はじめに
少年事件で最も厳しい保護処分が「少年院送致」です。これは成人における「懲役刑」に相当するほど自由が大きく制限される処分であり、少年の立ち直りに向けて集団生活や更生プログラムが行われます。少年院送致は一時的な隔離と教育的アプローチを組み合わせた強制的処遇ですが、送致要件や手続きは成人の刑務所行きとは大きく異なる点があります。
本稿では、少年院送致がどのような場合に選択されるのか、その要件や手続きの流れ、そして送致後の生活や退院の仕組みなどについて解説します。重大事件や再非行の少年が送致されることが多いですが、家族や少年自身が制度を正しく理解することで、適切な対処や早期退院への努力を行いやすくなるでしょう。
Q&A
Q1:少年院送致はどういったケースで決定されるのですか?
家庭裁判所が「在宅のまま保護観察では更生が難しい」と判断したり、非行が重大(例えば強盗・重度の暴行など)であり、少年が再非行リスクを高く抱えている場合に送致が決定されやすいです。また、過去の保護観察歴がある少年が再犯したケースなども、少年院送致の可能性が高まります。
Q2:少年院に送られる期間はどのくらいですか?
少年院送致後の在院期間は、少年の年齢や種別(第一種〜第四種少年院)などに応じて異なります。原則として20歳に達するまでが上限とされますが、少年来院後の態度や更生度合いによっては早期退院する場合もあります。
Q3:少年院ではどんな生活を送るのでしょうか?
少年院は教育施設として位置づけられ、集団生活のもとに学業教育・職業訓練・生活指導などが行われます。規律正しい生活を徹底し、同時にカウンセリングや社会性トレーニングを通じて再非行を防ぐ仕組みです。自由は制限されますが、刑務所に比べると教育的色彩が強いと言えます.
Q4:成人の刑務所との違いは何ですか?
刑務所は刑罰としての懲役や拘禁が目的ですが、少年院は教育と更生を最優先する保護処分の施設です。受刑者に対する懲罰色の強い刑務所生活とは異なり、少年院では学習指導や職業指導、矯正教育を通じて再犯防止と社会復帰を目指します。
Q5:逆送されて成人裁判で懲役刑になれば少年院には行かないのですか?
逆送後に成人同様の刑事裁判で懲役刑が確定すれば、少年刑務所(若年受刑者が収容される刑務所)に入るのが一般的です。つまり、逆送されると少年院送致ではなく実刑(懲役)が科される可能性が高いということです。
Q6:少年院送致を避けるには、どうすればいいのでしょうか?
保護観察や児童自立支援施設など軽い保護処分で済むよう、付添人弁護士が審判で家庭環境の改善や再非行防止策をしっかり提示し、「社会内での更生が可能」と家庭裁判所に認めてもらうことが大切です。被害者がいる事件では示談の成立も大きなプラス要素になります。
Q7:少年院ではどんな教育プログラムが行われるのですか?
学科教育(義務教育や高校レベルの勉強)、職業訓練(調理、農作業、工芸など)、生活指導(規律ある共同生活やルール遵守の訓練)、心理プログラム(DV加害者プログラム、薬物依存カウンセリングなど)など、多岐にわたります。少年院の種類(第1種〜第4種)や個々の問題点によって内容が異なります。
Q8:少年院から早期退院するにはどうしたら良いですか?
在院中の態度や学習態度、再非行リスクの減少などが認められれば、所定の審査を経て仮退院や退院が認められる場合があります。家族の協力体制や受け入れ先の有無も判断材料です。具体的には院内での成績や更生状況を踏まえて判断されます。
Q9:少年院での生活態度が悪かったら、20歳を超えても在院し続けるのですか?
原則として20歳を超えたら少年院から退院が基本です。ただし、特殊な事案で医療少年院や保護処分延長となる例外があり得ますが、通常は20歳前後で社会復帰する流れです。院内で問題行動が多ければ退院が遅れる事案はあります。
Q10:保護者として、少年院に行った息子を早めに出す方法はありますか?
