【暴力犯罪】
公務執行妨害
【罪名】
公務執行妨害罪(刑法95条1項)
【量刑】
公務執行妨害罪:
3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
【犯罪の内容】
公務執行妨害罪は、公務員が職務を行うにあたり暴行又は脅迫を加えた場合に成立する犯罪です。
典型的な例としては、職務質問を行っている警察官に対し暴力を振るって抵抗した場合が挙げられます。
暴行行為は、公務員の身体に対して向けられたものに限られず、職務に対して向けられたものであれば足ります。
例えば、警察官の捜索差押に立ち会い中に、暴力で証拠物を破壊する行為も公務執行妨害罪となります。このように、本罪の規定は公務員の身体を保護するものではなくその「職務」を保護することを目的としています。したがって、公務員の行っている職務は適法なものでなければなりません。
職務が違法である場合、それに対して暴力で抵抗しても、常識的な程度を超えないものであれば正当防衛(刑法36条1項)として保護されます。
またその程度を超えてしまったとしても公務執行妨害罪は成立せず、暴行罪(刑法208条)、または暴行罪の過剰防衛(刑法36条2項)となります。
【弁護方針】
公務執行妨害罪は、公務員が行っていた職務が違法であった場合には成立しません。
そこで、暴行・脅迫の前後の状況を具体的に検討し、公務員が行った職務が違法ではなかったか調査を行います。例えば、その職務が警察官の職務質問(警職法2条1項)であれば、質問に際して被疑者の意思を無視して無理矢理拘束していたような事情がなかったかを検討します。
その職務が逮捕行為であれば、逮捕状の提示はなされていたか(刑事訴訟法201条)、現行犯逮捕であれば被疑者の犯罪行為が明白であったのか(刑事訴訟法212条)などの事情を調査します。
職務が適法であった場合、酌量を求めていくことになります。公務執行妨害罪は主に警察官などの公務員に対して行われる犯罪ですので、示談締結は実質的に不可能です。
弁護士を通じて検察官に反省文を提出したり、示談金の代わりに慈善団体に寄付を行う(贖罪寄付)などの方法で謝罪の意を示します。
また、公務執行妨害罪の犯行の動機は、「憤怒」によるものが約8割を占めます(警察庁犯罪統計)。
非計画的で突発的な犯罪の場合、酌量の余地がおおいにありますので、捜査機関の側に挑発的な行動があったのではないかなど、現場でのやり取り、警察官の目的、発言、被疑者の普段の性格など様々な要素を考慮し、暴行・脅迫に至った経緯に酌むべき事情があったことを捜査機関や裁判所に対して主張・立証していきます。