家族が薬物依存かもしれない。相談できる機関と弁護士の役割

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はじめに

「最近、息子の部屋から焦げ臭いにおいがする」
「夫の金遣いが急に荒くなり、言動も情緒不安定で暴れることがある」
「娘の鞄の中から、見慣れない白い粉が入った小さな袋が出てきた」

家族の誰かが、覚醒剤や大麻などの違法薬物に手を染めているかもしれない。そう感じたとき、ご家族が抱く衝撃と恐怖は計り知れません。「警察に通報するべきなのか」「誰に相談すればいいのか分からない」と、パニックに陥ってしまうことでしょう。

薬物問題は「犯罪」であると同時に、専門的な治療を要する「病気(依存症)」でもあります。ご家族だけで抱え込んで解決しようとすると、かえって状況が悪化してしまう可能性があります。

大切な家族を守るために必要なのは、正しい知識と、医療・法律の両面からのサポートです。

本記事では、家族が薬物依存かもしれないと疑った際に確認すべきサイン、相談できる公的な窓口、そして法的トラブルを回避・軽減するために弁護士がどのような役割を果たせるのかについて解説します。

家族の薬物問題を巡るQ&A

まずは、薬物疑惑を持ったご家族が最初に直面する疑問や不安に、Q&A形式でお答えします。

Q1. 薬物をやめさせるために、無理やり病院に連れて行ってもいいですか?

本人の同意なく無理やり連れて行くことは、法的には難しい側面があります。しかし、精神保健福祉法に基づく「措置入院(そちにゅういん)」や「医療保護入院」といった制度があり、自傷他害の恐れがある場合や、家族の同意がある場合に、本人の意思に関わらず入院治療を行えるケースはあります。

ただし、治療の第一歩は「本人に病識を持たせる(自分が病気だと自覚させる)」ことです。まずは専門の相談機関にご家族だけで相談に行き、本人へのアプローチ方法を検討することをお勧めします。

Q2. 部屋から見つかった薬物は、家族が捨ててしまってもいいですか?

これは非常に危険な行為であり、避けるべきです。

違法薬物を所持することは犯罪であり、たとえ家族であっても、それを移動させたり廃棄したりする行為は「証拠隠滅罪(刑法104条)」や、場合によっては家族自身が「所持罪」に問われるリスクがあります。

見つけてしまった場合は、触らずにそのままの状態を保つか、あるいは直ちに弁護士に相談し、自首(じしゅ)の手続きを含めた合法的な処分方法を検討する必要があります。

解説:薬物依存のサインと相談できる機関

「もしかしたら…」という疑いを確信に変え、適切な行動をとるためには、薬物使用の兆候と、それぞれの段階に応じた相談先を知っておくことが重要です。

1. 薬物使用・依存のチェックポイント

薬物の種類によって症状は異なりますが、一般的に以下のような変化が見られる場合、注意が必要です。

身体的変化

  • 目が充血している、瞳孔が開いている、うつろな目をしている。
  • 急激に痩せた、食欲が極端にない(あるいは過食になる)。
  • 腕や足に注射痕がある(長袖を一年中着るようになる)。
  • 常に鼻をすすっている、鼻血が出やすい。
  • 体から甘い匂いや薬品のような独特の匂いがする。

行動・精神的変化

  • 昼夜逆転の生活になり、深夜に外出する。
  • 金遣いが荒くなり、頻繁に無心をする、借金を作る。
  • 感情の起伏が激しくなり、突然怒り出したり、逆にふさぎ込んだりする。
  • 「誰かに監視されている」「盗聴されている」といった妄想めいたことを言う。

不審物

  • パケ(小さなビニール袋)、注射器、ガラスパイプ。
  • 炙った跡のあるアルミホイル、短く切ったストロー。
  • 植物の種子や乾燥した葉(大麻の場合)。

2. 医療・福祉の相談窓口

薬物依存は「病気」です。警察に捕まる前に、あるいは捕まった後でも、回復のためには以下の機関への相談が大切です。

精神保健福祉センター

各都道府県や政令指定都市に設置されている公的機関です。

「薬物・アルコール関連問題」の専門相談窓口を設けていることが多く、精神科医や保健師、精神保健福祉士などの専門家が、匿名での相談に応じてくれます。家族向けの教室やグループミーティングを開催しているところも多く、まずはここへ電話するのが第一歩として推奨されます。

保健所

地域に根ざした相談窓口です。精神保健福祉センターと同様に、心の健康に関する相談を受け付けており、必要に応じて専門の医療機関を紹介してくれます。

薬物依存症専門の医療機関

精神科の中でも、特にアディクション(依存症)治療に特化した病院です。

入院治療や通院プログラム(認知行動療法など)を通じて、薬物を断つための身体的・精神的ケアを行います。

民間の自助グループ(DARCなど)

