スピード違反や「ながら運転」による重大事故

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はじめに

自動車の運転においては、常に速度や周囲の交通状況に注意を払い、安全を確保する義務が課せられています。しかし、実際には「つい速度を出しすぎてしまう」「スマホの着信を見てしまう」など、些細な油断が引き金となり重大事故が発生するケースが後を絶ちません。特に、スピード違反や「ながら運転」(スマホ操作・わき見運転など)は、加害者が深い後悔の念を抱えることになる一方で、被害者は重い後遺障害を負ったり、最悪の場合は尊い命を失うなど、取り返しのつかない結果を招く場合があります。

こうした事故を起こしてしまうと、加害者は単なる過失運転致傷罪だけでなく、危険運転致傷罪に問われるリスクがあります。さらに、重大な違反として道路交通法違反や免許取消などの行政処分も科されるため、日常生活や仕事への影響は計り知れません。本稿では、スピード違反や「ながら運転」による重大事故が、刑事責任や行政処分の面でどのように扱われるのか、そしてどのように回避・対応していくべきかについて解説します。

Q&A

Q1:スピード違反で事故を起こしたら、必ず危険運転致傷罪になるのですか?

必ずしもそうではありません。危険運転致傷罪は、あくまで「著しく速度を超過する」など、運転態様が社会通念上「正常な運転が困難」というレベルに達した場合に適用されます。制限速度を少し超えた程度の軽度な違反の場合、通常は過失運転致傷罪が適用されることが多いです。ただし、大幅な速度超過や危険な運転実態があれば、危険運転が検討される可能性が高まります。

Q2:「ながら運転」とは具体的にどんな行為を指すのですか?

一般的には、スマホ操作(メール・LINE・SNS)カーナビの注視テレビ視聴飲食など、運転中に注意を他の行為に向けてしまう行為全般が「ながら運転」と呼ばれます。道路交通法上は、特に「携帯電話やスマートフォン等を注視・操作」する行為を厳しく取り締まっており、罰則や違反点数が強化されています。

Q3:わき見運転による事故も危険運転致傷罪になる可能性がありますか?

わき見運転は一般的に「安全注意義務違反」として過失運転致傷罪に問われることが多いです。ただし、わき見の程度が極端に悪質と判断される場合には、危険運転致傷罪の検討対象となり得ます。

Q4:スピード違反事故で死亡者が出た場合、どのような罪名で処罰されますか?

被害者が死亡した場合、通常は過失運転致死罪または、運転態様が悪質とみなされれば危険運転致死罪が適用されます。危険運転致死罪は法定刑が「1年以上20年以下の懲役」と非常に重く、スピード違反が著しかったり無謀運転があった場合に適用されるリスクが高まります。

Q5:スマホを操作した瞬間に人をはねてしまったのですが、実刑になる可能性はありますか?

「ながら運転」事故では、被害者のケガが重いほど厳しい処分が見込まれます。初犯で被害者との示談が成立していれば執行猶予が付く可能性もありますが、被害者が死亡後遺障害を負ったケースでは、実刑となるリスクが大いにあります。捜査段階で適用罪名(過失運転致傷or危険運転致傷)を慎重に見極めることが重要です。

Q6:スピード違反による事故でひき逃げをしたらどうなりますか?

ひき逃げ(救護義務違反)は、社会的にも悪質性が非常に高いと評価されます。スピード違反事故+ひき逃げとなれば、危険運転致傷罪や過失運転致傷罪に加え、道路交通法72条違反(救護措置義務違反)が適用され、より重い刑が科される可能性が高まります。捜査段階や裁判で実刑判決を避けるのは困難なケースが多いです。

Q7:スピード違反・ながら運転事故で、不起訴や軽微な処分にしてもらうにはどうすればよいですか?

事故態様が軽微であること(速度超過がごくわずか、わき見時間がごく短いなど)や、被害者のケガが軽傷であることが前提ですが、示談交渉を迅速に進め、被害弁済や謝罪を誠意を持って行うことで検察官が起訴猶予を検討してくれる場合があります。とはいえ、速度超過やながら運転は違反態様として社会的に厳しく見られているため、結果が重大であれば不起訴は容易ではありません。

Q8:免許取消などの行政処分も避けられないのでしょうか?

刑事処分が軽くても、行政処分は独立して行われるため、点数累積による免許取消や停止は避けられない場合が多いです。特に、高速道路での大幅速度超過やスマホ操作(携帯電話使用等)の違反は点数が高く、一度の事故で一発取消となるケースもあります。

Q9:なぜスピード違反やながら運転に対して厳しくなっているのですか?

