免許取り消し・停止など行政処分との関係

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はじめに

交通事故においては、刑事責任(過失運転致死や危険運転致死など)の追及がクローズアップされがちです。しかし、実際には「免許の取り消し・停止」といった行政処分も、加害者の生活に大きな影響を及ぼします。たとえ刑事裁判で不起訴や執行猶予になったとしても、一定期間の免許停止や取消しは避けられない場合も多く、その後の仕事や日常生活に大きな制約が伴うことは否めません。

本稿では、死亡事故を起こした際にどのような行政処分が科されるのか、刑事裁判との関係性はどうなっているのか、といった点を中心に解説します。さらに、弁護士の関与がこうした行政処分にどのような影響をもたらすのか、異議申立ての可能性なども含めて説明いたします。

Q&A

Q1:死亡事故の場合、免許取り消しになる可能性は高いのでしょうか?

一般的には高いといえます。死亡事故は重大な結果をもたらすため、点数制度での加算も大きく、取り消しも十分にあり得ます。

Q2:刑事裁判で無罪になったり、不起訴になったりしても、免許取り消しはあるのですか?

刑事処分と行政処分は別個に進むため、たとえ無罪や不起訴になった場合でも、行政庁(都道府県公安委員会)が独自に免許取り消し・停止を行うケースがあります。

Q3:免許取り消しになると、どれくらい再取得までに時間がかかりますか?

免許取り消し処分を受けると、一定期間(1年〜10年など)が経過しないと再取得ができません。死亡事故の場合1年〜5年、場合によってはそれ以上の欠格期間が設定されることもあります。

Q4:欠格期間を短縮する方法はありますか?

いわゆる「取消処分者講習」を受講し、公安委員会の審査で認められれば、欠格期間の短縮が認められる場合があります。ただし、死亡事故に関しては悪質性が高いと判断されることが多く、短縮が認められるハードルは高いです。

Q5:免許停止と取り消しの違いは何ですか?

  • 免許停止
    一定期間(30日~180日など)車の運転が禁止されるが、期間終了後に免許が有効に戻る。
  • 免許取消
    一度免許自体が失効し、再取得手続きが必要になる。欠格期間が満了しても、教習所での学科・実技試験を再び受けなければならない。

Q6:行政処分が決定するまでにどのような手続きが行われるのですか?

警察が事故の記録や違反点数を取りまとめ、公安委員会がそれを審査します。必要に応じて意見の聴取(聴聞会)が行われ、加害者が弁明の機会を与えられます。その上で正式に処分が決定されます。

Q7:聴聞会ではどんな主張が認められるのですか?

主に「事実関係の誤り」や「特別な事情による減免の必要性」などが争点となります。たとえば、事故態様について違反点数が不当に高く算定されているとか、家庭の事情でどうしても免許が必要だといった訴えを行うことがあります。

Q8:弁護士はこの行政処分に対して何かできるのですか?

弁護士が聴聞会の代理人として出席し、事実関係の誤りを正したり、減免を求める主張を整理したりすることは可能です。また、処分が出た後に不服がある場合、行政訴訟や異議申立てのサポートも行えます。

Q9:免許取消中に車を運転するとどうなりますか?

無免許運転として、さらに重い刑事罰や点数加算を受ける可能性があります。再取得が遠のくだけでなく、危険運転などにあたる場合は実刑リスクも高まるため、絶対に運転してはいけません。

Q10:免許取消によって仕事を失うケースもありますか?

特に営業職や運送業など、車の運転が必須の職種では解雇リスクや配置転換による収入減が実際に起こり得ます。お早めに弁護士へ相談し、免許取消・停止の期間をどう乗り越えるか、職場への影響を最小限に抑える方法を検討することが大切です。

解説

刑事処分と行政処分は別物

交通事故における加害者の処罰は大きく2種類存在します。

  1. 刑事処分
    過失運転致死罪、危険運転致死罪などで有罪判決を受けるかどうか。
  2. 行政処分
    免許停止・取消といった運転免許に関する処分。

両者は独立した手続きで行われるため、たとえ裁判所で「不起訴」や「無罪」になっても、行政機関が「事故の重大性」を理由に免許取消を決定することは珍しくありません。また、逆に言えば、刑事裁判で「有罪・執行猶予」が付いても、必ずしも免許が取り消されるとは限らない――とはいえ、死亡事故の場合はほぼ確実に取り消し処分が下ると考えてよいでしょう。

