死亡事故発生後の捜査手続きの流れ

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はじめに

交通事故で人が亡くなるという事態は、被害者・加害者の双方にとって大変重い結果をもたらします。加害者側は当然ながら民事上の損害賠償責任を負うだけでなく、刑事手続き上でも厳しい捜査を受ける可能性が高くなります。しかし、実際にどういったプロセスで警察や検察の捜査が進むのか、具体的に理解している方は多くないのではないでしょうか。

本稿では「死亡事故発生後の捜査手続き」について、初動捜査から書類送検・起訴判断までの流れを整理しました。取り調べの段階で注意すべきことや、示談交渉との兼ね合い、早期の弁護士依頼の重要性など、加害者となってしまった際に押さえておきたいポイントを解説いたします。万が一、あなたやご家族が死亡事故に巻き込まれた場合でも、適切な対応をとる一助となれば幸いです。

Q&A

死亡事故が起きたら、まず警察はどのように動くのですか?

事故の通報を受けた警察官が、現場に急行して交通整理や被害者の救護を行うとともに、現場検証を実施します。その後、運転者や目撃者から事情聴取を行い、事故発生の経緯を調べていきます。重大な結果(死亡事故)が発生している場合は、運転者の飲酒・薬物使用の有無、速度超過の程度などを重点的に確認します。

その場で逮捕される可能性はありますか?

現行犯逮捕がなされるかどうかは事故態様によります。明らかに悪質な飲酒運転や逃走の恐れがある場合などは、その場で逮捕されることがあります。一方、逮捕に至らず、在宅で捜査が進められるケースもあります。

死亡事故の場合、必ず自動車運転処罰法や刑法上の罪で立件されるのですか?

被害者が亡くなっていれば、過失運転致死罪や危険運転致死罪に該当する可能性が高いです。ただし、運転者が一切の過失を負わない状況(不意に飛び出されたなど)や、事故の原因が他にある場合には、不起訴とされるケースもあり得ます。

加害者が警察の取り調べで気をつけるべきことは何ですか?

事故当時の記憶をあいまいなまま話してしまったり、自己防衛のために嘘をついてしまうと、後々不利に作用する場合があります。また、警察の取り調べ調書にサインするときは、内容を十分に確認し、事実と異なるところがないかチェックすることが大切です。

捜査中に示談交渉はできますか?

はい、できます。むしろ、死亡事故では早期に示談を成立させることで、被害者遺族の処罰感情が和らぐ場合も多く、検察官や裁判所の判断(起訴・量刑)にもプラスに働きやすくなります。

書類送検とはどういう手続きですか?

警察が捜査結果を検察庁に送致する手続きを「書類送検」といいます。逮捕・勾留される場合は身体を送致しますが、逮捕がない在宅事件の場合でも、捜査資料や報告書が検察官へ送付されることで、最終的に起訴・不起訴の判断が下されます。

不起訴処分となるケースはあるのでしょうか?

全体としては少ないですが、被害者の飛び出しなどで運転者に過失がほぼなかったり、すでに示談が成立して遺族が強く処罰を望んでいなかったりすると、不起訴処分となる可能性はあります。過失の度合いが低い場合や、加害者の反省・示談状況が良好であれば、検察官が起訴を見送るケースもあり得ます。

起訴されると必ず裁判になるのですか?

起訴されれば基本的には刑事裁判に進みます。しかし、略式起訴(罰金刑)になるような軽微な事件であれば、公判(裁判)を経ずに手続きが完了することもあります。ただし死亡事故は重大事案となりやすいため、正式裁判になる可能性が高いでしょう。

捜査が長引く理由にはどのようなものがありますか?

事故状況の再現や鑑定、目撃証言の収集に時間がかかることが多い傾向にあります。また、被害者遺族との示談交渉の進展具合によっても、捜査機関が処分保留とするケースがあります。重要証拠や目撃者の所在確認などで調査が難航すると、捜査期間が長期化する可能性があります。

警察・検察から呼び出しを受けたらどうすればよいですか?

