過失運転致死傷罪とは?刑罰の重さが決まる要因と執行猶予の可能性を徹底解説

Home » コラム » 【犯罪別】交通事件(人身事故)の解説 » 過失運転致死傷罪とは?刑罰の重さが決まる要因と執行猶予の可能性を徹底解説

はじめに

自動車やバイクを運転中に、不注意から人を怪我させたり、死亡させたりしてしまった場合、運転者は「過失運転致死傷罪」という罪に問われる可能性があります。

事故を起こした直後は、被害者の安否を気遣う気持ちとともに、「自分は刑務所に入らなければならないのか」「これからの人生はどうなってしまうのか」という不安が押し寄せてくることでしょう。

交通事故は、誰もが加害者になり得る犯罪です。しかし、その処分の重さは、事故の結果(被害の程度)だけでなく、事故に至った経緯、過失の大きさ、そして事故後の対応によって大きく変わります。場合によっては、正式な裁判を経ずに罰金刑で済むこともあれば、執行猶予付きの判決となり社会生活を継続できることもあります。逆に、対応を誤れば実刑判決を受ける可能性もゼロではありません。

本記事では、人身事故の大部分に適用される「過失運転致死傷罪」について、その定義や刑罰の内容、量刑(刑の重さ)が決まる具体的な要因、そして執行猶予を獲得するための条件について解説します。

過失運転致死傷罪に関するQ&A

まずは、過失運転致死傷罪に関して多くの方が抱く疑問について、簡潔にお答えします。

Q1. 過失運転致死傷罪の刑罰はどのくらいですか?

法律上定められている刑罰(法定刑)は、「7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金」です。

実際には、被害者の怪我の程度が軽く、加害者の過失も小さい場合は「不起訴」や「罰金刑(略式命令)」で済むケースが多く見られます。一方で、死亡事故や重い後遺障害が残る事故、あるいは飲酒や無免許などの悪質な要素がある場合は、正式な裁判となり、拘禁刑(執行猶予付きを含む)が求刑される可能性が高くなります。

Q2. 死亡事故を起こしてしまいましたが、刑務所に入らなければなりませんか?

必ずしも刑務所に入るとは限りません。

死亡事故であっても、加害者に前科がなく、過失の程度が比較的小さい場合や、遺族に対して誠心誠意謝罪し、十分な損害賠償を行うことで示談が成立している場合などには、「執行猶予」が付く可能性があります。執行猶予が付けば、直ちに刑務所に収容されることはなく、社会で生活しながら更生を目指すことができます。

Q3. 「過失」とは具体的にどのようなことですか?

法律上の「過失」とは、結果の発生を予見し、それを回避する義務があったにもかかわらず、その義務を怠ったことを指します。

交通事故においては、「前方不注意(わき見運転など)」「安全不確認」「信号無視」「一時不停止」「スピードの出し過ぎ」などが典型的な過失に該当します。この過失の程度(不注意の度合い)が大きければ大きいほど、刑事責任も重くなります。

過失運転致死傷罪の基本構造

まずは、この犯罪がどのような場合に成立し、どのような法律に基づいているのか、基本的な仕組みを理解しましょう。

法律上の定義と根拠

かつて交通事故による死傷は、刑法上の「業務上過失致死傷罪」で処罰されていました。しかし、悪質な交通事故の増加や被害者感情の高まりを受け、処罰の厳格化が進められ、現在は特別法である「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)」によって規定されています。

同法第5条において、過失運転致死傷罪は以下のように定められています。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

つまり、自動車(バイクを含む)を運転中に、必要な注意義務を怠って人身事故を起こせば、原則としてこの罪が成立します。

危険運転致死傷罪との違い

よく比較されるのが「危険運転致死傷罪」です。これは、アルコールや薬物の影響、制御困難な高速度、あおり運転など、意図的かつ危険な運転行為によって事故を起こした場合に適用されます。

