少年法の目的と制度の概要

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はじめに

日本の刑事司法制度は、20歳未満の少年が犯罪・非行を犯した場合、原則として少年法による特別な手続きで審理・処分されます。少年法は「少年の健全育成」という教育的観点を最重視しており、同じ行為を犯した成人の場合と比べて、保護主義に基づく柔軟な処遇が用意されているのが特徴です。保護観察や少年院送致など、刑罰ではなく保護処分を通じて少年を更生させ、社会復帰を図る仕組みが整えられています。

本稿では、少年法の目的がどのように設定されており、それがどのように保護主義の考え方と結びついているのか、そして実務で少年はどのように保護処分を受けるのかを解説します。成人とは違う手続きや理念を知ることが、少年事件の適切な対応には重要です。

Q&A

Q1:少年法は何を目的としているのでしょうか?

少年法は、「少年の健全育成」と「再非行防止」を目的とし、刑罰ではなく教育的・保護的アプローチを中心に据えています。社会的に更生する可能性がまだ高い少年の特性を踏まえ、刑務所よりも保護観察や少年院での教育を優先する理念が根底にあります。

Q2:成人の刑法と比べて、どう違うのですか?

主な違いは、家庭裁判所が主体となり、保護処分を中心とする点です。成人の場合は罰金刑や懲役刑がメインですが、少年法では少年院送致保護観察を通じて再教育を施す制度が整えられています。また、審判は非公開で行われ、少年のプライバシーを守る仕組みになっています。

Q3:どの年齢までが少年法の適用対象となるのでしょうか?

原則として20歳未満の者が少年法の対象です。ただし、2022年4月の改正民法で成人年齢が18歳に引き下げられましたが、少年法上は依然として20歳未満を「少年」として取り扱うことになっています(18・19歳の者が罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めている点はご留意ください)。一部例外として16歳以上の重大事件は検察官送致(逆送)される場合があります。

Q4:逆送とはどういう仕組みですか?

少年が16歳以上で、殺人・強盗致死傷などの重大犯罪を犯した場合、家庭裁判所が「刑事処分相当」と判断すれば、検察官送致(逆送)して成人と同様の刑事裁判を受けさせる制度です。ここでは少年法の保護主義よりも社会防衛厳罰が優先されると理解されます。

Q5:家庭裁判所ではどんな処分が行われるのですか?

保護観察児童自立支援施設送致少年院送致などの保護処分が中心です。非行内容が軽い場合は審判不開始(不処分)や試験観察で終了することもあります。最も重い処分が少年院送致です。

Q6:保護主義の観点で、加害少年はどれくらいの期間、監督を受けるのですか?

保護観察の場合、最大で20歳(ただし、保護観察に付することを決定したときから少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないときには、保護観察の期間を2年)になるまで継続される可能性があります。少年院では、年齢区分(第1種〜第4種)によって在院期間が異なりますが、基本的には20歳前後で退院が検討される仕組みです。成長や反省状況、学業などの進捗次第で早期退院もあります。

Q7:被害者の視点から見ると、少年法は甘い制度だと言われることもありますが、どう捉えればいいですか?

少年法の目的は「少年の健全育成」であり、社会復帰を重視するあまり、被害者が「甘い」と感じることがあります。ただし、保護処分中は監督教育を通じて再犯防止に尽力しており、実際には厳しい規律や指導を受けるため、決して軽い処分とは一概に言えない部分があります。

Q8:加害少年が被害者に示談をして、被害者が処罰を望まないならば、少年法で不処分になることはあるのですか?

示談成立は家庭裁判所の保護処分判断に大きく影響します。非行が軽微で、被害者との示談が整って再非行リスクも低いと判断されれば、審判不開始(不処分)や軽い保護処分で終了する場合も十分あり得ます。

Q9:少年事件で弁護士(付添人弁護士)をつけないとどうなりますか?

少年自身や保護者だけでは法的知識や交渉経験が不足し、適切な処分を争うのが難しいです。家庭環境の整備や再犯防止策をうまくまとめられず、重い処分(少年院送致)になりかねないリスクがあります。付添人弁護士がいることで、保護観察など軽い処分へ導く可能性が高まります。

Q10:少年法は今後も継続されるのでしょうか?成人年齢引き下げの影響は?

