示談書の作成方法と注意点

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はじめに

刑事事件で示談が成立しても、口頭の約束だけで終わらせるのは非常に危険です。後から「そんな約束はしていない」「金額を払ってもらえていない」「今後も刑事処分を求める」などのトラブルが再燃する可能性があります。そこで、示談交渉がまとまったら、必ず文書(示談書)を作成し、当事者双方が署名捺印して法的拘束力を確保することが重要です。

本稿では、示談書の作成方法と注意点を中心に、どういった事項を必ず盛り込むべきか、形式や言葉遣いのポイント、落とし穴などを解説します。せっかく示談が成立しても、書面が曖昧だと後日の紛争や刑事処分への影響が不十分になる恐れがあります。適切な示談書を用意し、円滑に合意を実現しましょう。

Q&A

Q1:示談書には最低限どんな項目を記載すべきですか?

当事者(被害者・加害者)の氏名・住所、示談金額、支払い方法・期日、刑事処分を望まない旨、再度請求しない旨などが基本です。また、相手の受領を確認できる形(領収書的要素)や今後の連絡方法、紛争解決方法などを記しておくことが望ましいです。

Q2:示談書に「今後一切の債権債務は発生しない」と書けば、追加で請求されるリスクはゼロですか?

原則として、示談書に「本件に関する債権債務はすべて解消」と明記すれば、追加請求の余地は低くなります。ただし、詐欺的に被害者を騙して署名させたなど、示談の成立過程が無効事由にあたる場合は訴訟で争われる可能性があります。書面が正しく有効に作成されていることが肝要です。

Q3:示談金を分割払いにする場合、示談書にはどのように書けば良いでしょうか?

「◯年◯月◯日を期日とする」「毎月◯万円ずつの分割」「支払方法(振込口座など)」など詳細を明記します。利息や支払が滞った場合のペナルティ(遅延損害金)を入れることもあります。後日「支払方法が違う」と揉めないよう、具体的に決めるのが鉄則です。

Q4:示談書には被害者が「刑事処分を望まない」という文言がない場合、起訴が避けられませんか?

被害者が処罰感情を放棄していない文面だと、検察官裁判所が「被害者はまだ処罰を望んでいるのかもしれない」と判断するリスクがあります。示談で刑事処分を望まないと明確に書かれていれば、不起訴や量刑軽減を狙いやすいのが実務です。

Q5:示談金の受領後に、被害者が刑事処分を求めて警察に行ったらどうなりますか?

示談書で「刑事処分を望まない」旨があっても、被害者が警察へ行く権利自体は消えません。捜査機関が独自に起訴する場合もあるが、示談書を検察官や裁判所に示せば、起訴猶予量刑軽減が見込めます。示談不履行や詐欺的行為がない限り、示談の効果は刑事処分に大きく影響を与えます。

Q6:未成年同士の示談では、保護者も署名すべきですか?

多くの場合、未成年者に法的拘束力ある契約を結ぶ能力が制限されているので、保護者(親権者)の署名が望ましいです。示談書に保護者の同意を明記しておくことで、トラブル再燃を防げます。

Q7:示談書は自分で作成してもいいのでしょうか?

可能ですが、不備や曖昧さがあると後々トラブルになるリスクが大きいです。弁護士が作成またはチェックすれば、必要項目を漏れなく盛り込み、誤解を招かない法的に有効な文書に仕上げられます。

Q8:オンラインで被害者とやり取りする場合、メールやLINEのスクリーンショットは示談書として有効ですか?

厳密には、メールやチャットの内容は示談「合意」の証拠となり得ますが、正式な示談書としては証拠力や法的拘束力に問題が生じがちです。後から「なりすまし」や「誤訳・削除された」などと言われるリスクもあります。最終的には署名捺印ある示談書にまとめるのが安全です。

Q9:示談書には公正証書にするなど公証人の関与が必要でしょうか?

原則として示談書は私文書で十分法的効力を有しますが、分割払いが長期に及ぶ場合、公正証書化することで強制執行認諾文言を入れられます。支払が滞った際にスムーズに財産差押ができるメリットがあります。コストと手間を考慮して判断が必要です。

Q10:示談書完成後の注意点は何ですか?

