はじめに
「警察からお子さんを逮捕しましたと電話がかかってきた」「朝突然、家族が連行されてしまった」――このような事態に直面したとき、多くの方がパニックに陥ります。何をすべきかわからず、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
しかし、逮捕後の刑事手続きには厳格な時間制限があり、早期に適切な対応を取るかどうかで、その後の処分結果が大きく変わることがあります。本稿では、家族が逮捕された場合に、ご家族がまず確認すべき事項、最初にとるべき行動、逮捕後の手続きの流れ、面会(接見)のルール、活用できる制度、そしてやってはいけないことについて解説します。
Q&A
Q1. 警察から「ご家族を逮捕しました」と連絡がありました。まず何を確認すればよいですか?
A. まずは、(1)逮捕された方が留置されている場所(警察署名)、(2)逮捕の容疑(罪名)、(3)逮捕された日時の3点を必ず確認してください。これらの情報は、その後の弁護活動や面会の際に不可欠な基本情報です。警察からの電話では動揺しがちですが、メモを取りながら落ち着いて聞くことが重要です。
Q2. 家族が逮捕された後、最初にすべきことは何ですか?
A. 最も重要なのは、できるだけ早く弁護士に連絡することです。逮捕後は48時間以内に検察官に送致され、さらに24時間以内に勾留請求の判断がなされます。この初期段階で弁護士が介入することで、勾留を回避できる可能性が高まります。弁護士の心当たりがない場合は、「当番弁護士制度」を利用することも可能です。
Q3. 逮捕された家族にすぐに会うことはできますか?
A. 逮捕から勾留決定までの最大72時間は、原則として家族の面会(接見)は認められません。この間に面会できるのは弁護士のみです。勾留決定後であっても、接見禁止処分が付された場合は、家族であっても面会ができません。そのため、早期に弁護士を選任し、弁護士を通じて本人との連絡を確保することが重要です。
解説
1. 警察からの連絡で確認すべき事項
家族の逮捕を知らされた場合、警察からの電話で以下の3点を必ず確認してください。これらの情報は、弁護士への相談や今後の対応の出発点となります。
- 留置場所(警察署名):逮捕された方がどこに留置されているかを確認します。弁護士が接見に向かう際や、勾留決定後に家族が面会する際に必要な情報です。
- 逮捕の容疑(罪名):どのような犯罪の嫌疑で逮捕されたのかを確認します。罪名によって、想定される刑罰の重さや今後の手続きの見通しが異なります。
- 逮捕された日時:逮捕の日時は、送致期限(逮捕から48時間以内)や勾留請求期限(送致から24時間以内)を計算する基準となります。時間制限を正確に把握するために、逮捕日時の確認は不可欠です。
電話を受けた際は、冷静にメモを取ることが重要です。警察の担当者名や連絡先(電話番号・内線番号)も控えておくと、後の手続きがスムーズに進みます。また、警察から伝えられた内容が十分でない場合は、遠慮せずに質問してください。
2. 最初にすべきこと:弁護士への連絡
家族が逮捕されたことを知ったら、最優先で行うべきことは弁護士への連絡です。逮捕直後の段階で弁護士が介入することには、以下のような重大な意義があります。
- 本人との早期接見:弁護士は、逮捕直後であっても被疑者と面会(接見)することができます(刑事訴訟法39条1項)。家族が面会できない段階でも、弁護士を通じて本人の状況確認や伝言が可能です。
- 取調べへのアドバイス:逮捕直後から警察による取調べが始まります。弁護士が早期に接見し、黙秘権の行使方法や供述調書への対応について助言することで、不利な供述の防止につながります。
- 勾留回避の活動:弁護士は、検察官に対して勾留請求をしないよう意見書を提出したり、裁判官に対して勾留請求を却下するよう求めたりすることができます。逮捕から72時間以内にこの活動を行う必要があるため、早期の弁護士選任が極めて重要です。
- 被害者との示談交渉:被害者がいる事件の場合、早期に示談交渉を開始することが、不起訴処分の獲得や勾留の回避に直結します。弁護士を通じてでなければ、被害者との接触自体が困難なケースがほとんどです。
弁護士への相談は、「早すぎる」ということはありません。逮捕当日中の相談が理想的であり、遅くとも翌日までには弁護士との接触を図ることをお勧めします。
3. 逮捕後の流れ:時間制限のある手続き
逮捕後の刑事手続きには、法律で定められた厳格な時間制限があります。家族としてこの流れを理解しておくことは、今後の見通しを立てるうえで非常に重要です。
(1)逮捕から送致まで(48時間以内)
警察は、被疑者を逮捕した場合、逮捕から48時間以内に、事件を検察官に送致(送検)しなければなりません(刑事訴訟法203条1項)。この間、被疑者は警察署の留置施設に留置され、警察官による取調べを受けます。なお、軽微な事件等では、検察官に送致せず、警察の段階で釈放されること(微罪処分)もあります。
