窃盗の被害届を取り下げてもらうには?示談交渉の具体的な進め方

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はじめに

万引きや置き引き、自転車泥棒などの窃盗事件を起こしてしまい、被害者の方が警察に被害届を提出してしまった…。このままでは、警察の捜査が本格化し、逮捕されたり、起訴されて前科がついたりしてしまうかもしれない。そんな絶望的な状況に、強い不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この危機的状況を打開し、事件を穏便に解決するための、最も重要で効果的な鍵。それは、被害者の方に「被害届を取り下げてもらう」ことです。

しかし、被害届は、一度警察に受理されてしまうと、魔法のように消えてなくなるわけではありません。被害届を取り下げてもらうためには、加害者が真摯に反省し、被害者に謝罪と賠償を尽くす「示談交渉」を行い、被害者の許しを得ることが重要です。

この記事では、窃盗事件で被害届を取り下げてもらうことの法的な意味と、そのために必要となる示談交渉の具体的な進め方、そしてその重要性について解説します。

Q&A

Q1. 被害届が取り下げられたら、警察の捜査は完全にストップして、事件はなかったことになるのですか?

捜査が事実上ストップすることは多いですが、理論上は継続可能です。窃盗罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる「非親告罪」です。そのため、被害届が取り下げられても、警察や検察が捜査を継続し、起訴することも法律上は可能です。しかし、日本の検察官には「起訴便宜主義」という広範な裁量が認められており、被害者が処罰を望んでいない事件を、あえて起訴することは、よほど特殊なケースでない限りありません。したがって、実務上は「被害届の取下げ=事実上の捜査終了・不起訴処分」と考えていただいて、差し支えありません。

Q2. 被害者に直接会って、誠心誠意謝罪すれば、被害届を取り下げてくれるのではないでしょうか?

絶対にやめてください。その行動は、事態を好転させるどころか、最悪の方向へと導く可能性がきわめて高いです。被害者は、加害者であるあなたに対して、恐怖心や怒り、不信感を抱いています。そこにあなたが直接現れれば、被害者は「脅しに来たのか」「ストーカーされるのではないか」と、さらに強い恐怖を感じ、警察に「加害者が接触してきた」と通報されかねません。そうなれば、証拠隠滅のおそれありとして、逮捕される直接的な原因となります。被害者との接触は弁護士を介して行うことが重要です。

Q3. 示談書には、具体的にどのようなことを書いてもらえば、被害届の取下げに繋がりますか?

示談書の中でも、特に重要なのが「宥恕(ゆうじょ)条項」と「被害届取下条項」です。

  • 宥恕条項
    「乙(被害者)は、甲(加害者)からの謝罪と被害弁償を受け入れ、甲を宥恕する(許す)。」という文言です。
  • 被害届取下条項
    「乙は、本件に関し〇〇警察署に提出した被害届を、速やかに取り下げるものとする。」という文言です。

この2つが揃った示談書を検察官に提出することで、被害者が処罰を望んでいないことを、客観的な証拠として示すことができるのです。

解説

「被害届の取下げ」が持つ、絶大な効果

まず、被害届が取り下げられることが、なぜそれほど重要なのかを理解しましょう。

  • 被害届とは
    犯罪の被害に遭ったという事実を、被害者が捜査機関に申告する書類であり、警察が捜査を開始するきっかけ(端緒)となります。
  • 被害届の取下げとは
    被害者が、警察に対し「被害の申告を撤回します。加害者の処罰は望みません。」という意思を明確に示す行為です。

前述の通り、窃盗罪は「非親告罪」ですが、実務上、検察官は処分を決定するにあたり、被害者の意思をきわめて重視します。被害届が取り下げられ、当事者間で円満に解決している事案について、検察官が国のリソースを使ってまで起訴することは、公益にそぐわないと考えるのが通常です。そのため、被害届の取下げは、不起訴処分を勝ち取るための、最も強力な武器となるのです。