呼び出しには原則として応じる必要がありますが、取り調べや事情聴取に不安がある場合は、あらかじめ弁護士と相談しておくと安心です。供述内容を正確に把握し、誤解を生む表現を避けるためにも、専門家の助言を得ることをおすすめします。

解説

事故発生直後:現場検証と初動捜査

死亡事故が発生した場合、警察は現場到着後すぐに被害者の救護を行う一方で、事故車両の位置関係やブレーキ痕の有無などを細かくチェックします。その結果を踏まえて、加害者の運転状況(速度超過や飲酒の有無など)を推測し、必要に応じて加害者を現行犯逮捕することもあります。逮捕されない場合でも、後日任意で警察署へ出頭を求められることが一般的です。

取り調べと証拠収集

取り調べでは、加害者に対し事故時の具体的な状況、運転の経緯、被害者との接触状況などを詳しく尋ねます。また、目撃者や同乗者からの聴取、現場カメラ・ドライブレコーダー映像の分析などが行われます。警察は得られた証拠を精査し、「過失運転致死か、危険運転致死か」などの罪名や、加害者の責任程度を判断していきます。

書類送検と検察官の判断

警察の捜査が一通り終わると、書類送検を通じて事件は検察官のもとに移ります。検察官は警察からの捜査資料だけでなく、被害者遺族との示談状況や加害者の前科・前歴、事故の悪質性などを踏まえ、起訴・不起訴を決定します。死亡事故であっても、不起訴となる可能性がゼロではありませんが、悪質性が高い場合は起訴されることが多いです。

在宅捜査と逮捕・勾留

必ずしも死亡事故で逮捕されるわけではありませんが、飲酒やひき逃げなど、悪質と疑われる場合は逮捕・勾留されるリスクが高まります。逮捕されなくても在宅で捜査が進められる場合は、呼び出しへの対応が中心になりますが、検察官の判断次第で突然逮捕される可能性も皆無ではありません。

示談交渉との関係

捜査段階でも被害者遺族との示談交渉は進めることが可能です。死亡事故の場合、示談金額が高額になる傾向がありますが、誠意をもって早期に対応を図ることで、最終的な処分に好影響を及ぼすことがあります。示談が成功すれば、不起訴や執行猶予が得られる可能性が高まるため、加害者にとっては非常に重要な手続きです。

弁護士に相談するメリット

取り調べ対応の事前準備

警察や検察からの取り調べに際し、弁護士からのアドバイスを得ることは非常に重要です。供述内容が後の起訴・不起訴や量刑に大きく影響するため、正確かつ一貫性のある説明が求められます。弁護士は事故状況や法律的観点を踏まえて、どのように供述すべきかをサポートしてくれます。

示談交渉のサポート

死亡事故では、遺族への謝罪や賠償をスムーズに行えるかどうかが大きな焦点です。弁護士を介して交渉すれば、適切な金額の算定や書面作成を専門的知識に基づいて進められます。また、遺族感情に配慮した対応を行うことで、示談成立の可能性を高められます。

不起訴・執行猶予の獲得に向けた弁護活動

捜査官・検察官の心証を左右する要素としては、反省態度や示談状況、再発防止策などが挙げられます。弁護士はこれらを整理し、書面化して検察官や裁判所に提出することで、より有利な結果(不起訴や執行猶予など)につなげることを目指します。

万が一の逮捕・勾留にも対応

逮捕・勾留された場合でも、弁護士がいれば早期の接見を通じて状況を把握し、保釈請求を行ったり、勾留理由開示の場で適切に主張を展開したりできます。被疑者・被告人が自由を拘束されてしまうと、仕事や家族への影響が大きくなるため、少しでも早い解放を目指した活動が欠かせません。

まとめ

死亡事故発生後の捜査手続きは、以下のような段階を踏んで進みます。

  1. 現場検証・初動捜査
    警察が現場での証拠収集や目撃者からの聞き取りを行い、飲酒・速度超過など悪質性を判断します。
  2. 加害者への取り調べ
    交通事故の経緯や運転態様について詳しく事情聴取が行われます。供述内容は後の刑事処分に大きく影響します。
  3. 書類送検と検察官の処分判断
    警察から検察官へ事件が送られ、起訴・不起訴、あるいは略式起訴などが決まります。
  4. 示談交渉と刑事処分の関連
    遺族との示談は、起訴・量刑判断に大きな影響を与えます。誠意を示し、早期に和解を図ることで処罰が軽減される可能性があります。
  5. 起訴されれば裁判手続きへ
    死亡事故では正式裁判が行われることが多いため、弁護士の弁護活動を通じて量刑を少しでも軽くする努力が必要です。

捜査機関の取り調べや遺族との示談交渉など、死亡事故では複雑な手続きを同時並行でこなさなければならないことが多くなります。精神的にも大きな負担を伴うため、弁護士法人長瀬総合法律事務所のような専門家へ早めに相談することが、安全かつ適切な対応への近道です。「逮捕されるのか」「不起訴の可能性はあるのか」「示談金はどれくらい必要か」といった悩みを抱えている方は、お気軽にご相談ください。


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