被疑者として捜査を受けるときの心構え

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はじめに

刑事事件において「被疑者」とは、犯罪を行った疑いがある人物として警察や検察から捜査を受ける立場にある人を指します。交通事故や暴行事件、詐欺や横領といった財産犯など、いずれの場合でも被疑者になると捜査機関の取り調べが待ち受け、逮捕される可能性も否定できません。さらに、供述内容や捜査機関とのやりとりによっては、自分に不利な調書が作成されたり、不本意な認諾をさせられてしまうリスクもあります。

そうしたリスクを最小限に抑えるためには、被疑者として捜査を受ける際の心構えが不可欠です。本稿では、被疑者が注意すべき取り調べ対応や、証拠の扱い方、弁護士のサポートを得ることの重要性などをご紹介します。取り調べへの心構えをきちんと持つことで、不当な捜査や供述のミスを避け、最終的に起訴・不起訴や量刑に大きく影響を与える可能性があります。

Q&A

Q1:被疑者として捜査を受けるとは、具体的にどういう状況なのでしょうか?

警察が「この人は犯罪の容疑がある」と判断し、取り調べや身柄の拘束などを行う対象とみなすことです。逮捕される場合もあれば、在宅のまま取り調べを受ける在宅捜査の場合もあり、いずれも最終的に検察官の判断で起訴・不起訴が決まります。

Q2:まだ警察からの呼び出しはないけど、相手が被害届を出すかもと言っています。この段階で弁護士に依頼した方がいいでしょうか?

はい、できれば早期に弁護士へ相談すべきです。被害者と示談を進めるなど、事件化を防ぐ動きや、不当な逮捕を避けるための準備が可能になります。事件化する前に誠意ある対応を取れば、起訴猶予や量刑軽減を得られるチャンスも増します。

Q3:取り調べで「黙秘権」を行使しても構わないのでしょうか? それで心証が悪くなりませんか?

黙秘権は憲法で保障された権利です。行使しても違法ではありませんが、捜査官は「何か隠しているのでは」という心証を抱くかもしれません。黙秘の方針は弁護士と相談し、案件の内容や証拠状況によって戦略的に決めることをおすすめします。

Q4:捜査機関から任意同行を求められたら、拒否してもいいのですか?

任意同行はあくまで「任意」ですが、拒否すると逮捕状請求に踏み切られる可能性もあります。一度弁護士に連絡し、同行に応じるかどうかを検討しましょう。応じるにしても、弁護士が取り調べ後に連絡を受けられるよう段取りをしておけば、違法捜査を防ぐ意味でも安心です。

Q5:取り調べで調書が作成されますが、どこを確認すればいいでしょうか?

しっかり読み、自分が言っていない文言や誤った表現がないか確認しましょう。もし疑問点や誤記があれば、その場で修正を求めてください。警察官が修正を拒否するなら署名前に異議を伝え、それでも改善されないなら署名を拒否する選択肢もあります。

Q6:供述内容を変えてしまったら、信用を失うのではないですか?

初めから正確に述べるのがベストですが、取り調べで誘導威圧があったり、誤解していた事実を後で気づく場合もあります。弁護士と相談のうえ、どのタイミングで訂正すべきかを慎重に判断しましょう。捜査の早期段階で修正する方が信用性を回復しやすいです。

Q7:家宅捜索や差押えが行われる可能性はありますか?

犯罪の種類や証拠状況によっては、捜査令状を取得した警察官が家宅捜索や物の差押えを行うケースがあります。何か押収されそうな私物(パソコン、スマホ、書類)がある場合は、弁護士に事前相談し、正当な手続きか確認してもらうことが大切です。

Q8:被疑者の時点で示談を成立させる意味はありますか?

大いにあります。被害者との示談が成立し、被害者の処罰感情がなくなる(または弱まる)と、検察官が起訴猶予(不起訴)を選ぶ余地が高まります。傷害事件や交通事故などでは、示談が起訴回避量刑軽減に直接影響するといっても過言ではありません。

Q9:逮捕されたら必ず勾留されるのでしょうか? 勾留を回避する方法はありますか?

逮捕後に勾留されるかどうかは、検察官の勾留請求と裁判官の判断次第です。逃亡や証拠隠滅のおそれがないと示せれば、勾留が認められず在宅捜査になる場合もあります。弁護士が勾留理由開示準抗告で異議を唱えるなど、勾留回避のために活動します。

Q10:被疑者の段階で弁護士をつける費用は高いですか?

