密輸・栽培などの営利目的の薬物犯罪。その刑罰の重さと弁護活動

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はじめに

「海外旅行先で親しくなった人物から『荷物を預かってほしい』と頼まれ、帰国時に空港で逮捕されてしまった」

「自宅で大麻を栽培していたところ、その量や器具から『売るつもりだったのだろう』と営利目的を疑われている」

近年、SNSを通じた「闇バイト」の募集や、国際的な薬物密輸組織の巧妙な手口により、一般の方が知らず知らずのうちに重大な薬物犯罪に巻き込まれるケースや、安易な気持ちで栽培・譲渡に手を染めてしまうケースが後を絶ちません。

薬物犯罪において、最も警戒すべき点は「営利目的(えいりもくてき)」があったかどうかという点です。自分で使うための「単純所持・使用」と、利益を得るための「営利目的」では、適用される法律の条文が異なり、科される刑罰の重さに天と地ほどの差が生じます。

2025年6月の法改正により、従来の「懲役刑」は廃止され、指導や更生プログラムに重点を置いた「拘禁刑(こうきんけい)」へと一本化されましたが、営利目的の薬物犯罪に対する厳罰化の姿勢が変わったわけではありません。

「少し小遣い稼ぎになればと思った」「頼まれただけで、報酬はもらっていない」という言い分が通るのか、どれほどの刑期が想定されるのか。

本記事では、密輸や栽培など、特に重い処分が予想される営利目的の薬物犯罪について、拘禁刑を踏まえた刑罰の重さと弁護活動について詳しく解説します。

営利目的の薬物犯罪に関するQ&A

まずは、密輸や栽培、営利目的についてよくある疑問にQ&A形式でお答えします。

Q1. 「営利目的」とは具体的にどういう意味ですか?実際に利益が出ていなくても該当しますか?

法律上の「営利目的」とは、「犯人が自ら、または第三者をして、財産上の利益を得る、または得させる目的」を指します。

重要なのは「目的」があったかどうかであり、実際に売却して利益を得た(既遂)かどうかは問いません。また、継続的な商売として行っていた場合はもちろんですが、たった1回の密輸や譲渡であっても、そこに報酬や対価を期待する意思があれば「営利目的」とみなされます。

現金だけでなく、借金の帳消しや薬物の現物支給を受けることなども「財産上の利益」に含まれます。

Q2. 友人に頼まれて荷物を運んだだけです。中身が薬物とは知らなくても罪になりますか?

いわゆる「運び屋(ブラインド・ミュール)」のケースです。この場合、「中身が違法薬物である」という認識(故意)が全くなかったと裁判で認められれば、無罪となります。

しかし、「中身は知らないが、何か違法なものかもしれない」という程度の認識(未必の故意)があった場合は罪に問われます。捜査機関は、「高額な報酬」「不自然な渡航日程」「隠匿工作の有無」などの客観的状況から、「中身が薬物であることを認識していたはずだ」と厳しく追及してきます。

Q3. 「懲役」から「拘禁刑」に変わりましたが、刑罰は軽くなったのですか?

いいえ、刑罰そのものが軽くなったわけではありません。

2025年6月より導入された「拘禁刑」は、従来の「懲役(刑務作業が義務)」と「禁錮(刑務作業はなし)」を統合した新しい刑罰です。

拘禁刑の特徴は、受刑者の特性に応じて、刑務作業と「改善指導(薬物離脱プログラムなど)」を柔軟に組み合わせられる点にあります。これまでの懲役刑と同様に身体を拘束されることに変わりはなく、営利目的の薬物事犯に対しては、依然として実刑(刑務所への収監)が原則となる厳しい運用が続いています。

解説:営利目的の薬物犯罪と刑罰の重さ

薬物事件において「営利目的」が付加されると、具体的にどれほど刑罰が重くなるのでしょうか。ここでは、主要な薬物ごとの法定刑と、営利目的が認定される基準について解説します。

※以下は最新の法令(拘禁刑)に基づきます。

1. 単純な犯罪と「営利目的」の刑罰比較

日本の薬物法制は、自己使用目的の犯罪よりも、営利目的の犯罪を極めて重く処罰する構造になっています。

覚醒剤(覚醒剤取締法)

覚醒剤は日本で厳しく取り締まられている薬物の一つです。

  • 輸入・輸出・製造
    • 単純(非営利): 1年以上の有期拘禁刑
    • 営利目的: 無期または3年以上の拘禁刑1000万円以下の罰金(併科)
  • 所持・譲渡・譲受
    • 単純(非営利): 10年以下の拘禁刑
    • 営利目的: 1年以上の有期拘禁刑500万円以下の罰金(併科)

※営利目的での密輸(輸入)は、最高刑が無期拘禁刑となり、裁判員裁判の対象事件となります。

大麻(大麻取締法)

若年層を中心に検挙数が増加している大麻についても、重罪であることに変わりはありません。

  • 栽培・輸入・輸出
    • 単純(非営利): 7年以下の拘禁刑
    • 営利目的: 1年以上の拘禁刑300万円以下の罰金(併科)
  • 所持・譲渡・譲受
    • 単純(非営利): 7年以下の拘禁刑
    • 営利目的: 1年以上10年以下の拘禁刑300万円以下の罰金(併科)

麻薬(コカイン・MDMA・ヘロインなど)

