被疑者国選弁護と私選弁護の違い

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はじめに

刑事事件で逮捕・勾留されると、弁護士を付けるかどうかが大きな問題となります。弁護士には大きく分けて国選弁護人私選弁護人の2種類があり、それぞれ費用や手続き、対応範囲に違いがあります。国選弁護は一定の要件を満たすと国費で弁護人が選任される制度で、費用負担が軽減されるメリットがある反面、制約やタイミング上の注意点が多いのも事実です。一方、私選弁護は自身で弁護士を選び、費用を自己負担する代わりに早期からの対応や自由な選択が可能となります。

本稿では、被疑者国選弁護と私選弁護の違いを中心に、どちらを選ぶべきか悩む被疑者・ご家族に向けて解説します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、後悔しない選択をすることが刑事事件の結果を大きく左右するといっても過言ではありません。

Q&A

Q1:国選弁護人と私選弁護人は、具体的に何が違うのでしょうか?

国選弁護人は、一定の要件(勾留状態・経済的困窮など)を満たす被疑者・被告人に対し、国が費用を負担して選任する弁護士を指します。私選弁護人は、被疑者・被告人が自分で費用を負担して依頼する弁護士です。

Q2:国選弁護の費用は本当に無料なのですか?

原則、費用は国が負担します。ただし、後で訴訟費用として一部を請求される可能性があります。実務では実質的に費用負担が非常に低いメリットがあると認識してよいでしょう。

Q3:国選弁護人をいつから付けられるのですか?

2制度拡充により、被疑者段階(勾留後)から国選弁護の選任が可能になりました。勾留されている場合、経済的要件(資力がないなど)を満たせば、被疑者国選弁護人が付されます。一方で、まだ逮捕されただけ(勾留される前)の段階では利用できず、私選弁護が必要です。

Q4:国選弁護人と私選弁護人で、弁護活動に差はあるのでしょうか?

法律上、国選と私選で弁護の質に差をつけることはありません。しかし、実務面ではスケジュールや人員の都合で、私選弁護なら早期接見示談交渉など機動的に動いてもらいやすいといえます。国選弁護人でも熱心に活動する弁護士はいますが、ご自身で選択することはできません。

Q5:私選弁護を頼むと、費用はどのくらいかかるのでしょうか?

事務所や事件の性質によって大きく変動しますが、着手金(数十万円程度)+報酬金(結果に応じて数十万円〜)が一般的です。保釈請求、示談交渉など追加の事件対応ごとに報酬が加算される場合もあります。見積もりを弁護士に確認しましょう。

Q6:国選弁護人を選んだけど、途中で私選弁護人に切り替えることはできますか?

はい。途中で私選弁護人を選任すれば、国選弁護人は解任されます。私選弁護人が就くことでより早期接見や独自の証拠収集などが期待できます。

Q7:私選弁護人を雇う費用がないが、活動の質を求めるならどうすればいいのですか?

国選弁護でも優秀な弁護士が就く可能性はありますし、事件内容によっては十分に対応してくれます。予算がないならまず国選弁護での対応を検討しましょう。

Q8:保釈金を用意できるなら、私選弁護にした方がいい?

保釈金の準備と弁護士費用は別問題ですが、私選弁護であれば保釈請求準抗告を機動的に行いやすい面があります。国選弁護でも保釈請求はしてもらえますが、迅速性や手厚いサポートは個々の弁護士の状況に左右されることが多いといえます。

Q9:国選弁護人を自分で指名することはできますか?

原則、国選弁護人は弁護士会の当番制や選任方法により選ばれる仕組みです。指名はできません。

Q10:結論として、国選と私選はどちらがおすすめですか?