違反点数の仕組み

道路交通法では、交通違反や事故に応じて点数が加算され、一定の基準を超えると免許停止や取消が行われる仕組みがあります。死亡事故を起こした場合、加点は20点以上に及ぶことが多く、これだけで免許取消となるケースが大半です。過去の違反歴があるほど加算点数が上乗せされ、取り消し期間も長くなる傾向があります。

聴聞会の流れとポイント

免許取り消し・停止処分の手続きとして、「意見の聴取(聴聞会)」という場が設けられています。

  • 日時・場所の通知
    公安委員会から通知が届く。
  • 当日の進行
    加害者(被通知人)または代理人が出席し、事実関係や処分の軽減理由を説明する。
  • 結果の通知
    後日、正式な処分通知が送付される。

ここで「過失割合が過大に評価されている」「実際には飲酒運転ではなかった」など、事実誤認があれば主張し、免許停止にとどめるよう求めることは可能です。ただし、死亡事故の場合は原則的に点数が大きく、取り消し回避は難しいことが多いです。

欠格期間と取消処分者講習

免許取消が確定すると、一定の欠格期間が満了しない限り再取得が認められません。死亡事故の場合、欠格期間が3年〜5年あるいはそれ以上になることがあります。

  • 取消処分者講習
    欠格期間中、または終了直後にこの講習を受講し、公安委員会による審査を経ることで欠格期間が短縮される可能性があります。ただし、死亡事故のように重い違反では厳格に運用されるため、実際にどの程度短縮が認められるかはケースバイケースです。

行政処分への対応策

弁護士への相談によって期待できる点としては、主に下記が挙げられます。

  • 聴聞会での代理・同行
    発言内容を整理し、書類の不備や事実誤認を指摘する。
  • 異議申立て・行政訴訟
    処分結果に不服がある場合の法的手段を検討。
  • 再取得への道筋
    取消処分者講習の受講や、必要書類の準備についてアドバイス。

とはいえ、死亡事故は加点が大きく、取り消し回避自体は難しいケースが多いため、その後の生活設計や職場への対応も含めて総合的なサポートを受けられるとよいでしょう。

弁護士に相談するメリット

刑事事件と行政処分を一括して見据えたアドバイス

死亡事故の場合、並行して「刑事手続き(捜査・裁判)」「民事手続き(示談交渉)」「行政手続き(免許処分)」が進行します。各手続きを個別に進めていると、どうしても対応漏れやスケジュールの衝突が起きがちです。弁護士はこれらを総合的に管理し、効率的かつ的確な戦略を立てることができます。

聴聞会や異議申立てでの主張立証

聴聞会では適切な主張をすることで「免許停止期間を短縮できる可能性」や「取り消しを回避する可能性」がわずかでも残る場合があります。弁護士が代理人として出席すれば、事実関係を整理し、法的観点からの主張を展開することで最善を尽くせます。また、処分後に異議申立てや行政訴訟を起こす場合にも、弁護士のサポートが有益です。

生活再建のサポート

免許を失うと通勤手段や仕事がなくなるなど、生活基盤が揺らぐケースは珍しくありません。弁護士は、刑事事件の量刑面でのアドバイスに加えて、行政処分を見越した職場への説明方法や、家族の協力体制づくりなど、実務的なサポートを提供します。

他の手続き・手配との併走

死亡事故では、被害者遺族への示談交渉や刑事手続きへの対応が急務です。行政処分手続きに意識が回らず、聴聞会に必要な書類や手続きを怠ってしまうリスクもあります。弁護士が全体を把握していれば、そのようなミスを回避しやすくなります。

まとめ

死亡事故を起こしてしまった場合、加害者は刑事裁判における懲役刑や罰金刑などだけでなく、行政処分(免許取り消し・停止)という別の大きなリスクにも直面します。特に以下の点は押さえておきましょう。

  1. 刑事手続きと行政処分は独立している
    無罪・不起訴でも免許取り消しになり得る。
  2. 死亡事故は点数加算が大きく、取消がほぼ避けられない
    欠格期間も長期化しやすい。
  3. 聴聞会での主張立証が重要
    わずかでも処分を軽くする可能性を探るためには、十分な準備が必要。
  4. 弁護士への早期相談によるサポート
    刑事・民事・行政の各手続きを同時並行で管理し、最善の結果を目指す。

万が一、死亡事故でお困りの際は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。行政処分においても、聴聞会への同行や異議申立て手続きなどをサポートし、少しでも加害者の方が立ち直りやすい環境づくりをお手伝いいたします。


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