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飲酒運転事故の加害者の刑事責任

2025-02-26
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はじめに

近年、飲酒運転に対する社会の目はますます厳しくなっています。少量のアルコールであっても、運転能力を低下させるリスクがあり、重大な人身事故や死亡事故に直結しかねないためです。実際、過去の凄惨な事例を振り返ると、飲酒運転による交通事故で被害者が重度の後遺障害を負ったり、尊い命を奪われたりというケースが後を絶ちません。

こうした背景から、飲酒運転をしたドライバーが人身事故を起こした場合は、厳しい刑事責任を追及される傾向があります。単純な過失運転致傷罪よりも、危険運転致傷罪や、ひき逃げが加われば救護義務違反など、法定刑の重い罪名が適用されるリスクが高まるのです。結果として、実刑判決を免れないケースも少なくありません。

本稿では、飲酒運転事故を起こした加害者が、どのような形で刑法上・道路交通法上の責任を負うのか、そして量刑を左右するポイントや避けられない行政処分との関係などを解説します。万一、ご自身やご家族が飲酒運転事故で刑事責任を問われる可能性がある場合は、早期に法的対応を検討することが不可欠です。

Q&A

Q1:少しの飲酒(いわゆる“酒気帯び運転”)でも人身事故を起こすと危険運転致傷罪になるのでしょうか?

飲酒運転事故がすべて危険運転致傷罪になるわけではありません。危険運転致傷罪が適用されるには、法律上「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」と認定される必要があります。飲酒量や当時の運転挙動が客観的にみて“危険”と評価されるほどでなければ、過失運転致傷罪にとどまるケースもあります。

Q2:実際にどの程度の飲酒量だと「正常な運転が困難」と判断されるのですか?

法律上明確な数値基準はありませんが、高いアルコール濃度が検出される場合は危険運転の可能性があります。さらに、ふらつき運転やブレーキ・ハンドル操作の明らかな異常が認められると、「正常な運転が困難な状態」と立証されやすいです。

Q3:飲酒運転事故でひき逃げした場合、どんな罪名が適用されますか?

飲酒運転事故に加えて救護義務違反(ひき逃げ)がある場合、危険運転致傷罪または過失運転致傷罪と道路交通法72条違反(救護義務違反)が併合されて起訴される可能性が高いです。悪質性がきわめて高いと判断されれば、実刑判決が下るケースも少なくありません。

Q4:飲酒運転事故で被害者が死亡した場合はどうなりますか?

被害者が死亡したケースでは、危険運転致死罪(1年以上20年以下の懲役)や過失運転致死罪(7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金)などが適用されます。とくに飲酒運転で死亡事故を起こすと、危険運転致死罪が適用されるリスクが極めて高く、実刑率が高まります。

Q5:お酒を飲んでいても、被害者の飛び出しなどの過失が大きいと不起訴になる可能性はありますか?

被害者側にも大きな過失がある場合、検察官が「厳罰を課すほどではない」と判断するケースはありますが、飲酒運転という事実だけでも社会的悪質性が非常に高く評価されます。そのため、被害者の落ち度が一部認められても、不起訴や軽微な処分となる可能性は低いのが実務上の傾向です。

Q6:飲酒運転事故で執行猶予を獲得するにはどうすればいいですか?

執行猶予がつくためには、初犯であることや、被害者との示談が成立していること、加害者が強い反省を示し、再発防止策を具体的に講じていることなど、情状面のアピールが非常に重要です。弁護士による適切な示談交渉・情状弁護活動が欠かせません。

Q7:飲酒運転で人身事故を起こすと、どのような行政処分がありますか?

刑事処分(罰金や懲役)とは別に、免許取消や免許停止の行政処分が下されます。飲酒運転事故の場合は免許取消となるケースが非常に多く、かつ欠格期間(再取得不可の期間)が長期化しがちです。

Q8:呼気検査を拒否すると罪が重くなると聞きましたが、本当ですか?

呼気検査の拒否自体が道路交通法違反(検査拒否)にあたり、追加のペナルティ(免許停止・取消や罰則)が科される可能性があります。さらに、「飲酒運転を隠そうとしている」とみなされ、捜査機関の心証を著しく悪くするため、量刑面で不利にはたらきがちです。

Q9:コロナ禍で「車中飲み」などの運転事例が報道されましたが、アルコール量や酒類の種類によって罪の重さは変わりますか?

アルコールの種類自体は罪の重さに直接影響しませんが、体内のアルコール濃度が高いほど「正常な運転が困難」と判断されやすくなります。飲酒の量や時間帯、運転挙動が極端に不自然であれば、危険運転致傷罪への立件リスクは高まります。

Q10:飲酒運転事故を起こしてしまったら、まず何をすべきですか?

