痴漢の示談金の相場はいくら?示談交渉を弁護士に依頼するメリット

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はじめに

痴漢事件を起こしてしまった…その時、前科がつくことを回避し、ご自身の社会生活への影響を最小限に食い止めるために、最も重要かつ効果的な手段が「被害者との示談」の成立です。

示談が成立し、被害者の方から「許し(宥恕)」を得ることができれば、検察官が不起訴(起訴猶予)処分とする可能性が格段に高まります。つまり、示談は、刑事裁判や前科を回避するための大きなポイントになります。

しかし、実際に示談を進めようとすると、「そもそも示談金はいくら支払えばいいのだろうか?」「どうやって被害者の方に連絡し、謝罪すればいいのか?」など、数多くの疑問や壁にぶつかります。

この記事では、痴漢事件における示談金の具体的な相場や、その金額が決まる要因、そしてなぜ示談交渉はご本人やご家族ではなく、弁護士に依頼すべきなのか、その理由とメリットについて解説します。

Q&A

Q1. 示談金は、一括で支払わなければならないのでしょうか?分割払いは可能ですか?

示談金は、被害者の方への謝罪と賠償の気持ちを示すためにも、一括で支払うのが原則です。分割払いを提案すると、被害者の方に「本当に支払ってくれるのか」という不安を与えてしまい、示談交渉が難航する原因にもなりかねません。しかし、どうしても一括での支払いが難しい経済状況にある場合は、その事情を弁護士から丁寧に説明し、被害者の方にご理解いただいた上で、分割払いの交渉を行うことも可能です。その際は、支払いを担保するための公正証書を作成するなどの配慮が必要になります。

Q2. 被害者が「絶対に許さない」と言っており、示談に応じてくれません。もう諦めるしかないのでしょうか?

諦める必要はありません。被害者の方が加害者に対して厳しい処罰感情を抱くのは当然のことです。だからこそ、加害者本人が直接交渉するのではなく、第三者である弁護士が間に入ることが重要なのです。弁護士が、真摯な謝罪の言葉を丁寧にお伝えし、二度と近づかないことなどを約束した上で、粘り強く交渉を重ねることで、当初は頑なだった被害者の方の気持ちが和らぎ、示談に応じていただけるケースは少なくありません。たとえ示談が成立しなくても、示談のために真摯な努力をしたという事実は、検察官や裁判官に良い情状として考慮されます。

Q3. 示談さえすれば、絶対に不起訴になりますか?

絶対に不起訴になるという保証はありません。 最終的に起訴・不起訴を決定するのは検察官だからです。しかし、痴漢のような被害者が存在する犯罪において、示談の成立、特に被害者の許し(宥恕)が得られているという事実は、検察官の判断にきわめて大きな影響を与えます。 よほど悪質な事案でない限り、宥恕文言付きの示談が成立すれば、不起訴(起訴猶予)となる可能性は高いと言えます。示談は、不起訴を勝ち取るための、最も重要で強力なカードであることに間違いありません。

解説

痴漢事件の解決に不可欠な「示談」。その内実について、深く掘り下げていきましょう。

1. 痴漢事件における「示談」が持つ2つの意味

まず、刑事事件における「示談」とは、単にお金を払って終わり、というものではありません。そこには、2つの重要な意味合いが含まれています。

① 民事上の損害賠償責任を果たすこと

痴漢行為は、被害者の尊厳を傷つけ、深い精神的苦痛を与える不法行為です。加害者は、被害者が受けた精神的損害を賠償する責任(慰謝料支払義務)を負います。示談は、この民事上の損害賠償問題を、当事者間の話し合いによって解決する、という役割を持ちます。

② 刑事上の有利な情状を作ること

こちらが、刑事手続きにおいてはより重要な意味を持ちます。示談が成立するということは、検察官や裁判官に対し、以下の事実を客観的に示すことにつながります。

  • 加害者が深く反省し、被害弁償の意思があること。
  • 被害者の精神的苦痛が、金銭によってある程度回復されたこと。
  • (宥恕が得られれば)被害者が、加害者の処罰を望んでいないこと。

これらの事実は、「あえて刑事罰を科す必要性は低い」という判断に直結し、不起訴処分や刑の減軽につながるのです。

2. 痴漢の示談金、その相場と金額を左右する要因

示談金の額は、法律で一律に定められているわけではなく、あくまで個別の事案ごとに、当事者間の合意によって決まります。しかし、過去の事例から、ある程度の相場観は存在します。