(2)送致から勾留請求まで(24時間以内)
検察官は、事件の送致を受けた後、24時間以内に、被疑者の勾留を裁判官に請求するか、釈放するかを判断しなければなりません(刑事訴訟法205条1項)。検察官が「引き続き身体拘束の必要がある」と判断した場合は、裁判官に勾留請求を行います。検察官がこの段階で起訴の必要がないと判断した場合や、在宅での捜査が可能と判断した場合には、釈放されます。
(3)勾留期間(原則10日間、最長20日間)
裁判官が勾留を認めた場合、勾留期間は原則として10日間です(刑事訴訟法208条1項)。検察官は、やむを得ない事由がある場合に、さらに最大10日間の勾留延長を請求することができます(同条2項)。つまり、勾留期間は最長で20日間に及ぶ可能性があります。検察官は、この勾留期間中に起訴・不起訴の判断を行います。
(4)起訴後の流れ
検察官が起訴した場合、事件は裁判手続きに移行します。起訴後も勾留は継続しますが、保釈請求が可能となります(刑事訴訟法89条)。保釈が認められれば、保釈保証金(いわゆる保釈金)を納付することで、判決までの間、身体拘束から解放されます。不起訴処分となった場合は、直ちに釈放されます。
以上のとおり、逮捕から起訴・不起訴の判断までは最長で23日間となります。この間に弁護士がどのような活動を行うかが、処分結果を左右する重要な要素となります。
4. 面会(接見)のルールと制限
家族が逮捕・勾留された場合、面会(接見)についてはいくつかの重要なルールがあります。
(1)逮捕から勾留決定まで(最大72時間)
逮捕から勾留決定までの間(最大72時間)は、原則として弁護士以外の者は面会することができません。弁護士には、逮捕段階から被疑者と立会人なく面会する権利(接見交通権)が保障されています(刑事訴訟法39条1項)。この段階で弁護士が接見し、本人の状況を確認してご家族に報告することが、家族にとっても重要な安心材料となります。
(2)勾留決定後の一般面会
勾留が決定された後は、家族や知人も面会が可能となります。ただし、一般面会には以下のような制限があります。
- 面会時間は通常15分から20分程度に制限されます
- 1日の面会回数は原則として1回です
- 面会には警察官等の立会いがあり、会話の内容が記録されます
- 面会可能な時間帯は、平日の日中(概ね午前9時頃から午後5時頃まで)に限られます
(3)接見禁止処分が付された場合
裁判官が「証拠隠滅のおそれがある」と判断した場合、接見禁止処分が付されることがあります(刑事訴訟法81条)。接見禁止処分が付されると、弁護士以外の者は面会も手紙のやり取りもできなくなります。共犯事件や否認事件では、接見禁止処分が付される可能性が高くなります。弁護士は、接見禁止処分の一部解除(特定の家族に限って面会を認めるよう求めること)を裁判所に申し立てることが可能です。
5. 当番弁護士制度の活用
弁護士の心当たりがない場合でも、「当番弁護士制度」を利用することで、速やかに弁護士の援助を受けることができます。
- 当番弁護士制度とは:各地の弁護士会が運営する制度で、逮捕された被疑者やそのご家族からの要請に基づき、弁護士が1回無料で接見に赴く制度です。
- 利用方法:ご家族が最寄りの弁護士会に電話で連絡し、「当番弁護士の派遣をお願いしたい」と伝えてください。逮捕された方の氏名、留置先の警察署名、罪名等を伝えると、当番弁護士が原則として当日または翌日に接見に向かいます。
- その後の弁護活動:当番弁護士の初回接見は無料ですが、引き続き弁護活動を依頼する場合は、私選弁護人としての委任契約を締結するか、資力要件を満たす場合は国選弁護人の選任を求めることになります。勾留段階以降は、一定の要件のもと国選弁護人が選任される制度(被疑者国選弁護制度)も利用できます。
当番弁護士制度は、弁護士へのアクセスを確保するための重要なセーフティネットです。「どの弁護士に頼めばよいかわからない」という状況でも、まずはこの制度を利用して、専門家の助言を得ることをお勧めします。
6. やってはいけないこと
家族が逮捕された際に、ご家族が行ってしまいがちな行動の中には、かえって状況を悪化させるものがあります。以下の行動は絶対に避けてください。
- SNSへの投稿:逮捕の事実や事件の内容をSNS等に投稿することは、絶対に避けてください。投稿内容が捜査機関に把握されれば、証拠隠滅のおそれがあるとして接見禁止処分や勾留延長の理由とされる可能性があります。また、報道されていない事件の場合、自ら情報を拡散させることにもなりかねません。
- 証拠の隠滅・破棄:本人に関連する物品やデータを隠したり、破棄したりすることは、証拠隠滅罪(刑法104条)に該当する可能性があります。家族であっても、刑事責任を問われる場合がありますので、関連する物品等には一切手を触れないでください。