複数部作成し、双方が1通ずつ原本を保管する。また、支払実行後は領収書や振込記録をきちんと残す。示談書の内容に反しそうな行動(被害者への再接触や追加要求)がないか注意し、もし違反が起きそうなら弁護士に即相談するのが安全です。

解説

示談書に盛り込むべき必須項目

  1. 当事者の特定
    被害者・加害者双方の氏名(法人なら名称)・住所・連絡先
  2. 事件の特定
    どの事件・どの日時の行為について示談するのかを明確に
  3. 示談金・慰謝料の金額
    支払総額と明細(治療費、慰謝料、休業損害など)
  4. 支払い方法・期日
    一括か分割か、銀行振込か手渡しか、振込先口座など
  5. 今後の刑事処分について
    被害者が処罰を望まない旨、今後一切刑事告訴しない旨など
  6. 債権債務の清算条項
    これをもって本件に関するすべての債権債務は解消
  7. 日付・署名押印
    書面作成日、双方の署名捺印

形式と注意点

  • 二重線・訂正印:文言を訂正する場合、必ず二重線で消して訂正印を押す
  • 印鑑の種類:実印が望ましいが、認印・シャチハタでも当事者が認めれば有効
  • 複数原本:一般に2通作り、被害者・加害者各1通保管

特別な条項の例

  • 守秘義務条項:示談内容を第三者に漏らさない
  • 反社会的勢力排除条項:相手が暴力団でないことを確約
  • 保証人・連帯保証:分割払いの場合、加害者が支払不能になった時の保険策
  • 公正証書化条項:公証役場で作成し、強制執行認諾文言を入れる

示談書の法的効果

示談書は民事上の和解契約として効力を持ち、当事者を拘束します。刑事事件で検察官や裁判官がそれを見れば、被害者の処罰意欲が低いと評価し不起訴量刑軽減につながることが多いです。ただし、捜査機関が独自に起訴を決める権限は残るため、示談が必ずしも起訴を阻止できるわけではありません。

弁護士が果たす重要性

  1. 書面作成の専門性
    法律用語を適切に用い、余計な解釈を生まない明瞭な文書を作成
  2. リスクの洗い出し
    分割払いトラブル、刑事処分に関する文言不備などを事前に防ぐ
  3. 公判でのアピール
    合意した示談書を迅速に検察や裁判所に提出し、刑事処分に影響する

弁護士に相談するメリット

示談交渉と書面作成のワンストップ対応

示談交渉から合意内容の法的確認、示談書の作成・チェックまで弁護士が一貫して対応するため、不備やトラブルを最小化できる。被害者と直接やり取りする精神的負担も軽減される。

裁判所への適切な報告

示談が成立すれば、その経緯や内容を検察官や裁判所へ迅速に届け出て、不起訴や執行猶予などの決定に有利となるよう弁護士が動ける。弁護士なしで示談合意しても、タイミングを逃すと処分に反映されない恐れがある。

後日の紛争再燃防止

適切に示談書を作っておけば、被害者が追加要求をしてきても「示談で全て解決済み」と主張可能。万が一の時にも弁護士が示談書を根拠に対応できる。

公正証書化など特別対応

分割払いが長期にわたる場合などには、弁護士が公正証書の作成を提案し、より強固な合意にすることも可能。支払い滞納時の強制執行など、依頼者のリスクを低減できる。

まとめ

示談書の作成方法と注意点を理解することは、刑事事件で示談を成立させるうえで不可欠です。口約束のみでは後日言い分が食い違ったり、処罰を望まないという意思が十分に示されず、結果的に刑事処分が重くなる恐れがあります。示談書を文書化して、お互いの権利と義務を明確にし、かつ捜査機関・裁判所に対しては加害者の誠意と被害者の宥恕姿勢を強くアピールするのが理想的です。以下のポイントを押さえながら、弁護士のサポートを得ることが安全かつ有効な道となります。

  1. 必要事項を網羅
    当事者名、示談金額、支払い方法、刑事処分不望、全債権債務の解消など。
  2. 分割払いなら詳細計画を
    支払期日、違約時のペナルティ、連帯保証の有無などを明記。
  3. 署名捺印と複数部作成
    お互いが原本を保管し、法的安定性を確保。
  4. 弁護士作成が望ましい
    不備や曖昧さを防ぎ、後日の紛争を回避。
  5. 示談後の刑事処分への影響
    示談書で「処罰を望まない」と記載すれば、不起訴や量刑軽減が期待大。

もし刑事事件で示談を検討しており、示談書をどう作ればいいか分からない法的に有効な文言が不安という場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所へぜひご相談ください。示談交渉の成立から書面の作成・確認、さらに検察官・裁判所への報告まで、一貫したサポートを提供し、依頼者の不安を解消するお手伝いをいたします。


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