人が自ら家族に電話などで連絡することは、原則としてできません。逮捕されると、携帯電話などの私物は取り上げられてしまいます。警察官が家族に逮捕の事実を連絡することはありますが、必ず連絡してくれるとは限りません。また、連絡があったとしても、事件の内容について詳しく教えてもらえることは期待できません。ご本人の状況を正確に把握し、外部と連絡を取るためには、弁護士による接見(面会)となります。
Q2. 逮捕から勾留請求までの間、家族は面会できますか?
逮捕後、検察官による勾留請求までの最大72時間は、たとえご家族であっても面会(接見)が認められないケースが大半です。これは、捜査の初期段階において、口裏合わせなどの証拠隠滅を防ぐためです。しかし、弁護士であれば、この期間中も警察官の立ち会いなく、いつでもご本人と面会し、法的なアドバイスを送ることができます。この「弁護士接見権」は、逮捕された方にとって非常に重要な権利です。
Q3. 逮捕されたら、必ず前科がついてしまいますか?
いいえ、「逮捕=前科」ではありません。前科とは、刑事裁判で有罪判決が確定した場合につくものです。逮捕は、あくまで捜査の第一段階に過ぎません。逮捕された後でも、検察官が「起訴しない」という判断(不起訴処分)を下せば、刑事裁判は開かれず、前科がつくことはありません。逮捕後の早い段階から弁護士が介入し、被害者との示談交渉や検察官への働きかけを行うことで、不起訴処分を獲得し、前科を回避できる可能性は十分にあります。
解説
それでは、逮捕後の72時間に何が起こるのか、時系列に沿って詳しく見ていきましょう。この流れは刑事訴訟法という法律で厳格に定められています。
1 逮捕(〜0時間):身柄拘束の始まり
「逮捕」とは、犯罪の疑いがある人(被疑者)の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、強制的に身柄を拘束する手続きのことです。逮捕には、大きく分けて3つの種類があります。
- 通常逮捕
裁判官が事前に発付した逮捕状に基づいて行われる、最も一般的な逮捕です。警察が事前に捜査を進め、容疑が固まった段階で逮捕に踏み切ります。 - 現行犯逮捕
痴漢や万引きなど、目の前で犯罪が行われている最中や、犯行直後に逮捕する場合です。この場合、逮捕状は必要なく、警察官だけでなく一般人でも逮捕することができます。 - 緊急逮捕
殺人罪などの重大犯罪で、嫌疑が十分にあるものの、逮捕状を請求する時間的余裕がない場合に、令状なしで行われる逮捕です。ただし、逮捕後には直ちに裁判官に逮捕状を請求する手続きが必要です。
いずれのケースでも、逮捕されると警察署に連行され、留置場(または拘置所)で身体を拘束されることになります。この時点から、時間との闘いが始まります。
2 警察官による取り調べと送致(逮捕後〜48時間以内)
逮捕後、警察は48時間以内に、被疑者の取り調べを行い、事件に関する書類や証拠物とともに、事件を検察官に引き継がなければなりません。この手続きを「送致(そうち)」または「送検(そうけん)」と呼びます。
この48時間の間、警察署の取調室で、警察官による集中的な取り調べが行われます。
取り調べで作成される「供述調書」の重要性
取り調べでは、事件について詳細な事情聴取が行われ、その内容は「供述調書(きょうじゅつちょうしょ)」という書面にまとめられます。この供述調書は、後の検察官の判断や、起訴された場合の刑事裁判において、きわめて重要な証拠となります。
注意しなければならないのは、一度署名・押印してしまった供述調書の内容を、後から覆すことは非常に困難であるという点です。警察官に言われるがままに、事実に反する内容や、自分にとって不利な内容の調書にサインしてしまうと、それが証拠となり、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
黙秘権と署名押印拒否権
被疑者には、憲法で保障された重要な権利があります。
- 黙秘権
言いたくないこと、自分に不利益なことは、一切話す必要はありません。 - 署名押印拒否権
作成された供述調書の内容に納得がいかない場合は、署名や押印を拒否することができます。
しかし、逮捕され、閉鎖的な空間で連日取り調べを受けるという極度のプレッシャーの中で、これらの権利を適切に行使することは容易ではありません。警察官から「正直に話せば早く帰れる」「黙っていると不利になるぞ」といった誘導を受けることも考えられます。このような状況で、たった一人で捜査官と対峙するのは、精神的に大きな負担となります。
3 検察官による取り調べと勾留請求(送致後〜24時間以内)
警察から事件の送致を受けた検察官は、自らも被疑者を取り調べます。そして、送致を受けてから24時間以内(つまり、逮捕から合計して72時間以内)に、次のいずれかの判断を下さなければなりません。
- ① 裁判官に勾留(こうりゅう)を請求する
- ② 被疑者を釈放する
勾留請求とは?