まずは被害者の救護と警察への通報が最優先です。救護義務違反(ひき逃げ)をすると量刑がさらに重くなります。次に、速やかに弁護士へ相談し、取り調べ対応や示談交渉、保険会社との連携を含めた戦略を立てることをおすすめします。

解説

飲酒運転事故の加害者が直面する法律リスク

  1. 危険運転致死傷罪
    アルコールや薬物の影響で「正常な運転が困難」な状態で人を死傷させた場合に適用。法定刑が重く、被害者に重傷や死亡事案では実刑となる可能性が非常に高い。
  2. 過失運転致死傷罪
    飲酒はしていたが「危険運転」というほど悪質ではないと判断される場合。とはいえ、酒気帯び運転事故は社会的非難が強く、厳しい量刑が科される傾向。
  3. 道路交通法違反(飲酒運転・酒気帯び運転)
    刑事処分と別に、免許取消・停止など行政処分も追加で科される。

量刑判断のポイント

飲酒運転事故では、以下の要素が特に重視されます。

  • 飲酒量と運転態様
    ふらつき運転やブレーキ痕の有無など。「正常な運転が困難」なほど悪質と評価される。
  • 事故の結果の重大性
    被害者が重傷を負った、後遺障害が残った、あるいは死亡事故に発展した場合。
  • 加害者の前科・前歴
    過去に飲酒運転歴があれば再犯リスクが高く、厳罰化。
  • 示談の有無
    被害者への誠実な謝罪と補償の実施が、検察官や裁判官の心証に大きく影響する。
  • 反省と再発防止策
    アルコール依存の治療プログラムに参加したり、車の使用を制限する措置を講じたりしているかどうか。

具体的な処分例

  • 罰金刑
    酒気帯び運転で人身事故を起こした場合でも、軽微な傷害で初犯かつ示談が成立していれば、罰金刑で済む可能性がある。
  • 懲役刑(執行猶予付き)
    相応に重いケガを負わせたが示談が成立している場合や、初犯で大きな反省を示している場合などは、執行猶予が付く余地がある。
  • 懲役刑(実刑)
    被害者が重傷・死亡し、悪質な飲酒運転態様が認められる場合は実刑判決に至りやすい。前科がある場合やひき逃げを併発していると尚更。

行政処分(免許取消・欠格期間)

飲酒運転事故で人を死傷させた場合、行政処分として免許取消がほぼ確実で、欠格期間(免許再取得不可期間)も長期に設定されるケースもあります。刑事裁判で不起訴や執行猶予となっても、行政処分は独立して行われる点に注意が必要です。

捜査・裁判の流れと実務対応

  1. 事故発生・警察出動
    現行犯逮捕されるか、後日任意で取り調べを受ける。
  2. 捜査(送検・起訴判断)
    飲酒量や態様、被害者のケガの程度などを詳細に捜査。
  3. 示談交渉
    被害者の処罰感情を和らげるため、弁護士が賠償や謝罪をサポート。
  4. 起訴・裁判
    危険運転致傷罪か過失運転致傷罪かを争点に、公判で量刑が決まる。
  5. 判決確定
    罰金・執行猶予・実刑など。並行して行政処分(免許取消・欠格期間)がなされる。

弁護士に相談するメリット

早期の捜査対応

飲酒運転事故は証拠隠滅や再犯防止の観点から逮捕されるリスクが高いです。逮捕前後の段階で弁護士が付けば、取り調べのアドバイスや、不利な供述を回避するサポートを受けられます。

示談交渉の円滑化

被害者が負傷した場合、示談は刑事処分の軽減に直結します。弁護士が謝罪文の作成や適正な賠償額の算定、被害者とのコミュニケーションを担うことで、合意形成が進みやすくなります。

情状弁護の戦略

飲酒運転という悪質態様がある以上、単なる「反省の言葉」では不十分です。弁護士が「アルコール依存の治療を開始した」「同じ過ちを繰り返さないための具体的プランを用意した」などを裁判所に示すことで、執行猶予が得られる可能性が高まります。

行政処分への備え

免許取消を回避することは難しくても、聴聞会や異議申立てで欠格期間の短縮を目指すなど、弁護士がサポートして「少しでも生活への影響を軽減する」方策を検討できます。

まとめ

飲酒運転事故は、交通事故の中でも特に厳しい目が向けられる重大な違反行為です。加害者としては、以下のポイントを強く認識しておく必要があります。

  1. 危険運転致傷罪の適用リスク
    通常の過失運転と比べて法定刑が格段に重い。実刑率が高い。
  2. 被害者のケガの程度が量刑に直結
    重傷・死亡・後遺障害などがあれば、より一層厳しい処罰が予想される。
  3. 示談の重要性
    誠実な賠償と謝罪が、検察や裁判所の判断を左右する。
  4. 再発防止策の具体化
    飲酒運転撲滅の社会的要請が強いため、飲酒習慣改善や車の使用制限などを示す必要。
  5. 早急に弁護士へ相談
    捜査段階の取り調べから示談交渉、行政処分への備えまで、専門的なサポートが必須。

飲酒運転事故を起こしてしまった場合は、一刻も早く弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。捜査機関とのやり取りを含め、示談・裁判での情状弁護・免許取消への対応などをトータルにサポートし、今後の人生に与えるダメージを最小限に抑えるための最善策を一緒に模索いたします。


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