医療記録や専門家の意見書の収集と活用

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はじめに

交通事故によって被害者に後遺障害が生じた場合、民事・刑事の両面で「被害の実態を正確に示す資料」が重要です。その中核を成すのが、医療記録(診療録、検査画像など)や専門家の意見書(医師の所見、リハビリ専門家のレポートなど)です。これらを適切に収集・分析し、示談や裁判で活用することが、結果を大きく左右する要因となります。加害者にとっては、後遺障害等級の認定や被害者の治療経過を正確に把握することで、賠償金額や刑事責任の見通しを立てやすくなり、戦略的な示談交渉や弁護活動が可能となります。

本稿では、医療記録や専門家の意見書をどのように収集し、どのように活用すればよいのか、弁護士法人長瀬総合法律事務所の経験に基づいて解説します。

Q&A

Q1:加害者側が被害者の医療記録を入手することは可能でしょうか?

被害者やその代理人(弁護士)を通じて取得するのが一般的です。加害者側が直接医療機関に問い合わせても、医療機関は患者のプライバシー保護の観点から簡単には情報を開示しません。示談交渉の過程で被害者と情報共有の合意を得ることがポイントになります。

Q2:医療記録にはどのような種類が含まれるのですか?

一般的には以下の資料が重要です。

  • 診療録(カルテ)
  • 診断書・診療情報提供書
  • 画像データ(レントゲン、CT、MRIなど)
  • リハビリ記録
  • 手術記録処置経過
    これらを総合して被害者のケガの程度や後遺障害の原因・程度を把握します。

Q3:医療記録を入手したら、どのように使うのですか?

民事の示談交渉では、後遺障害等級の確定や、傷害の程度・治療期間の妥当性を検証する材料になります。刑事手続きでは、被害の深刻さを示す証拠や、加害者の過失度合いを推測する資料として活用されることがあります。

Q4:専門家の意見書とは具体的に何を指すのでしょうか?

たとえば、医師の意見書(後遺障害の因果関係、将来の治療見通しなど)や、リハビリ専門職の報告書(後遺障害のリハビリプラン、生活への支障度合いなど)が考えられます。必要に応じて交通事故鑑定の専門家に依頼し、事故態様や衝撃の大きさなどを検証する場合もあります。

Q5:被害者が後遺障害等級に納得していない場合、専門医のセカンドオピニオンを求めることはあるのですか?

はい。後遺障害等級が「低すぎる」と感じる場合や「非該当」とされた場合、被害者側は異議申立てを行うことがあります。その際、別の専門医の意見書を付けて再審査を求めるケースもあります。

Q6:加害者側が独自に専門家に意見書を依頼することはできますか?

可能です。ただし、被害者の診療情報を十分に共有してもらえない場合や、被害者が協力を拒む場合は、事実上困難になるケースもあります。弁護士を通じて必要資料の開示を要請し、専門家に検証を依頼する形が考えられます。

Q7:医療記録や意見書を取得する際の費用は誰が負担するのですか?

通常は各当事者が必要に応じて取得し、費用を立て替えます。示談が成立すれば、賠償金の一部として精算される可能性があります。

Q8:画像検査や診療録が訴訟で争点になるのはどんな場面ですか?

後遺障害の原因や程度、因果関係などが争われる場面です。被害者が別の病気や事故で同様の障害を抱えていたのではないか、事故とは無関係の要因で症状が悪化したのではないか、などの反論を巡り、カルテや画像検査を詳細に検討することがあります。

Q9:意見書を裁判所に提出すれば必ず有利に働きますか?

提出された意見書の内容や専門性、客観的根拠の有無によって評価は変わります。主観的かつ裏付けに乏しい意見書は大きな効果を持ちません。信頼できる専門家の分析と、適切な医学的エビデンスが欠かせません。

Q10:弁護士は医療知識が専門ではないと思いますが、どのように医療記録や意見書を扱うのですか?