痴漢の示談金相場

  • 迷惑防止条例違反に該当する比較的軽微な痴漢
    (例:服の上から短時間触れた、など)
    → 10万円 ~ 50万円程度
  • 不同意わいせつ罪に該当する悪質な痴漢
    (例:服の中に手を入れた、身体を押さえつけた、など)
    → 50万円 ~ 100万円、あるいはそれ以上

示談金額を変動させる要素

上記の相場は、以下のような様々な要素によって変動します。

  • 行為の悪質性
    犯行時間、場所、態様(執拗さ、計画性)など。悪質性が高いほど、慰謝料は高額になります。
  • 被害者の処罰感情
    被害者が厳罰を望んでいるほど、示談交渉は難航し、金額も高くなる傾向があります。
  • 被害の程度
    精神的ショックで通院が必要になった場合は、治療費なども加算されます。
  • 加害者の属性
    加害者の社会的地位や収入、前科の有無なども考慮されます。再犯の場合は、初犯より高額になるのが通常です。

3. 弁護士が行う、示談交渉の具体的な流れ

示談交渉は、概ね以下のプロセスを経て進められます。

ステップ①:被害者の連絡先の入手

加害者本人が警察や検察に「示談したいので連絡先を教えてほしい」と頼んでも、個人情報保護を理由に絶対に教えてもらえません。示談交渉のスタートラインに立つためには、弁護士が捜査機関を通じて、被害者の方に連絡を取ることの同意を得る必要があります。

ステップ②:謝罪の伝達と交渉開始

弁護士が、被害者の方(またはその代理人弁護士)に連絡を取り、まずは加害者の代理人として、真摯な謝罪の気持ちをお伝えします。その上で、示談の交渉を開始します。

ステップ③:示談条件の協議

示談金の額はもちろん、支払期日や支払方法、そして最も重要な「加害者を許す(宥恕する)」という文言を示談書に入れてもらえるか、といった点について、粘り強く交渉を行います。

ステップ④:示談書の作成と締結

双方が合意に至ったら、その内容を法的に有効な「示談書」として書面にまとめ、署名・押印します。示談書には、後々のトラブルを防ぐため、「本件に関する被害届を取り下げる」「今後、本件について刑事・民事の一切の請求をしない(清算条項)」「今後、加害者は被害者に一切接触しない(接触禁止条項)」といった条項を盛り込むことが不可欠です。

ステップ⑤:示談金の支払いと検察官への報告

合意した方法で示談金を支払い、成立した示談書の写しを検察官や裁判所に提出することで、示談が成立したことを正式に報告します。

弁護士に示談交渉を依頼するメリット

痴漢事件の示談交渉は、護士に依頼すべきです。そのメリットは以下のとおりです。

  • 被害者の感情を逆なでしない
    加害者本人やその家族が直接連絡を取ろうとすると、被害者は恐怖や怒りを感じ、交渉どころではなくなってしまいます。冷静な第三者である弁護士が間に入ることで、被害者の方も安心して話し合いのテーブルについてくれる可能性が高まります。
  • 適正な金額での解決
    被害感情の高まりから、相場を大きく超える示談金を要求されるケースもあります。弁護士は、過去の裁判例や経験に基づき、法的に適正な金額を提示し、不当に高額な要求に応じなくて済むよう交渉します。
  • 法的に不備のない示談書の作成
    当事者だけで作成した示談書は、必要な条項が漏れているなど、法的に不備があることが少なくありません。弁護士が作成することで、後々の民事トラブルなどを完全に防ぐ、有効な示談書を確実に作成できます。
  • 迅速な対応による早期解決
    逮捕されている事件では、スピードが命です。弁護士は、依頼を受けたら直ちに示談交渉に着手し、勾留阻止や不起訴処分といった、時間的制約のある目標達成のために全力を尽くします。

まとめ

痴漢事件において、示談の成立は、あなたの人生を守るための最も重要で効果的な弁護活動です。そして、その繊細で専門的な示談交渉は、加害者本人が行うことは高いリスクを伴います。

もし、あなたが痴漢事件を起こしてしまい、途方に暮れているのであれば、それは示談交渉の専門家である弁護士の助けが有用です。一日も早く、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。私たちが、あなたに代わって被害者の方に真摯に向き合い、事件の円満な解決と、あなたの社会復帰をサポートします。

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