スピード超過やスマホ操作が事故原因となる事案が増加し、社会的関心が高まっているためです。交通事故による死亡者や重度後遺障害者を減らすため、立法や取り締まりが強化されました。過去の悲惨な事故報道などを背景に、「そんなつもりはなかった」「ちょっとだけのはずが」でも重大結果を招くリスクが大きいと見なされています。

解説

スピード違反と危険運転致傷罪

危険運転致傷罪が適用される要件として、「著しい速度超過」が挙げられます。

証拠となるもの
ドライブレコーダー映像、目撃者の証言、衝撃痕の分析、車載ECUデータなど。

もし適用されれば1年以上15年以下の懲役という非常に重い法定刑が想定され、被害者が重傷・死亡に至ったなら実刑判決が下る可能性が高まります。

「ながら運転」と危険運転致傷罪

2019年の法改正で、「ながら運転」、特にスマホ操作に対する罰則が大幅に強化されました。しかし、ながら運転による事故が自動車運転死傷行為処罰法2条の「危険運転致傷罪」に直ちに該当するかは個別事情によります。

過失運転致傷罪であっても重い処罰の可能性

スピード違反・ながら運転が軽度と判断され、過失運転致傷罪にとどまる場合でも、被害者が大きな被害を被ったなら実刑となる余地があります。

実務上の量刑要素
被害者のケガの深刻度、示談状況、加害者の前科、反省度合いなど。

飲酒運転やひき逃げほどではないにしても、悪質性が高い「大幅スピード違反」「長時間スマホ見ながら運転」などであれば、実刑を回避するには示談を含めた積極的な弁護活動が欠かせません。

行政処分と免許取消

スピード違反スマホ操作による違反点数は高く、ひとたび事故を起こすと一気に累積点数が加算され、免許取消や長期停止になるケースがよく見られます。たとえ刑事裁判で執行猶予付き判決や不起訴が得られても、行政処分は独立して決定されるため、免許再取得には長い欠格期間が設定されることが多いです。

被害者との示談の重要性

事故態様が悪質であればあるほど、被害者やその家族の処罰感情が強くなる傾向があります。誠意ある謝罪と、適切な賠償金の提示を行うことで、検察や裁判所に「刑事処罰の必要性がやや低い」と判断してもらえる可能性が出てきます。加害者側にとっては、示談交渉をスムーズに進めるためにも弁護士のサポートが重要です。

弁護士に相談するメリット

捜査段階からのリスク分析

スピード違反やながら運転事故を起こした場合、「どの程度の速度超過だったか」「どんな運転態様だったのか」「どれくらいのわき見時間があったのか」などを弁護士がヒアリングし、危険運転致傷罪が適用されるリスクを早期に把握します。その上で、取り調べや供述で気を付ける点を助言できます。

示談交渉による量刑軽減

被害者が重いケガを負ったり、後遺障害が残った場合でも、示談成立で検察や裁判所の処分判断に影響を与えられます。弁護士が被害者の窓口となり、補償金の算定や謝罪の場づくり、誓約書の作成などをサポートすることで処罰感情を和らげることが期待できます。

情状弁護のノウハウ

危険運転致傷罪で実刑リスクが高い案件でも、弁護士が再発防止策(運転を辞退する、ドライビングスクールへの通学、職場の安全教育への参加など)を具体的に提案し、裁判官に加害者の真摯な反省と改善意欲をアピールすれば、執行猶予を獲得できる可能性が高まります。

行政処分への備え

免許取り消しが避けられない場合でも、聴聞会での意見陳述や、処分短縮プログラムなどを弁護士が案内することで、欠格期間を多少でも短縮できる可能性があります。刑事処分と行政処分が平行して進む状況で、弁護士が全体をマネジメントするメリットは大きいです。

まとめ

スピード違反ながら運転は、一瞬の油断が取り返しのつかない重大事故を引き起こす行為として、社会から厳しい目が向けられています。加害者となってしまった場合、以下のポイントを強く意識して対応を進めることが大切です。

  1. 危険運転致傷罪のリスクを理解
    著しい速度超過や長時間のわき見運転は「正常な運転が困難」と判断され、法定刑が極めて重い。
  2. 過失運転致傷でも実刑がありうる
    飲酒運転ほどではなくても、被害が重大・示談不成立などで厳しい処分に。
  3. 示談交渉が量刑を左右
    誠意ある謝罪・賠償による被害者の処罰感情緩和が、刑事処分軽減のカギ。
  4. 行政処分は独立
    免許取消や長期欠格期間が避けられず、生活に大きな影響。
  5. 弁護士の早期対応が重要
    取り調べの段階から捜査機関への対応方法を指導し、示談・情状弁護へつなげる。

万が一、スピード違反やながら運転による重大事故を起こしてしまった場合は、一刻も早く弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。過去の事例や裁判例を踏まえつつ、示談交渉や捜査・裁判での弁護活動を総合的にサポートし、刑事処分・行政処分のリスクを少しでも軽減するための最適な対応策をともに模索いたします。


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