事件の重大性・複雑さや、早期に示談交渉が必要かなどの要素、予算の有無によって異なります。重大事件や早期対応が求められる場合は私選弁護を推奨するケースが多いですが、経済的に余裕がないなら国選弁護が現実的です。いずれにせよ早い段階で弁護士に相談することが重要です。

解説

国選弁護の仕組み

  • 対象者:勾留中の被疑者・被告人で、経済的に私選弁護を雇う余裕がない者
  • 費用:国が原則負担(後で訴訟費用として請求の可能性あり)
  • 選任方法:裁判所が弁護士会に依頼し、当番制などで弁護士が選ばれる
  • メリット:費用負担が少ない
  • デメリット:自由に弁護士を選べず、早期の活動開始が難しい場合もある

私選弁護の特徴

  • 対象者:誰でも依頼可能(逮捕前・逮捕後・起訴後を問わず)
  • 費用:着手金+成功報酬+実費など
  • 選任方法:被疑者・被告人や家族が好きな弁護士・事務所を選んで契約
  • メリット:早期接見や示談交渉、保釈請求に積極的に動きやすい
  • デメリット:費用負担が大きい

逮捕前・勾留前の差

国選弁護人は勾留決定が下されないと選任されないため、逮捕段階で早急に弁護士が必要なら、私選弁護人を依頼するしかありません。この数日の差が捜査・取り調べの結果に大きく影響することもあるため、私選弁護のメリットがあります。

起訴後の国選弁護

被告人段階で国選弁護を利用する人も多く、私選との活動差はさほどない場合もあります。とはいえスケジュール調整示談交渉の機動性で差が生じやすい面があることにご留意ください。重大事件や複雑な事案では私選を選バレることもあります。

弁護士の質・相性

国選であれ私選であれ、担当弁護士の経験や性格、案件への熱意次第で弁護の質に差が出ることは否定できません。私選弁護なら自分で弁護士を選べるため、刑事事件に強い事務所を探すメリットがあります。一方、国選でも経験豊富な弁護士が担当するケースは存在します。

弁護士に相談するメリット

どちらを選ぶべきか

逮捕前後の段階で、国選弁護の要件費用面を踏まえ、どちらが望ましいかを弁護士がアドバイスします。

私選依頼のコスト見積もり

私選弁護を検討する際、案件の複雑性示談の必要性などを踏まえ、弁護士が費用見積もりを提示します。高額になりそうな場合でも、被疑者・家族と調整して最小限の範囲で依頼する方法も検討できるでしょう。

早期接見と初動対応

私選弁護なら、逮捕直後(勾留前)からでも弁護士を呼ぶことが可能で、初動対応(警察の取り調べに対する助言、違法捜査の防止など)を迅速に行えます。国選弁護だと勾留されるまで待たなければならない場合が多いため、その差は大きいといえます。

情状弁護・示談交渉の質

国選弁護でも示談はしてくれますが、多忙な国選弁護士が限られた時間で活動するのが実情です。私選弁護では時間とリソースを十分投入し、示談交渉や情状弁護を丁寧に行う期待がしやすいといえます。

まとめ

被疑者国選弁護と私選弁護の違いを理解することで、逮捕後・起訴後に最適な弁護体制を整えられます。国選弁護は費用負担が低い利点がある一方で、選べない・早期対応が難しいなどの制約が存在します。一方、私選弁護は自由に弁護士を選び機動的な活動を期待できるものの、費用負担が大きい点がデメリットです。以下のポイントを踏まえて選択し、早い段階で弁護士と連携することが刑事事件対応で重要となります。

  1. 逮捕前後に急ぎ対応が必要なら私選
    国選弁護は勾留決定後でないと利用できない。
  2. 費用面を重視するなら国選
    経済的に困難でも最低限の弁護を受けられる。
  3. 示談交渉・早期接見の柔軟性
    私選なら日程調整しやすく、手厚いサポートを受けやすい。
  4. 事件の重大性・複雑性
    大きなリスクがある事案は私選の方がリソースをかけやすい。
  5. 弁護士との相性
    私選なら依頼者が弁護士を選べる。国選では基本選べない。

    もし刑事事件で弁護士選びを迷っているなら、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。国選・私選のメリット・デメリットを比較し、費用面や事件の緊急度に合わせて最適な方法を提案し、逮捕前後・公判までサポートいたします。


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