過失運転致死傷罪が「うっかり(不注意)」による事故を対象とするのに対し、危険運転致死傷罪は「わざと(故意に近い危険行為)」を対象としており、刑罰の上限拘禁刑15年(負傷)〜20年(死亡)と格段に重くなっています。

本記事では、一般的な不注意による事故である「過失運転致死傷罪」に焦点を当てて解説します。

刑罰の重さ(量刑)が決まる要因

裁判官や検察官が、最終的な処分(起訴か不起訴か、罰金か拘禁刑か、実刑か執行猶予か)を決める際、どのような事情を考慮するのでしょうか。これを「量刑事情(りょうけいじじょう)」と呼びます。

主に以下の4つの要素が総合的に判断されます。

結果の重大性(被害の大きさ)

もっとも大きな要因は、被害者がどのような結果に至ったかです。

  • 傷害の程度:全治1週間の軽傷と、後遺障害が残る重傷では、当然ながら重傷の方が罪は重くなります。
  • 被害者数:1人の被害者よりも、多数の被害者を出した事故の方が重く処罰されます。
  • 死亡の結果:被害者が亡くなった場合、取り返しのつかない結果として、実刑判決を含む厳しい処分が検討されます。

過失の態様と程度(悪質性)

どのような不注意があったのか、その「過失」の中身も重要です。

  • 軽微な過失:予測が難しい飛び出しなど、運転者にとって回避が困難だった事情があれば、過失は小さいと判断されやすくなります。
  • 重大な過失:信号無視、大幅な速度超過、スマホを見ながらの運転(ながら運転)、居眠り運転などは、過失の程度が大きい(悪質である)とみなされ、厳しい処分の対象となります。

被害弁償と示談の状況

被害者に対して、どれだけ誠実に対応したかは、量刑を大きく左右する重要なポイントです。

  • 示談の成立:被害者(または遺族)と示談が成立していることは、もっとも有利な事情となります。
  • 宥恕(ゆうじょ):示談の中に「加害者を許す」「処罰を望まない」という意思表示(宥恕条項)が含まれている場合、さらに有利に働きます。
  • 被害弁償:示談に至らなくとも、保険金や見舞金によって損害の補填がなされているかどうかが考慮されます。

加害者の事情(主観的事情)

加害者自身の状況や態度も評価対象となります。

  • 前科・前歴:過去に交通違反や事故歴がある場合、特に同種の前科がある場合は、常習性があるとして厳しく処罰されます。逆に、長年無事故無違反であれば有利な事情となります。
  • 反省の態度:事故を真摯に反省し、再発防止策(車の売却、免許の返納など)を講じているかどうかが問われます。
  • 社会的更生の環境:家族や雇用主など、更生を監督・支援してくれる人物(監督者)がいるかどうかも、執行猶予の判断において重要です。

執行猶予の可能性と条件

多くの加害者がもっとも恐れるのは「刑務所に入ること(実刑)」です。しかし、拘禁刑の判決が出ても、「執行猶予」が付けば、直ちに刑務所へ行く必要はありません。

執行猶予とは

執行猶予とは、有罪判決で刑を言い渡す際に、情状によってその刑の執行を一定期間猶予する制度です。

例えば、「拘禁刑1年・執行猶予3年」という判決の場合、「拘禁刑1年」という刑は言い渡されますが、その後の3年間、再び罪を犯すことなく真面目に生活すれば、刑の言渡し自体が効力を失い、刑務所に行く必要がなくなります。

逆に、猶予期間中に新たな罪を犯すと、執行猶予が取り消され、新たな罪の刑と合わせて刑務所に入らなければならなくなります。

執行猶予がつく可能性が高いケース

一般的に、以下のようなケースでは執行猶予がつく可能性が高いと言えます。

  • 初犯であること:過去に禁錮以上の刑を受けたことがない場合。
  • 示談が成立していること:被害者側が処罰を強く望んでいない場合。
  • 過失がそれほど悪質でないこと:飲酒やひき逃げなどを伴わない場合。
  • 社会内での更生環境が整っていること:定職があり、家族の支えがあるなど。