成人年齢が18歳に変更された後も、少年法の適用対象は20歳未満のまま維持されています。ただし、18・19歳の者が罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めている点はご留意ください。

解説

少年法の目的と理念

少年法は、少年の可塑性(成長や教育による立ち直りの可能性)に着目し、厳罰よりも保護を通じた再非行防止を最優先としています。少年が一度非行を犯しても、家庭や学校・地域のサポート体制を整え、社会復帰を促すことで、将来の更生を期待できるという考え方が根底にあります。

保護主義の具体的展開

  • 家庭裁判所の調査
    家庭裁判所調査官が家庭環境や学校での状況を詳細に調べ、再非行リスクを評価
  • 非公開の少年審判
    少年のプライバシーを守り、教育的立場で話し合いを行う
  • 保護処分
    保護観察や少年院送致などの手段で、社会内または施設で指導・教育を実施
  • 付添人弁護士
    成人の弁護人と似ているが、より教育・保護の視点で少年と協力

成人との違い

  1. 裁判所が家庭裁判所
    成人の刑事裁判所ではなく、教育的視点を重視する
  2. 刑罰でなく保護処分が主流
    少年院や保護観察など、社会内更生に向けた処遇
  3. 手続きの非公開
    将来の社会復帰を重視し、少年の名誉やプライバシーを保護

逆送事案

16歳以上の少年が重大犯罪を起こした場合は、家庭裁判所が検察官へ事件を送致(逆送)し、成人同様の刑事裁判が行われる特例が存在します。これは保護主義よりも社会防衛を優先する極端なケースですが、弁護士(付添人)が少年法の必要性を主張して逆送を阻止する戦術も取り得ます。

弁護士の役割

  • 付添人弁護士の選任
    少年や保護者が依頼し、家庭裁判所審判で主張・証拠提出を行う
  • 家庭環境の改善策
    非行原因となっている問題(家庭トラブル、依存症など)を把握し、解決策を提案
  • 再発防止プログラム
    DV・性犯罪・薬物依存などの特化カウンセリングを紹介
  • 示談交渉
    被害者との和解を進め、より軽い保護処分に導く

弁護士に相談するメリット

少年審判での適切な意見陳述

弁護士が家庭裁判所に対し、少年の事情(環境要因、非行原因)や再非行防止策を論理的かつ説得力ある形で説明し、過度な処分(少年院送致)を避け、保護観察など軽度の処分に導ける可能性が高まります。

家族サポートと学校連携

弁護士が保護者や学校と協力し、非行原因を取り除くための家庭内ルール学校復帰プランを作成することで、審判時に「しっかりサポートがある」と示せる。これが保護処分の軽減につながる大きな要素です。

被害者への示談交渉

少年事件でも、示談が成立し被害者が処罰感情を持たない姿勢を示せば、不処分軽い保護処分を選択してもらえる可能性が高くなります。弁護士が被害者と交渉し、謝罪文や賠償など最適な形で合意を目指します。

逆送阻止や成人裁判での情状弁護

重大事件の場合、検察官送致(逆送)を阻止するために「少年院や保護観察で更生できる見込みがある」と弁護士が主張。万が一逆送されても、その後の刑事裁判で少年としての特性(可塑性)を強調し、量刑を抑える情状弁護が可能です。

まとめ

少年法の目的と保護主義は、少年事件を「教育的観点」で扱い、刑罰よりも再非行防止と更生を目指すための仕組みです。通常の成人裁判とは異なる家庭裁判所の非公開審判で、保護処分(保護観察や少年院送致)が中心に行われるのが大きな特徴と言えます。以下のポイントを押さえ、早期に弁護士(付添人弁護士)を選任することで、少年が適切な支援と教育を受けながら社会復帰しやすい環境を整えるのが望ましいでしょう。

  1. 少年法の目的は健全育成と再非行防止
    刑罰ではなく保護処分で更生を促す。
  2. 保護主義による多様な処分
    保護観察、少年院、児童自立支援施設など。
  3. 家庭裁判所が主導
    非公開で少年の環境や可能性を調査し、処分を決定。
  4. 重大事件の逆送
    16歳以上の殺人などでは成人同様の刑事裁判に移行。
  5. 付添人弁護士の役割
    家庭環境整備、被害者との示談、再発防止策の提示など、少年を守り導く活動が不可欠。

もしご家族や関係者が少年事件で悩んでいるなら、弁護士法人長瀬総合法律事務所へお早めにご相談ください。付添人弁護士として家庭裁判所での審判に対応し、少年の更生プログラムや家族サポート体制を整備することで、保護処分を最小限に抑え、健全な社会復帰を支援する弁護活動を提供いたします。

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