当番弁護士・国選弁護人・私選弁護人の違いは?それぞれのメリット・デメリット

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はじめに

突然、家族が逮捕された。あるいは、警察から在宅事件の捜査で呼び出しを受けた。このようなとき、多くの方が「弁護士に相談しなければ」と考えるでしょう。しかし、刑事事件に関わる弁護士には、「当番弁護士」「国選弁護人」「私選弁護人」という3つの種類があり、それぞれに大きな違いがあることをご存じでしょうか。

どの弁護士に依頼するかは、依頼できるタイミング、費用、そして何より弁護活動の質に直結し、事件の最終的な結果を大きく左右する重要な選択です。

この記事では、これら3種類の弁護士の違いを、メリット・デメリットと共に徹底的に比較し、あなたがどの弁護士を選ぶべきかを判断するための材料を、弁護士法人長瀬総合法律事務所が提供します。

Q&A

Q1. とりあえず無料で来てもらえる当番弁護士に依頼すれば十分ですか?

当番弁護士は、逮捕された方が初回に限り、無料で弁護士を呼べるという、非常に重要な制度です。逮捕直後の不安な状況で、取り調べへの対応など緊急のアドバイスを受けられるメリットは大きいです。しかし、当番弁護士の役割は、あくまで1回限りの接見が原則です。被害者との示談交渉や、勾留を防ぐための意見書の作成といった継続的な弁護活動は、別途、私選弁護人として依頼し直さない限り、行ってもらえません。緊急の応急処置としては有効ですが、それだけで事件を最後まで乗り切るのは困難です。

Q2. 国選弁護人は、やる気がないと聞きますが本当ですか?

「国選弁護人はやる気がない」というのは、必ずしも正しくありません。国から選任された責任感から、熱心に活動する弁護士も数多くいます。しかし、問題は弁護士を自分で選べないという点にあります。そのため、残念ながら刑事事件の経験が少ない弁護士や、相性の悪い弁護士が担当になる可能性も否定できません。また、報酬が比較的低額であることや、解任が原則できない制度であることから、結果として活動が低調に見えてしまうケースがあるかもしれません。

Q3. 弁護士費用が高い私選弁護人を選ぶ、一番のメリットは何ですか?

私選弁護人を選ぶ最大のメリットは、活動開始のタイミングとスピードです。国選弁護人は勾留された後でなければ選任されませんが、私選弁護人であれば、逮捕直後の最も重要な72時間、あるいは事件化する前の段階から、迅速に活動を開始できます。勾留を阻止したり、早期に示談を成立させて不起訴処分を目指したりと、有利な結果を導くための初動対応ができるのは、私選弁護人ならではの強みです。費用はかかりますが、それに見合うオーダーメイドの弁護活動が期待できます。

解説

3種類の弁護士の違いを、項目ごとに詳しく見ていきましょう。

1. 当番弁護士 – 逮捕直後の「初回無料相談」

  • 制度の概要
    弁護士会が運営しており、逮捕された方が警察官などを通じて依頼すると、1回に限り無料で弁護士が接見に来てくれる制度。
  • 依頼できる人
    逮捕された被疑者(またはその家族など)。
  • タイミング
    逮捕後、いつでも。
  • 費用
    初回無料。
  • 弁護士の選定
    選べない。 弁護士会の名簿に基づき、その日の担当弁護士が派遣される。
  • メリット
    費用を気にせず、逮捕直後の孤独で不安な状況で、すぐに弁護士に会ってアドバイスをもらえる点です。取り調べに対する心構えなどを聞くだけでも、大きな精神的支えになります。
  • デメリット
    あくまで1回きりの派遣が原則であり、継続的な活動はしてくれません。被害者との示談交渉や、検察官・裁判官への意見書提出といった本格的な弁護活動を依頼するには、その当番弁護士と改めて私選契約を結ぶか、別の私選弁護人を探す必要があります。

