盗撮の示談金相場はいくら?被害者と示談を進めるための具体的な方法

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はじめに

駅のエスカレーターや会社のトイレなどで、出来心から盗撮行為に及んでしまった…。もし、その事実が発覚すれば、2023年7月に施行された「撮影罪」という重い罪によって、あなたの人生は大きく変わってしまう可能性があります。

このような危機的状況において、前科が付くことを回避し、社会生活への影響を最小限に抑えるために、最も重要かつ効果的な手段が「被害者との示談」です。示談を成立させ、被害者の方から許し(宥恕)を得ることができれば、検察官が不起訴処分とする可能性が大きく高まります。

しかし、盗撮は被害者のプライバシーと尊厳を著しく侵害する卑劣な行為であり、被害感情はきわめて強いのが通常です。そのため、「示談金は一体いくら支払えばいいのか」「どうすれば被害者の方に謝罪し、話し合いのテーブルについてもらえるのか」といった切実な疑問と困難が伴います。

この記事では、盗撮事件における示談金の具体的な相場、そして困難を極める示談交渉を円滑に進めるための具体的な方法と流れについて解説します。

Q&A

Q1. 示談金が高すぎて、とても一括では払えません。減額交渉や分割払いは可能ですか?

はい、可能です。被害者の方が提示する示談金額が、過去の裁判例などから見て著しく高額である場合には、弁護士がその妥当性について交渉し、減額を目指します。また、どうしても一括での支払いが困難な経済的事情がある場合は、その旨を弁護士から丁寧に説明し、被害者にご理解いただいた上で、分割払いの合意形成を目指します。ただし、示談は被害者の方の感情に大きく左右されるため、真摯な謝罪と反省の態度が前提となります。

Q2. 被害者が未成年者の場合、誰と示談交渉をすればよいですか?

被害者が未成年(18歳未満)の場合、示談契約などの法律行為を単独で行うことはできません。そのため、交渉の相手方は、その親権者であるご両親となります。未成年の子どもが被害に遭ったご両親の怒りや悲しみは計り知れず、交渉は成人被害者のケース以上に困難となります。加害者本人が接触するべきではなく、児童・思春期の問題に理解のある、経験豊富な弁護士による、慎重な対応が求められます。

解説

盗撮事件の解決に不可欠な「示談」。その相場と具体的な進め方を詳しく見ていきましょう。

1. 盗撮事件における示談の重要性

盗撮事件において、示談は単なる「お詫び」以上の、決定的な意味を持ちます。

刑事処分への影響

検察官が起訴・不起訴を判断する際、最も重視する要素の一つが「被害者の処罰感情」です。示談が成立し、示談書の中に「加害者を許します(宥恕します)」「加害者に対する刑事処罰を望みません」という文言(宥恕条項)を入れてもらうことができれば、検察官は「被害者の被害感情は回復され、当事者間での解決も済んでいる」と判断し、不起訴(起소유예)処分とする可能性が高くなります。前科を回避するためには、示談の成立が重要条件と言っても過言ではありません。

民事上の賠償責任の完了

盗撮は、被害者のプライバシー権や肖像権を侵害する不法行為であり、加害者は民事上の損害賠償責任を負います。示談は、この損害賠償問題を、裁判外の話し合いで一括して解決する意味も持ちます。示談書に「本件に関して、当事者間には本示談書に定めるもののほかに何らの債権債務関係がないことを相互に確認する」という清算条項を入れることで、後から追加で損害賠償請求をされるといったトラブルを防ぎます。

2. 盗撮の示談金、その相場と金額を左右する要因

示談金の額に法的な決まりはなく、あくまで当事者間の合意によって決まります。しかし、過去の多くの事例から、ある程度の相場観が存在します。

盗撮の示談金相場

一般的に、20万円~100万円程度が目安となります。ただし、あくまでも目安に過ぎず、個別の事例によって異なります。

  • 比較的軽微なケース:~ 50万円
    (例:駅のエスカレーターで、服の上から一度だけスカート内を撮影した、など)
  • 悪質なケース:50万円 ~ 100万円以上
    (例:トイレや更衣室、自宅に侵入しての撮影、長期間・多数回の撮影、裸体を撮影した、など)