死亡事故であっても、遺族との示談が成立しており、加害者が深く反省している初犯のケースでは、実刑ではなく執行猶予付きの判決となることが少なくありません。

実刑となる(執行猶予がつかない)可能性が高いケース

一方で、以下のような場合は実刑判決のリスクが高まります。

  • 執行猶予期間中の再犯:前回の刑の執行猶予期間中に事故を起こした場合、原則として実刑となります。
  • 重大な過失・悪質性:無免許運転、飲酒運転、ひき逃げなどを伴う場合や、信号無視などの過失が著しい場合。
  • 複数の死傷者:多数の被害者を死傷させた大規模な事故。
  • 示談が不成立で、反省が見られない:被害者感情が峻烈であり、加害者が責任を転嫁するような態度をとっている場合。

弁護士に相談するメリット

過失運転致死傷罪で捜査を受けている場合、少しでも軽い処分(不起訴や執行猶予)を獲得するためには、弁護士のサポートが重要です。

刑事弁護としての示談交渉

「保険会社が示談交渉をしているから大丈夫」と考えるのは危険です。保険会社の示談はあくまで「民事上の損害賠償」の手続きであり、刑事処分を軽くするための活動(宥恕の獲得や嘆願書の作成依頼など)まではカバーしていないことが一般的です。

弁護士は、刑事弁護人の立場から、被害者の心情に最大限配慮しつつ、早期の示談成立と宥恕の獲得を目指して交渉します。これが検察官や裁判官の心証を良くし、処分の軽減に直結します。

早期の身柄解放

逮捕・勾留されてしまった場合、弁護士は逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを主張し、早期の釈放を求めます。早期に釈放されれば、会社や学校への影響を最小限に抑え、元の生活に戻りやすくなります。

不起訴処分の獲得

比較的軽微な事故や、被害者との示談が成立している事案では、検察官に対して「起訴する必要はない(起訴猶予)」と働きかけます。不起訴となれば、裁判は行われず、前科もつきません。これは社会生活を送る上で大きなメリットとなります。

公判(裁判)での有利な弁護

起訴されて正式裁判になった場合、弁護士は法廷で被告人(加害者)の有利な事情を主張・立証します。

  • 過失の程度が実際にはそれほど大きくなかったことの証明。
  • 被告人が深く反省し、再発防止策を講じていることの証明。
  • 家族や職場の上司などに情状証人として出廷してもらい、監督を誓約してもらう。

これらの活動を通じて、執行猶予判決の獲得や刑期の短縮を目指します。

まとめ

過失運転致死傷罪は、法定刑に懲役や禁錮が含まれる重大な犯罪ですが、実際の処分は事故の個別具体的な事情によって大きく異なります。

  • 刑罰:7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金。
  • 量刑の要因:被害結果、過失の程度、示談の有無、反省の態度などが総合的に判断される。
  • 執行猶予:初犯で示談が成立していればつく可能性が高いが、悪質な場合や対応を誤ると実刑のリスクもある。

「うっかり起こした事故だから厳しくされないだろう」という楽観視は禁物です。特に人身事故の場合、被害者の感情や警察の捜査方針によっては、予想以上に厳しい局面に立たされることがあります。

ご自身やご家族が人身事故の当事者となってしまった場合は、できるだけ早い段階で弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。交通事件の経験豊富な弁護士が、適正な処分と早期の解決に向けてサポートいたします。

次にあなたがすべきこと

現在、警察から取り調べを受けている方、またはこれから呼び出しを受ける予定の方は、供述調書にサインをする前に一度弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

当事務所では、刑事事件・交通事件に関する初回相談を受け付けております。今後の見通しや、今やるべきことについて具体的にお話ししますので、お一人で悩まずにお問い合わせください。

その他の刑事事件コラムはこちら


初回無料|お問い合わせはお気軽に

keyboard_arrow_up

0298756812 LINEで予約 問い合わせ