2. 国選弁護人 – 資力がない人のための「国が選ぶ弁護士」

  • 制度の概要
    経済的な理由で弁護士費用を払えない被疑者・被告人のために、国が費用を負担して選任する弁護士。
  • 依頼できる人
    勾留された被疑者、または起訴された被告人で、資力基準(預貯金などが50万円以下)を満たす人。
  • タイミング
    被疑者段階では「勾留された後」、被告人段階では「起訴された後」。
  • 費用
    原則として国が負担。ただし、裁判後に資力があると判断された場合は、費用の支払いを命じられることがあります。
  • 弁護士の選定
    選べない。 裁判所が名簿から機械的に選任する。
  • メリット
    弁護士費用をほとんど気にすることなく、継続的な弁護活動を受けられる点です。
  • デメリット
    • 活動開始が遅い
      最大のデメリットです。勾留が決定された後でないと選任されないため、逮捕から勾留決定までの最も重要な最大72時間の弁護活動ができません。
    • 弁護士を選べない
      刑事事件の経験や熱意、人柄などは弁護士によって千差万別です。相性が合わなくても、原則として解任や変更はできません。

3. 私選弁護人 – 自分で探し、自分で選ぶ「オーダーメイドの弁護人」

  • 制度の概要
    被疑者・被告人やその家族が、自らの意思で探し、委任契約を結んで依頼する弁護士。
  • 依頼できる人
    誰でも。
  • タイミング
    いつでも。 警察から連絡が来た段階、逮捕される前、逮捕直後、在宅事件、起訴後など、どのステージからでも依頼可能。
  • 費用
    依頼者が全額を負担。費用は法律事務所によって異なります。
  • 弁護士の選定
    自由に選べる。 複数の事務所に相談し、実績、専門性、費用、そして何より人柄や相性を比較検討して、最も信頼できる弁護士を選べます。
  • メリット
    • 迅速な初動対応
      逮捕直後の72時間、勾留が決まる前の「ゴールデンタイム」に活動を開始し、早期の身柄解放や不起訴処分を目指せること。これが最大の強みです。
    • 高い専門性と質の高い弁護活動
      「刑事事件に強い」「示談交渉が得意」など、その事件に最適な専門家を選ぶことができ、手厚く質の高い弁護活動が期待できます。
    • 依頼者との密な連携
      契約に基づいているため、報告・連絡・相談が密になり、依頼者の希望に沿ったオーダーメイドの弁護戦略を立てることができます。
  • デメリット
    弁護士費用が自己負担となる点です。

【3種類の弁護士 違いのまとめ】

比較項目当番弁護士国選弁護人私選弁護人
依頼タイミング逮捕直後(1回のみ)勾留後・起訴後いつでも
活動開始の速さ速い(応急処置)遅い最も速い
弁護士を選べるか選べない選べない自由に選べる
費用負担無料(初回)原則、国が負担自己負担
専門性・相性未知数未知数重視して選べる

弁護士に相談するメリット(なぜ私選弁護人がベストか)

ここまで見てきたように、経済的な事情が許すのであれば、私選弁護人を選ぶメリットは計り知れません。

刑事事件の弁護活動は、時間との勝負です。特に、逮捕後の72時間は、その後の人生を左右すると言っても過言ではありません。この重要な時期に、国選弁護人はまだ存在すらしていません。勾留を阻止し、早期に職場や家庭に復帰できる可能性を最大限に高めることができるのは、迅速に動ける私選弁護人だけなのです。

また、被害者との示談交渉、保釈請求、裁判での情状弁護など、刑事事件の各ステージには、高度な専門性と経験、そしてノウハウが求められます。「刑事事件に強い」弁護士を自ら選べるというアドバンテージは、事件の最終結果に影響します。

まとめ

当番弁護士、国選弁護人、私選弁護人。それぞれに役割と特徴がありますが、あなたとあなたの大切な家族の未来を守るために、最善の結果を追求するのであれば、信頼できる私選弁護人を自ら探し、依頼することが、最良の選択肢であると言えます。

費用は確かにかかります。しかし、それは早期の身柄解放、前科の回避、ひいては失われずに済んだ社会的信用や職といった、プライスレスな価値を得るための投資と考えることもできます。

どの弁護士に依頼するかは、あなたの刑事事件の行方を決める最初の、そして最も重要な決断です。それぞれの違いを正しく理解し、後悔のない選択をしてください。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、あなたとご家族に寄り添い、最善の弁護活動を提供することをお約束します。

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