- 被害者への直接接触:被害者やその関係者に、ご家族が直接連絡を取ったり、謝罪に出向いたりすることは避けてください。示談交渉は弁護士を通じて行うべきものであり、ご家族が直接接触することは、被害者に対する威迫や口止めと受け取られ、事態を悪化させるおそれがあります。
- 共犯者等との連絡:共犯者やその関係者と連絡を取ることは避けてください。口裏合わせと疑われ、接見禁止処分の発令や勾留延長の根拠とされる可能性があります。
- メディア対応の誤り:報道関係者から取材を受けた場合も、弁護士に相談するまでは一切コメントしないでください。不用意な発言が報道され、裁判に影響を与える可能性があります。
家族としての焦りや不安から行動を起こしたくなる気持ちは理解できますが、上記の行動は逮捕された本人にとって不利益となるだけでなく、ご家族自身が刑事責任を問われる可能性もあります。対応に迷った場合は、必ず弁護士に相談のうえ判断してください。
7. 家族としてできること
逮捕された家族のために、ご家族ができることは限られていますが、以下の対応は弁護活動を支えるうえで重要な意味を持ちます。
- 弁護士への情報提供:逮捕された方の生活状況、勤務先、家族構成、前科の有無等の情報を弁護士に正確に伝えてください。これらの情報は、勾留回避の意見書作成や、検察官に対する処分意見の提出に活用されます。
- 身元引受書の作成:弁護士の指示に基づき、身元引受書を作成することが求められる場合があります。身元引受書は、釈放後に本人の監督を行う意思があることを裁判所に示す重要な書面です。
- 差入れ(衣類・現金等):留置施設では、家族から衣類や現金(留置施設内での日用品購入用)を差し入れることができます。差入れのルールは留置施設ごとに異なりますので、事前に警察署に確認してください。
- 勤務先・学校への対応:逮捕による長期の不在について、弁護士と相談のうえ、勤務先や学校への連絡を適切に行ってください。無断欠勤が続くことによる解雇等の二次的な不利益を防ぐためにも、早期の対応が望まれます。
弁護士に相談するメリット
家族が逮捕された場合、弁護士に相談・依頼することには以下のようなメリットがあります。
- 早期の接見と状況把握:弁護士は逮捕直後から本人と面会し、事実関係の確認や取調べへの対応を助言します。家族が面会できない段階でも、弁護士を通じて本人の状況を把握できます。
- 勾留回避・早期釈放に向けた活動:勾留請求に対する意見書の提出や、勾留決定に対する準抗告の申立てなど、身体拘束の早期解放に向けた法的手段を講じます。
- 示談交渉による不起訴の獲得:被害者がいる事件では、弁護士が代理人として示談交渉を行い、示談成立による不起訴処分の獲得を目指します。
- 家族への適切な助言:逮捕後にご家族がとるべき行動、避けるべき行動について、具体的かつ的確に助言します。
- 手続き全体の見通しの説明:逮捕から起訴・不起訴、裁判に至るまでの手続きの見通しを、わかりやすくご説明します。先が見えない不安を少しでも軽減できるよう努めます。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、茨城県内4拠点(牛久本部・日立支所・水戸支所・守谷支所)で刑事事件に関するご相談を承っております。家族が逮捕されてお困りの方は、初回のご相談から解決まで一貫したサポートが可能ですので、お気軽にご相談ください。
まとめ
本稿では、家族が逮捕された場合にご家族がとるべき対応について解説しました。要点を整理すると以下のとおりです。
- 警察からの連絡では、留置場所・罪名・逮捕日時の3点を確認する
- 弁護士への連絡をご検討いただく。逮捕当日中の相談が理想的である
- 逮捕後は48時間以内に送致、24時間以内に勾留請求、勾留期間は最長20日間と厳格な時間制限がある
- 逮捕から勾留決定までの72時間は弁護士のみが面会でき、接見禁止処分が付されると家族の面会も制限される
- 弁護士の心当たりがなくても、当番弁護士制度を利用すれば初回無料で弁護士の接見を受けられる
- SNS投稿、証拠隠滅、被害者への直接接触は絶対に避け、対応に迷ったら弁護士に相談する
家族が逮捕されるという事態は、誰にとっても突然のことであり、冷静な判断が難しい状況です。しかし、逮捕直後の対応がその後の処分結果に大きな影響を与えることになります。「家族が逮捕された」「警察から連絡が来た」「どうすればよいかわからない」など、緊急のお悩みがございましたら、弁護士法人長瀬総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
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