接見禁止とは?家族が面会できない場合の対処法と弁護士の役割

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はじめに

ご家族が逮捕されたと聞き、心配でたまらず警察署に駆けつけたものの、「接見禁止(せっけんきんし) が付いているので、ご家族でも会えません」と、面会を断られてしまうことがあります。

なぜ会えないのか、本人は中でどうしているのか、何も分からず、ただ時間だけが過ぎていく。このような状況は、ご家族にとって、耐えがたいほどの不安と無力感をもたらします。

この「接見禁止」は、特に共犯者がいる組織的な犯罪や、本人が容疑を否認している事件などで、裁判官によって下される厳しい処分です。

この記事では、この接見禁止とは一体どのような処分なのか、なぜ家族ですら面会できなくなるのか、そして、その絶望的な状況の中でご家族ができることと、弁護士が果たすべき重要な役割について解説していきます。

Q&A

Q1. なぜ血のつながった家族なのに、面会を禁止されるのですか?

裁判官が接見禁止を決定するのは、「証拠隠滅を疑うに足りる相当な理由がある」と判断した場合です。たとえ家族であっても、面会時に事件に関する口裏合わせをしたり、外部の共犯者に指示を伝えたりする可能性がゼロではない、と捜査機関や裁判官が懸念するのです。特に、振り込め詐欺のような組織犯罪や、複数人での暴行事件など、まだ逮捕されていない共犯者がいるケースでは、接見禁止が付きやすい傾向にあります。これは家族を疑っているというより、事件の真相解明のためにあらゆる証拠隠滅の可能性を排除したい、という捜査上の要請が強く働くためです。

Q2. 接見禁止は、いつまで続くのでしょうか?

接見禁止の期間は、法律で明確に定められているわけではありません。原則として、勾留が続いている間は、接見禁止も継続される可能性があります。つまり、勾留が延長されれば最長で20日間、さらに起訴された後も、裁判が終わるまで接見禁止が続くケースもあります。ただし、弁護士が後述する「準抗告」や「一部解除の申し立て」を行うことで、途中で解除されたり、家族のみ面会が許可されたりする可能性は十分にあります。

Q3. 接見禁止中でも、手紙のやり取りや差し入れはできますか?

接見禁止の決定が出ると、原則として手紙のやり取り(信書の発受)も禁止されます。差し入れについては、現金や衣類、本などは認められることが多いですが、手紙やメモなどをこっそり忍ばせることはできません。発覚した場合は、証拠隠滅を図ったと見なされ、ご本人にとってもご家族にとっても、さらに状況が悪化する恐れがあります。唯一の例外は、弁護士を介する方法です。弁護士が内容を確認し、証拠隠滅の恐れがないと判断した上で、ご家族からの手紙をご本人に渡すことは可能です。

解説

外部との繋がりを絶たれてしまう「接見禁止」。その内容と対処法について、より深く理解していきましょう。

接見禁止とは?- 弁護士以外、誰とも会えない孤立した状況

接見禁止とは、正式には「接見等禁止決定」と呼ばれる、裁判官による命令です。この決定が下されると、被疑者・被告人は、弁護士以外の全ての者と、以下の行為を禁じられます。

  • 接見
    直接会って話をすること。
  • 書類や物の授受
    手紙以外の物(メモなども含む)を受け取ったり渡したりすること。
  • 信書の発受
    手紙をやり取りすること。

つまり、ご家族、友人、恋人、会社の同僚など、弁護士資格を持つ者以外とは、会うことも、手紙を出すことも、受け取ることもできなくなります。逮捕された本人は、外部の世界から遮断され、たった一人で捜査官と向き合わなければならない、過酷で孤立した状況に置かれるのです。

接見禁止が付きやすい事件の類型

裁判官は、どのような場合に「証拠隠滅の恐れ」が強いと判断し、接見禁止の決定を下すのでしょうか。実務上、特に接見禁止が付きやすいとされる事件の典型例は以下の通りです。

  • 共犯者がいる事件
    振り込め詐欺(特殊詐欺)、強盗、複数人による暴行・傷害など、組織的・計画的に行われた犯罪では、接見禁止が付けられる可能性が高いといえます。外にいる共犯者と、面会に来た家族や知人を介して口裏合わせをしたり、証拠の隠蔽を指示したりすることを防ぐのが最大の目的です。
  • 否認事件
    被疑者が容疑を全面的に否認している事件でも、接見禁止が付きやすくなります。捜査機関は、被疑者が外部の協力者と連絡を取り、被害者を威圧して被害届を取り下げさせたり、アリバイ工作をしたりすることを強く警戒するためです。
  • 薬物事件
    覚せい剤や大麻などの薬物事件、特に営利目的での密売や栽培が疑われるケースでは、密売グループの他のメンバーや入手ルートに関する情報を隠蔽するため、関係者との連絡を遮断する目的で接見禁止が付けられることが多くあります。
  • 暴力団が関与する事件
    組織的な犯罪であり、被害者への報復や脅迫の危険性も高いため、ほぼ全てのケースで接見禁止の措置が取られます。