被害届取下げへの唯一の道、それが「示談交渉」

被害届は、提出した被害者自身の意思でしか取り下げることができません。そして、被害者がその意思を持つためには、加害者が引き起こした損害を回復し、傷ついた感情を癒すための「示談」が不可欠となります。

示談交渉は、単にお金を払うだけの行為ではありません。以下の2つの要素を、誠意をもって実現するプロセスです。

  • ① 経済的被害の完全な回復(被害弁償)
    盗んだ金品相当額の弁償はもちろんのこと、被害者が事件対応に費やした時間や労力、精神的な苦痛に対する慰謝料・迷惑料を支払います。
  • ② 精神的被害の回復(謝罪と宥恕)
    心からの謝罪を伝え、二度と過ちを繰り返さないと誓うことで、被害者の怒りや不安を和らげ、「もう罰しなくてもよい」という許し(宥恕)を得ることを目指します。

この2つが揃って初めて、被害者は被害届の取下げに応じてくれる可能性が出てくるのです。

弁護士が行う、示談交渉の具体的なステップ

被害感情の強い被害者との示談交渉は、慎重かつ専門的な対応が求められます。

ステップ ① :弁護士による連絡先の入手

これがスタートです。加害者が警察に聞いても、個人情報保護を理由に、被害者の連絡先は絶対に教えてもらえません。弁護士が、守秘義務を負う代理人として、捜査機関(警察や検察)に「示談のため」と目的を告げ、被害者の方に弁護士限りで連絡先を教えてよいか確認してもらい、同意を得る必要があります。弁護士でなければ、交渉のスタートラインにすら立てないので。

ステップ ② :弁護士による、丁寧な謝罪と交渉の開始

弁護士は、あなたに代わって被害者の方に連絡を取り、まずは丁重に謝罪の意を伝えます。その上で、示談の話し合いに応じていただけるよう、丁寧にお願いします。決して高圧的になったり、無理強いしたりするようなことはありません。

ステップ ③ :示談書の作成と締結

交渉がまとまれば、その合意内容を、法的に有効な「示談書」として作成します。この示談書に、前述した「被害届取下条項」と「宥恕条項」を明記することが、何よりも重要となります。

ステップ ④ :「被害届取下書」の作成と提出

実務上は、示談書とは別に、「被害届取下書」または「嘆願書」というタイトルの書面を作成し、被害者の方に署名・押印をいただくことが一般的です。そして、その書面を弁護士が警察署や検察庁の担当者に直接提出し、被害届が取り下げられた(処罰を望まない意思が示された)ことを、正式に報告します。

弁護士に相談するメリット

  • 交渉の機会を創出できる
    そもそも、弁護士でなければ被害者の連絡先を入手できず、示談交渉を始めることすらできません。弁護士は、そのスタートラインに立つための唯一の存在です。
  • 被害者の感情を刺激せず、円滑な交渉を実現する
    加害者への怒りや恐怖でいっぱいの被害者に対し、冷静な第三者である弁護士がクッション役となることで、被害者も安心して話し合いに応じてくれる可能性が高まります。
  • 不起訴に直結する、法的に有効な書面を作成できる
    検察官を納得させるために必要な条項を網羅した、法的に不備のない示談書や被害届取下書を作成することができます。これにより、示談の効果を最大限に引き出します。
  • 迅速な対応で、事件の早期終結を目指す
    警察の捜査が本格化する前、あるいは検察官が起訴・不起訴の処分を決める前に、弁護士が迅速に示談を成立させることで、逮捕の回避や、事件の早期終結を実現します。

まとめ

窃盗事件で被害届を出されてしまった場合、その後のあなたの運命は、被害届を取り下げてもらえるかどうかにかかっている、と言っても過言ではありません。そして、そのための唯一の道が、被害者の方との示談交渉です。

加害者本人が被害者と直接接触しようとすることは、事態を悪化させるだけであり、絶対に避けるべきです。

もしあなたが、窃盗事件で被害届を提出されてしまい、途方に暮れているのであれば、一刻も早く弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。私たちが、あなたに代わって被害者の方と誠実に向き合い、被害届の取下げと事件の円満な解決を実現するために、全力を尽くします。

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