事案の内容や弁護士事務所によって料金は様々ですが、逮捕や前科を回避できれば失うものが大きい人生への悪影響を防げます。費用対効果を考慮すれば、早期依頼が長期的に見て得策となるケースがほとんどです。

解説

被疑者としての地位と権利

被疑者は犯罪を行った疑いを持たれる段階ですが、まだ有罪が確定したわけではありません。つまり「無罪推定」が働いており、捜査機関の取り調べでも、黙秘権弁護人選任権などの権利を行使できます。一方で、捜査機関は逮捕状請求勾留請求によって身柄を拘束する権限を持ち、証拠集めに全力を注ぐため、対応を誤ると事件が急速に進み、起訴・実刑のリスクが増大します。

初動対応を誤るリスク

  1. 逃げたり隠れたりする行為
    逃亡意図ありとみなされ逮捕される可能性が上昇。
  2. 曖昧な供述や嘘
    後で矛盾点が指摘され、心証が悪化
  3. 被害者への無対応
    不誠実と受け取られ、被害者が強い処罰を求めることで起訴の可能性が高まる。

取り調べと調書署名の重要性

警察や検察の取り調べは、供述調書の作成を目的としています。ここでの言動・署名が後の裁判で証拠となり、加害者にとって有利にも不利にも働き得るため、以下の点に注意する必要があります。

  • 意味が分からないままサインしない
    一度押印すると修正困難
  • 誤りや不当な文言をその場で指摘
    警察官に軽く押し切られないよう慎重に対処
  • 弁護士に事後相談
    供述内容に不安がある場合は署名前に連絡を検討

被害者への謝罪・示談

被疑者が示談の意向を示し、被害者に賠償や謝罪を行えば、処罰感情が落ち着き、不起訴(起訴猶予)を得られる場合も少なくありません。示談は民事的な解決手段ですが、刑事処分の軽減要素として大きく作用するため、捜査段階で示談が成立しているなら検察官は「刑事訴追の必要が薄い」と判断しやすくなります。

捜査機関への協力とリスク管理のバランス

被疑者としては、捜査には協力して事実を正確に伝える一方で、不当に罪を認めさせられないよう注意する必要があります。以下のバランスが重要です。

  1. 事実に基づく説明
    嘘や隠蔽行為はNG
  2. 言わなくてよいことは言わない
    黙秘権の行使や部分黙秘
  3. 取り調べ後に弁護士と情報共有
    調書内容や捜査官の態度を確認

4 弁護士に相談するメリット

逮捕や勾留の回避・短縮

弁護士が速やかに動き、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと捜査機関に説明すれば、在宅捜査のままで手続きを進められる可能性があります。逮捕・勾留されたとしても、準抗告保釈などの手段で釈放を狙うことができます。

示談を通じた不起訴・量刑軽減

被害者がいる事件ならば、弁護士を通じて示談交渉を進め、不当な額を要求されたり、感情的対立で交渉が壊れるリスクを下げられます。成立後に検察官へ意見書を提出し、不起訴処分の獲得や執行猶予判決の可能性を高めます。

供述内容のコントロール

弁護士が取り調べ直後に被疑者と面会して事実経緯を確認すれば、不利な誘導自白強要をブロックできます。供述調書への署名前に、弁護士がアドバイスしておけば、誤記不当な文言を回避しやすくなるでしょう。

勾留後の保釈・情状弁護

万一起訴されても、弁護士が裁判で被告人の反省文再発防止策をアピールし、さらに示談交渉の成果を示すことで量刑を大幅に軽減できる可能性があります。前科があっても、弁護士次第で少しでも有利な処分を求めることが期待できます。

まとめ

被疑者として捜査を受ける際の心構えは、逮捕回避や不起訴処分、さらには量刑の軽減にもつながる極めて重要な要素です。取り調べ対応や示談交渉など、早期に正しいアクションを取ることで刑事事件のリスクを大幅に下げることができます。以下のポイントを意識し、少しでも不安を感じる場合は速やかに弁護士へ相談しましょう。

  1. 早期対応がポイント
    捜査が本格化する前に示談や準備を進めるほど、不起訴の可能性が高まる。
  2. 供述調書を慎重に確認
    警察・検察の誘導に注意し、一度サインすると修正が困難。
  3. 誠意ある示談で処罰感情を緩和
    被害者が納得すれば起訴猶予・執行猶予が狙いやすい。
  4. 逮捕・勾留は必ずしも不可避ではない
    弁護士の準抗告や保釈請求で在宅捜査・保釈の道が開ける。
  5. 弁護士の総合サポートでリスク軽減
    捜査機関とのやりとり、示談、情状弁護まで一括サポートし、依頼者を守る。

もし自身が被疑者になる可能性が生じた際、弁護士法人長瀬総合法律事務所までご相談ください。捜査段階の取り調べ対応や示談交渉、さらには裁判での弁護活動を通じて、最善の結果を勝ち取るためにサポートいたします。


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