弁護士は医療の専門家ではないため、必要に応じて医師や鑑定人、リハビリ専門家などと連携しつつ資料を分析します。法的視点から「どのように証拠化して説得力を持たせるか」を検討し、示談交渉や裁判で効果的に活用することが弁護士の役割となります。

解説

医療記録の収集ルート

加害者側が被害者の医療記録を取り寄せるには、以下のルートが一般的です。

  1. 被害者(または被害者代理人)へ開示の同意を得る
    示談交渉の一環として「後遺障害等級や治療内容を確認し、公平な賠償額を算定したい」という趣旨で合意を取る。
  2. 裁判手続き上の証拠開示
    民事訴訟や刑事裁判が始まると、訴訟手続きのルールに従い、相手方や裁判所が証拠を開示する場合がある。

専門家の意見書の役割

後遺障害がどの程度の等級に該当するかは、医学的な判断が欠かせません。検査画像やカルテを読んでも正確な評価は難しいため、整形外科医や脳神経外科医など専門医の意見をもとに因果関係や症状固定時期、今後の治療見通しなどを整理し、裁判所や保険会社を説得する材料を作ります。

具体的な活用シーン

  • 示談交渉
    保険会社に対して「この後遺障害は○級と認定されるべき」という主張を裏付ける
  • 刑事裁判
    被害者の苦痛や将来にわたる生活困難を具体的に説明し、量刑上の配慮を求める
  • 異議申立て
    被害者が後遺障害等級の判断に納得いかない場合、別の専門医の意見書を添えて再審査を請求する

医療記録や意見書を適切に評価するためのポイント

  1. 医学的根拠の有無
    客観的な検査結果(MRI画像など)に基づいているか
  2. 専門性のレベル
    執筆者が専門医としての資格や経験を十分に備えているか
  3. 具体性
    症状・原因・後遺障害の程度を定量的かつ論理的に示しているか
  4. 事故との因果関係
    事故前との比較や、他の要因(持病、別の事故)の影響を除外できているか

弁護士と専門家の連携体制

後遺障害等級が大きく争点となる事件では、弁護士が外部医師医学アドバイザーと連携する場合もあります。弁護士と医療専門家が協力することで、医学的見解を法的文書へ落とし込み、示談交渉や裁判で有利に働きかけることが可能になります。

刑事・民事両面への影響

  • 民事面(示談・損害賠償)
    後遺障害等級の認定や治療費・介護費の算定に影響し、最終的な示談金の額が決まる。
  • 刑事面(量刑・公判審理)
    被害者が重い障害を負ったことを示す証拠として扱われる。加害者側の弁護士は、被害者の症状や通院状況を正しく把握しないと、情状酌量を得るための対策が立てにくい。

弁護士に相談するメリット

的確な資料収集のノウハウ

弁護士が示談交渉や訴訟を前提に、どの医療記録や意見書が必要かを的確に判断し、収集の手続きをサポートします。患者本人(被害者)と協議しながら、プライバシー保護と手続き上の必要性を両立させつつ情報を取得できることは大きなメリットです。

専門家とのネットワーク

医療分野に詳しい弁護士や、医師と提携している法律事務所であれば、複雑な後遺障害事案でもスムーズにセカンドオピニオンや鑑定を依頼できます。被害者側が出してきた医師の意見に対して、異なる見解を示す専門家を探すことも可能です。

資料の整理と法的主張の明確化

たとえ医療記録を大量に入手しても、それをどう法的に整理するかが難題です。弁護士が記録を精読し、「どの部分が後遺障害等級に影響するか」「示談や裁判でどんな主張を展開すべきか」を検討し、説得力ある書面を作成します。

刑事・民事両面での戦略立案

後遺障害が重い事故は、民事と刑事が同時並行で進むケースもあります。弁護士は医療記録や意見書を活かして、示談交渉で適切な補償を提示しつつ、刑事裁判では加害者の情状を最大限にアピールするという多面的な対応が可能です。

まとめ

後遺障害等級が認定されるかどうか、また何級に該当するかは、被害者・加害者双方にとって重大な問題です。そのためには医療記録専門家の意見書が欠かせません。以下のポイントを改めて確認しましょう。

  1. 医療記録の入手は被害者の同意が必要
    プライバシー保護と手続き上の要請をバランスさせ、弁護士が交渉。
  2. 専門家の意見書が後遺障害等級や賠償額に直結
    信頼できる医師やリハビリ専門家の具体的な分析が欠かせない。
  3. 民事・刑事両方で重要な資料
    示談金の算定、量刑判断などに影響。
  4. 弁護士のサポートで効率的に収集・活用
    顧問医師との連携や法的文書への落とし込みがスムーズに進む。
  5. 時には加害者側の鑑定も検討
    被害者主張と異なる見解を示すために専門家を依頼するケースも。

万が一、後遺障害事案で医療記録や専門家の意見書の扱いにお困りの際は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。証拠の収集・分析から裁判戦略の立案までサポートし、可能な限り適切な解決を目指します。


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