DARC(ダルク:Drug Addiction Rehabilitation Center)は、薬物依存からの回復を目指す人々が共同生活などを送りながら支え合う民間施設です。

スタッフの多くが依存症の経験者であるため、本人の苦しみや家族の悩みに深く共感し、実践的なアドバイスを提供してくれます。

3. 法改正による「治療・更生」へのシフト

2025年6月より施行された改正刑法により、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」は廃止され、「拘禁刑(こうきんけい)」に一本化されました。

これは、単に刑務作業を科すだけでなく、受刑者の特性に応じた「改善指導」に重点を置くものです。薬物事犯者に対しては、刑務所内で集中的に「薬物離脱指導」が行われるようになっています。

しかし、これは「刑務所に行けば治る」という意味ではありません。刑務所という特殊な環境下で薬物を断てたとしても、社会に戻れば再び誘惑が待っています。

真の回復には、逮捕される前、あるいは逮捕・裁判の段階から、社会内での医療・福祉との連携を構築しておくことが重要なのです。

弁護士に相談するメリット

「薬物の悩みは病院へ」というのは正論ですが、違法薬物を所持・使用している以上、常に「逮捕」のリスクがつきまといます。医療機関と連携しつつ、法的リスクを管理するために、弁護士への相談は重要です。

1. 逮捕前の「自首(じしゅ)」同行

もしご本人が「薬物をやめたいが、自分ではどうにもできない」「警察に怯えて暮らすのが辛い」と感じている場合、弁護士が付き添って警察署へ出頭する「自首」という選択肢があります。

自首が成立すれば、刑法上の減刑事由となるため、起訴されても執行猶予が付く可能性が高まります。また、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを弁護士が主張することで、逮捕されずに在宅事件(家にいながら捜査を受ける)として処理されるケースも増えます。

弁護士は、事前に警察と調整を行い、不当な拘束を避けるための準備を整えます。

2. 逮捕後の早期釈放と保釈請求

万が一、家族が逮捕されてしまった場合、直ちに弁護士に依頼することで、早期の身柄解放を目指せます。

薬物事件は勾留が長引きやすいですが、弁護士は裁判所に対し、「家族による監督体制があること」「専門医療機関への受診を約束していること」などを主張し、勾留の阻止や、起訴後の速やかな保釈(ほしゃく)を請求します。

特に、依存症治療のために入院が必要な場合、病院への転院を条件とした保釈を交渉することも考えられます。

3. 「執行猶予」獲得に向けた環境調整

裁判において、実刑(刑務所行き)を回避し、執行猶予判決を得るためには、「再犯の可能性がない」と裁判官を説得する必要があります。

弁護士は、単に反省の言葉を述べるだけでなく、以下のような具体的な再犯防止策を提示します。

  • 医療機関との連携: 専門病院への通院・入院手続きを代行し、治療計画を裁判所に提出する。
  • 自助グループへの参加: DARCなどの回復施設への入所やプログラム参加を確約させる。
  • 家族環境の整備: 家族に対して、本人をどう監督・サポートすべきか具体的にアドバイスし、その体制を法廷で証言してもらう。

4. 家族の精神的・法的負担の軽減

家族が逮捕されると、警察からの事情聴取、家宅捜索、マスコミ対応、勤務先への対応など、ご家族には多くの負担がかかります。

弁護士は、ご家族の代理人として警察との連絡窓口になり、法的なアドバイスを提供することで、ご家族を守る「防波堤」となります。

「こんなことを警察に話していいのだろうか」「職場にはどう説明すればいいのか」といった日々の不安に対し、法的な観点から適切な助言を行います。

まとめ

家族が薬物依存かもしれないという疑いは、放置すればするほど、事態は悪化します。誰にも相談できずに孤立してしまうことが一番のリスクです。

薬物問題は、ご家族だけで解決できるものではありません。

「医療(治療)」と「法律(弁護)」という2つの専門的な車の両輪があって、ご本人の更生と、家族の平穏な生活を取り戻すことができます。

「まだ逮捕されていないけれど、不安で仕方がない」
「警察に相談する前に、法律の専門家の意見を聞きたい」

そのような段階でのご相談こそ、私たちがお力になれる場面です。

守秘義務を厳守いたしますので、安心してご連絡ください。大切なご家族を救うために、一緒に第一歩を踏み出しましょう。

【弁護士法人長瀬総合法律事務所】

薬物問題は早期相談が解決への鍵です。ご家族からのご相談、逮捕されたご本人への接見依頼は、当事務所のウェブサイトのお問い合わせフォーム、またはお電話にて受け付けております。

※本記事は一般的な法律知識の解説であり、具体的な事案の解決を保証するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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