面会を頻繁に行い、院内での態度改善を支えるほか、退院後の受け入れ環境(就学・就労先、家族監督体制)を整えておくことで、仮退院審査で有利になる可能性があります。付添人弁護士を通じて、少年院や家庭裁判所へ将来の計画を説明し、早期退院を検討してもらうことも考えられます。
解説
少年院送致の決定要件
家庭裁判所は審判で非行事実と再非行リスクを認定し、在宅のまま保護観察では更生が難しいと判断した場合に、少年院送致を決定します。具体的には、
- 非行の重大性(暴行・強盗・性犯罪など)
- 再非行のおそれ(過去に保護観察歴がある、新たな非行の恐れが大きい)
- 家庭・学校環境の悪化(親の監督意欲や能力が乏しい)
- 矯正教育の必要性(院内で専門的教育が必要と認められる)
少年院の種類(種別)
- 第1種少年院:心身ともにおおむね健全な少年
- 第2種少年院:知的障害などがある少年
- 第3種少年院:薬物依存等の医療的処遇が必要な少年
- 第4種少年院:成人刑事施設への移行が可能な16歳以上の少年
少年院生活の実態
- 集団訓練:同年代の少年と共同生活し、協調性や規律を学ぶ
- 教育・学業支援:不就学や学力遅れを補うため、勉強の機会を与える
- 専門プログラム:DV、性犯罪、薬物依存など特化型の更生指導
- 規律ある日常:起床、清掃、学習、運動、就寝まで厳しいタイムスケジュール
退院(仮退院)の基準
- 在院態度や学習の成果
- 家庭・学校の受け入れ体制
- 再犯リスクが低いと判断されれば、仮退院(保護観察付きで退院)や本退院が認められる。20歳到達が一応の上限だが、特例で延長される場合も一部ある。
弁護士の付添サポート
少年院送致が最終決定となる前に、付添人弁護士が家庭裁判所で保護観察の有効性や在宅教育の可能性を示して阻止を図る。逆に、少年院送致が決まった後でも、弁護士が家族と連携し、退院後の生活プランや仮退院の審査を支援することも可能です。
弁護士に相談するメリット
少年院送致の回避
弁護士が示談や再発防止策を提示することで、保護観察など軽度の処分に抑える活動が可能。家庭環境を改善し、裁判官に「在宅でも更生できる」と確信させるよう努める。
手続きの透明化
家族が少年院送致の理由や生活内容に疑問を持った場合、弁護士が家庭裁判所調査官や裁判官と協議し、納得いく説明を引き出すことができる。必要に応じて準抗告などを検討する。
少年院でのフォロー
少年院に入った後も、弁護士は面会や連絡を取り、院内での状況を把握し、仮退院申請のサポートを続ける。家族の相談窓口としても機能し、退院後の学校・就職にも連携する場合がある。
まとめ
少年院送致の要件と手続きは、少年法の保護主義を体現する重要なテーマです。非行が重大であり、在宅での更生が難しいと判断された少年は、少年院という教育・矯正施設に送られ、集団生活や専門的プログラムを通じて再犯防止を図ります。以下のポイントを押さえ、家族や関係者は適切な対応を心掛けましょう。
- 少年院送致は最も重い保護処分
少年の自由を大きく制限し、集団教育で更生を促す。 - 在院期間は20歳前後まで
少年の態度次第で早期退院もあり得る。 - 逆送とは異なる
逆送されれば成人刑事裁判で懲役刑になる可能性が高い。 - 少年院の内部では教育・職業指導
規律ある生活と専門プログラムで再非行を防ぐ。 - 弁護士のサポートが鍵
少年院送致を回避する活動や、送致後も退院支援をフォロー。
もしご家族や周囲の少年が重大非行を犯し、少年院送致の可能性を考慮しなければならない状況にある場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。付添人弁護士として審判に同席し、在宅での保護観察を目指すほか、万が一少年院送致が避けられない場合も、院内生活や退院後の生活再建を支援する体制を整えます。
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