ヘロイン以外の麻薬(MDMA、コカインなど)についての法定刑は以下の通りです。

  • 輸入・輸出・製造
    • 単純(非営利): 7年以下の拘禁刑
    • 営利目的: 1年以上10年以下の有期拘禁刑300万円以下の罰金(併科)

2. なぜ「営利目的」だとこれほど重くなるのか

法律が営利目的の薬物犯罪を厳罰化している理由は、主に以下の2点です。

  1. 拡散の元凶であるため
    営利目的で密輸や売買を行う者は、薬物を社会にばら撒き、新たな中毒者を生み出す「供給源」です。社会全体への害悪が大きいため、厳しく処罰されます。
  2. 経済的な利得の剥奪
    薬物犯罪は巨額の利益を生むビジネスとして行われます。拘禁刑だけでなく高額な罰金刑を併科することで、「割に合わない」という経済的な打撃を与える狙いがあります。

3. 「拘禁刑」導入による変化

改正刑法(2025年6月施行)により導入された「拘禁刑」は、単に刑務作業をさせるだけでなく、再犯防止のための「指導」を重視しています。

薬物事犯の場合、刑務所内で「薬物依存離脱指導」などのプログラムを受ける時間が、従来の懲役刑よりも柔軟に確保されるようになりました。

しかし、これは「刑が軽くなった」ことを意味しません。営利目的の重大事犯については、長期間の身体拘束を通じて罪を償わせるという司法の態度は維持されています。

4. 裁判員裁判と特例法による没収

覚醒剤の営利目的輸入などの重大事件は、一般市民が審理に参加する「裁判員裁判」の対象です。市民感覚が反映され、検察側の求刑に近い厳しい判決が出される傾向にあります。

また、「麻薬特例法」に基づき、薬物犯罪によって得た不正な利益(薬物犯罪収益)は、原則としてすべて没収されます。

もし既に使ってしまって手元にない場合でも、その金額に相当する金銭を納付させる「追徴(ついちょう)」が行われます。

有罪となれば、長期間の拘禁、高額な罰金、そして不正利益の没収・追徴という三重の制裁を受けることになります。

弁護士に相談するメリット

営利目的の薬物事件は、実刑判決の可能性が極めて高く、捜査も徹底的に行われます。このような重大事件において、弁護士による高度な弁護活動が不可欠です。

1. 「営利目的」の否定(罪名の変更)

最も重要な弁護方針の一つが、「営利目的の否定」です。

大量の薬物を所持していても、それが「数年分のストックとして安く買っただけ」であることや、「友人と共同購入したが、転売益を得るつもりはなかった」といった事情があれば、証拠に基づいて主張します。

営利目的が否定され、単純所持や単純輸入にとどまれば、法定刑の上限が下がり、執行猶予付き判決の可能性が現実的なものとなります。弁護士は、薬物の量、生活状況、資産状況などを分析し、検察官の主張する「営利目的の推定」を崩すための論理を構築します。

2. 密輸事件における「故意」の争い

知人から荷物を預かっただけの「運び屋」事案では、薬物の認識(故意)があったかどうかが最大の争点となります。

弁護士は、依頼者と依頼元の人物との関係性、やり取りの履歴(SNSやメール)、依頼された際の具体的な状況などを精査します。「報酬が相場より著しく高額ではない」など、故意を否定する事情を積み上げ、無罪判決や不起訴処分を目指します。

3. 量刑の減軽(情状弁護)

事実関係を認める場合でも、少しでも軽い処分を得るための活動を行います。

  • 従属的な役割の主張: 組織的な犯行の中で、指示されるがままに動いた末端の役割であったことを主張します。
  • 更生環境の整備: 「拘禁刑」の趣旨に鑑み、出所後の更生計画や家族による監督体制を具体的に提示することで、社会内での更生の可能性を訴えます。

4. 身体拘束からの解放

営利目的の薬物事件は、証拠隠滅や逃亡の恐れが高いとみなされ、逮捕・勾留が長引きやすく、保釈も認められにくい傾向にあります。

弁護士は、証拠隠滅が物理的に不可能であることや、身元引受人の存在などを裁判所に説得的に主張し、保釈の許可を求めます。

まとめ

密輸や栽培などの営利目的の薬物犯罪は、法改正によって「拘禁刑」となった現在でも、極めて厳しい態度で臨まれる犯罪類型です。

「初犯だから許されるだろう」という甘い見通しは通用しません。

しかし、どのような状況であっても、適正な手続きの下で裁かれる権利は誰にでもあります。捜査機関の見立てが事実に反して過大であるならば、それは正されなければなりません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、茨城県内を中心に、最新の法制度(拘禁刑)に対応した刑事弁護の実績を有しています。

「家族が空港で逮捕された」「営利目的を疑われている」といった緊急事態に直面された場合は、一刻も早く当事務所へご相談ください。

私たちは、刑事事件のプロフェッショナルとして、依頼者様とそのご家族の人生を守るために、迅速かつ最善の弁護活動を行います。

弁護士法人長瀬総合法律事務所

刑事事件は初動が重要です。特に薬物事犯は取調べ対応が結果を左右します。

ご相談・接見のご依頼は、当事務所のウェブサイトのお問い合わせフォーム、またはお電話にて24時間受け付けております。お一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください。

※本記事は一般的な法律知識の解説であり、具体的な事案の解決を保証するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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