示談金額を変動させる主な要素

上記の相場は、以下のような要素によっても変動します。

  • 撮影場所のプライベート性
    駅や商業施設といった公共の場所よりも、トイレ、更衣室、試着室、自宅、ホテルの客室など、通常、人が裸になったり無防備になったりする、プライベート性の高い空間での盗撮は、悪質性が格段に高いと判断され、示談金も高額になります。
  • 撮影された内容
    下着姿、あるいは裸体など、肌の露出度が高いほど、被害者の精神的苦痛は大きいとされ、示談金は高額になります。
  • 撮影の回数・期間・計画性
    一度きりの突発的な犯行よりも、小型カメラを仕掛けるなど計画的であったり、長期間にわたり多数の盗撮を繰り返していたりした場合は、常習性・悪質性が高いと見なされ、高額になります。
  • 撮影データの拡散の有無
    盗撮したデータをインターネットのサイトに投稿したり、他人に譲渡したりした場合、被害は不特定多数に、かつ半永久的に拡散されることになり、被害は甚大です。この場合の示談金は数百万円以上に跳ね上がることもあり、そもそも示談交渉自体が不可能になるケースも少なくありません。
  • 加害者と被害者の関係性
    見ず知らずの相手への盗撮も悪質ですが、会社の同僚、友人、隣人など、信頼関係にあった相手への盗撮は、裏切りの要素が加わるため、被害者の精神的苦痛はより大きいとされ、示談金も高額になる傾向にあります。

3. 弁護士が進める、盗撮示談の具体的な方法と流れ

被害感情の強い盗撮事件の示談交渉は、慎重に進める必要があります。

ステップ①:弁護士による、被害者への連絡許可の取り付け

全ての始まりは、弁護士が検察官などの捜査機関に対し、「加害者が深く反省し、謝罪と賠償を尽くしたいと望んでいるため、示談交渉の機会をいただきたい」と申し入れ、弁護士限りで被害者の方の連絡先を教えてもらうことです。このプロセスなくして、示談交渉は始まりません。

ステップ②:弁護士から被害者への、丁寧なアプローチ

弁護士は、被害者の方の心情に最大限配慮しながら、電話や手紙で最初のコンタクトを取ります。加害者の代理人として謝罪の言葉を伝えるとともに、示談の話し合いに応じていただけるよう、丁寧にお願いします。

ステップ③:具体的な示談条件の交渉

被害者の方が話し合いに応じてくださった場合、具体的な条件の交渉に入ります。

  • 示談金額の協議
    相場や事案の悪質性を踏まえ、双方が納得できる金額を探ります。
  • 盗撮データの完全な破棄の約束と実行
    前述の通り、弁護士の監督下でデータを復元不可能な形で破棄し、その証明を行うことを約束します。
  • 宥恕条項等の獲得交渉
    不起訴処分のために最も重要な「加害者を許す」という宥恕文言を示談書に盛り込んでもらえるよう、粘り強く交渉します。

ステップ④:法的に有効な示談書の作成・締結

合意した内容を、後々のトラブルを完全に防ぐための条項(被害届の取下げ、接触禁止、清算条項など)を網羅した、法的に有効な示談書として作成し、双方で署名・押印します。

ステップ⑤:示談金の支払いと、捜査機関への報告

示談書を取り交わした後、速やかに示談金を支払い、示談書一式の写しを検察官に提出して、示談が円満に成立したことを報告します。

弁護士に示談交渉を依頼するメリット

盗撮事件の示談は、弁護士なしでは困難です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 交渉のスタートラインに立てる
    そもそも、弁護士でなければ被害者の連絡先を知ることができず、交渉の機会すら得られません。
  • 被害者の強い処罰感情に対応できる
    加害者を憎む被害者に対し、冷静な第三者である弁護士がクッション役となることで、感情的な対立を避け、話し合いの場を設けることが可能になります。
  • 適正な金額での解決に導く
    弁護士が法的な観点から交渉することで、相場からかけ離れた高額な示談金の支払いを回避し、妥当な金額での解決を目指せます。
  • 被害者の二次被害への不安を解消できる
    弁護士がデータ破棄に責任をもって関与することで、被害者の最も大きな不安を解消し、信頼関係を築きやすくなります。

まとめ

盗撮事件で逮捕されたり、捜査を受けたりした場合、あなたの未来は、被害者との示談が成立するかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。示談金の相場は数十万円から100万円程度が一つの目安ですが、事案の悪質性によって大きく変動します。

そして、その示談交渉は、被害者の強い処罰感情やプライバシーへの配慮から、専門家である弁護士のサポートなしに進めることは困難です。

もしあなたが盗撮という過ちを犯してしまい、人生の岐路に立たされているのであれば、どうか一人で抱え込まないでください。直ちに、盗撮事件の示談交渉に精通した弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。私たちが、あなたに代わって被害者の方と真摯に向き合い、事件の円満な解決とあなたの社会復帰をサポートします。

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