検察官が「被疑者の身柄を引き続き拘束して捜査する必要がある」と判断した場合、裁判官に対して「勾留請求」を行います。勾留が認められると、原則として10日間、さらに捜査が必要な場合には最大10日間延長され、合計で最大20日間も身柄拘束が続くことになります。
勾留が認められる主な要件は、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」ことに加え、以下のいずれかに該当する場合です。
・定まった住居がない
・証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
・逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
72時間が経過する前に行われるこの勾留請求が、身体拘束が長期化するかどうかの最初の大きな関門となります。
釈放されるケース
一方で、検察官が「身柄拘束の必要はない」と判断した場合には、被疑者は釈放されます。例えば、以下のようなケースです。
・嫌疑が不十分である
・容疑が晴れた
・罪が軽微であり、逃亡や証拠隠滅の恐れがない
ただし、この時点での釈放は、必ずしも「不起訴処分」が確定したわけではありません。身柄は解放されますが、捜査は継続される「在宅事件」として扱われる場合がほとんどです。
以上が、逮捕から72時間の流れです。この期間は、外部との連絡が遮断された中で、今後の刑事手続きの方向性を決定づける重要な捜査が行われます。だからこそ、この72時間にいかに迅速かつ適切な対応ができるかが、その後の運命を大きく左右するのです。
弁護士に相談するメリット
逮捕後の72時間という限られた時間の中で、ご本人やご家族だけでできることには限界があります。この危機的な状況を乗り越えるために、弁護士のサポートは重要です。早期に弁護士に相談・依頼することで、以下のような大きなメリットが得られます。
ただちに本人と接見(面会)し、精神的な支えとなる
前述の通り、逮捕後の72時間は家族ですら面会することは困難です。しかし、弁護士は「接見交通権」という権利に基づき、逮捕直後から、いつでも、誰の立ち会いもなくご本人と面会することができます。
突然逮捕され、孤独と不安の中にいるご本人にとって、弁護士の存在は大きな精神的な支えとなります。事件の見通しや今後の流れを伝えることで、ご本人を落ち着かせ、冷静な判断ができるようにサポートします。
取り調べに対する具体的なアドバイスで、不利な供述を防ぐ
弁護士は、捜査のプロである警察官や検察官と対等に渡り合うための、法的な知識と経験を持っています。接見を通じて、ご本人から詳しく話を聞き、以下の点について具体的なアドバイスを行います。
・黙秘権をどのような場面で、どのように使うべきか
・供述調書に署名・押印する前に、必ず確認すべきポイント
・事実と異なる内容の調書が作成された場合の対処法
・捜査官からの不当な誘導や圧力への対抗策
これらのアドバイスにより、意図せずして自分に不利な供述調書が作成されるリスクを大幅に減らすことができます。
早期の身柄解放(釈放)に向けた活動
弁護士の最も重要な役割の一つが、勾留を防ぎ、早期の身柄解放を実現することです。検察官が勾留請求をする前、あるいは裁判官が勾留を決定する前に、弁護士は以下のような活動を行います。
- 検察官への意見書提出
逃亡や証拠隠滅の恐れがないこと、家族の監督が期待できることなどを具体的に主張し、勾留請求をしないよう検察官に働きかけます。 - 裁判官との面談
勾留請求が行われた場合、裁判官と面談し、勾留の必要性がないことを直接訴え、勾留請求を却下するよう求めます。 - 準抗告(じゅんこうこく)
万が一、勾留が決定されてしまった場合でも、その決定に対して不服を申し立てる(準抗告)ことで、身柄解放を目指します。
弁護士が迅速に動くことで、勾留という長期の身柄拘束を回避できる可能性が高まります。
被害者がいる事件での迅速な示談交渉
痴漢、暴行、窃盗など、被害者が存在する事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが、その後の処分を大きく左右します。特に逮捕直後の段階で示談が成立すれば、検察官が「当事者間で解決済み」と判断し、勾留請求をせずに釈放したり、最終的に不起訴処分としたりする可能性が格段に上がります。
しかし、加害者本人やその家族が直接被害者と交渉しようとしても、連絡先を教えてもらえなかったり、感情的な対立から交渉が難航したりするケースが多いと言えます。弁護士が代理人として間に入ることで、被害者の感情にも配慮しつつ、冷静かつ円滑に示談交渉を進めることが可能になります。
まとめ
この記事で解説したように、逮捕後の72時間は、法律で定められた手続きが分刻み、時間刻みで進んでいく、非常にタイトで重要な期間です。
- 逮捕後48時間以内
警察による取り調べと検察官への送致 - 送致後24時間以内
検察官による取り調べと勾留請求の判断
この短い時間の中で、ご本人は外部から遮断された状態で厳しい取り調べを受け、今後の人生を左右するかもしれない「供述調書」が作成されます。この危機的状況を乗り切るためには、法律の専門家である弁護士の、迅速かつ的確なサポートが絶対に必要です。
もし、あなたやあなたの大切なご家族が逮捕されてしまったなら、どうか一人で悩まず、一刻も早く弁護士にご相談ください。「まだ逮捕されたばかりだから」「もう少し様子を見てから」と考えている時間が、取り返しのつかない結果につながることもあります。
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、刑事事件に精通した弁護士が、ご依頼者様の不安に寄り添い、権利を守るためにサポートいたします。初回の相談は無料です。まずはお電話いただき、現状をお聞かせください。早期の対応が、最善の解決への第一歩です。
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