ご家族がすべきこと、すべきでないこと

接見禁止という厳しい壁に直面したとき、ご家族にできることは限られていますが、何もしないでいるわけではありません。

【ご家族ができること】

  • 弁護士に依頼する
    弁護士は、接見禁止の影響を受けずに本人と自由に面会できます。本人との唯一の連絡役を担い、状況を正確に把握し、家族のメッセージを伝えることができます。
  • 差し入れをする
    衣類、現金、本、便箋、切手などの差し入れは、接見禁止中でも通常通り可能です。留置施設での生活を支えるために、必要なものを差し入れてあげましょう。

【ご家族がすべきでないこと】

  • 独自に被害者と接触しようとすること
    早く示談したいという気持ちは分かりますが、ご家族が直接被害者に連絡を取ろうとすることは、証拠隠滅(脅迫・懐柔)を疑われる原因となり、接見禁止が長引く最悪の事態を招きかねません。示談交渉は必ず弁護士に任せてください。
  • 差し入れに手紙を紛れ込ませること
    発覚すれば、ご家族も証拠隠滅等に加担したと見なされるリスクがあり、状況はさらに悪化します。

接見禁止を解除するための弁護活動

接見禁止は、一度決定されたら裁判が終わるまで解除されない、というわけではありません。弁護士は、この厳しい処分に対して、法的な手続きを通じて解除を求めて戦うことができます。

  • 準抗告(じゅんこうこく)
    接見禁止決定そのものが不当であるとして、裁判所に不服を申し立てる手続きです。「共犯者はすで全員逮捕されている」「家族は事件と無関係で口裏合わせの危険はない」といった事情を主張し、決定の取り消しを求めます。
  • 接見禁止の一部解除の申し立て
    「全ての人との接見を禁じる必要はない」として、ご家族など特定の人物に限定して接見禁止を解くよう求める、より現実的で認められやすい申し立てです。例えば、「夫の会社の退職手続きについて相談するため、妻との接見を許可してほしい」「高齢の母親を安心させるため、母親との面会だけでも認めてほしい」など、面会の具体的な必要性を説得的に主張します。

弁護士に相談するメリット

接見禁止という厳しい状況において、弁護士の存在は、ご本人とご家族によって力となります。

  • 唯一のコミュニケーション手段の確保
    弁護士は、ご本人と外部をつなぐ唯一のパイプ役です。ご本人の健康状態や精神状態、事件に対する考えなどを家族に伝え、家族からの励ましや必要な情報を本人に届けることで、心の孤立を防ぎ、精神的な支えとなります。
  • 接見禁止解除に向けた活動
    上記で解説した「準抗告」や「一部解除の申し立て」といった法的な手続きを、迅速かつ的確に行うことができます。家族との面会を実現するために活動します。
  • 捜査機関への牽制
    弁護士が頻繁に接見に訪れること自体が、捜査機関に対する無言の圧力となり、自白の強要や不当な取り調べを抑止する効果が期待できます。
  • ご家族の不安の軽減
    先の見えない状況で不安を抱えるご家族に対し、事件の今後の見通しや、今すべきことを具体的にアドバイスすることで、精神的な負担を軽減し、冷静な対応ができるようサポートします。

まとめ

接見禁止は、逮捕されたご本人を社会から完全に隔離し、精神的に追い詰める、きわめて厳しい処分です。特に共犯者のいる事件や否認事件では、この処分が下される可能性が高く、ご家族の不安は計り知れないものとなります。

しかし、このような状況でこそ、弁護士の真価が発揮されます。弁護士は、ご本人とご家族をつなぐ唯一の架け橋であり、接見禁止の解除に向けて法的に争うことができる存在です。

もしあなたの大切なご家族が逮捕され、接見禁止となってしまったら、どうか諦めないでください。一刻も早く刑事事件を扱う弁護士に相談し、まずは本人とのコミュニケーションルートを確保することが、この困難な状況を乗り越えるための、重要で確実な第一歩となります。

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