飲酒運転で人身事故を起こした場合の刑罰は?危険運転致死傷罪とは

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はじめに

「飲んだら乗るな」という標語は誰もが知っていますが、現実には「少ししか飲んでいないから大丈夫」「家まで近いから」という安易な自己判断により、飲酒運転による悲惨な事故が後を絶ちません。

飲酒運転による人身事故は、単なる交通事故(過失)とは見なされず、「走る凶器による犯罪」として社会から極めて厳しい目が向けられます。

法律においても、その処罰は年々厳罰化されており、通常の不注意による事故とは比較にならないほど重い刑罰が科されます。場合によっては、殺人罪に匹敵するような長期間の懲役刑が言い渡されることもあります。

本記事では、飲酒運転で人身事故を起こしてしまった場合に問われる罪の種類、特に近年適用が増えている「危険運転致死傷罪」の詳細、そして逮捕後の流れや弁護士の役割について解説します。

飲酒運転・人身事故に関するQ&A

まずは、飲酒運転事故において当事者が直面する深刻な疑問について、Q&A形式で解説します。

Q1. 飲酒運転で事故を起こすと、必ず「危険運転致死傷罪」になりますか?

いいえ、必ずしもそうとは限りません。

法律上、飲酒運転による人身事故は大きく分けて2つの罪のいずれかに該当します。

  1. 過失運転致死傷罪:いわゆる一般的な人身事故の罪。
  2. 危険運転致死傷罪:アルコールの影響で「正常な運転が困難な状態」であったと認められる場合。

どちらが適用されるかは、事故当時の酩酊(めいてい)具合や運転状況によって決まりますが、危険運転致死傷罪が適用されると刑罰は格段に重くなります。

Q2. 任意保険に入っていますが、被害者への賠償はされますか?

被害者救済の観点から、対人賠償(相手の怪我や死亡に対する補償)については、加害者が飲酒運転であっても保険金が支払われるのが一般的です。

しかし、加害者自身の車両の修理費や、加害者自身の怪我に対する保険金は、免責事由(契約違反)として一切支払われません。また、特約(弁護士費用特約など)も使えないケースが多く、経済的にも破滅的な負担を負うことになります。

Q3. 飲酒運転の人身事故でも執行猶予はつきますか?

非常に厳しいと言わざるを得ません。

被害者が軽傷であり、かつ「過失運転致死傷罪」にとどまる場合は執行猶予の可能性があります。しかし、「危険運転致死傷罪」で起訴された場合や、被害者が死亡・重傷のケースでは、初犯であっても実刑判決(刑務所への収容)となる可能性が極めて高いのが現実です。

1. 適用される2つの法律と刑罰の違い

飲酒運転で人を死傷させた場合、検察官は「過失運転致死傷罪」か「危険運転致死傷罪」のどちらかで起訴します。この2つは刑罰の重さに天と地ほどの差があります。

過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法 第5条)

アルコールを摂取していたものの、「正常な運転ができないほどではなかった(軽度の酒気帯び)」と判断された場合や、危険運転の立証が困難な場合に適用されます。

  • 要件:運転上の不注意により人を死傷させた場合。
  • 刑罰:7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金。

通常の事故と同じ罪名ですが、飲酒という悪質性が加わるため、量刑(実際の刑の重さ)は重くなる傾向にあります。

危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法 第2条・第3条)

アルコールの影響により、正常な運転が困難な状態で車を走行させ、事故を起こした場合に適用されます。これは「過失(うっかり)」ではなく、「故意(危険な行為をあえて行った)」に近い犯罪として扱われます。

  • 要件:アルコールまたは薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、人を死傷させた場合。
  • 刑罰(負傷)15年以下の拘禁刑。
  • 刑罰(死亡)1年以上の有期拘禁刑(最高20年)

このように、拘禁刑の上限が非常に長く設定されており、罰金刑は存在しません。死亡事故の場合、最短でも1年は刑務所に入らなければならない(執行猶予がつかない限り)重罪です。

2. 「危険運転致死傷罪」の具体的な判断基準

「危険運転致死傷罪」が適用されるかどうかの境界線はどこにあるのでしょうか。法律上の定義である「正常な運転が困難な状態」とは、具体的にどのような状態を指すのか解説します。

「正常な運転が困難な状態」とは

単に「酒臭い」「顔が赤い」というだけでは認定されません。具体的には、以下のような客観的な状況から判断されます。

  • まっすぐ歩けない(千鳥足)、ろれつが回らない。
  • 直進でも蛇行運転をしている。
  • 信号無視や、著しい速度超過をしている。
  • 対向車線にはみ出している。
  • 事故直後の言動が支離滅裂である。

警察は、目撃証言、防犯カメラやドライブレコーダーの映像、呼気検査の数値、そして事故直後の被疑者の様子(直立歩行検査など)を徹底的に捜査し、この要件を満たす証拠を積み上げます。

「発覚免脱罪」との関係

近年、「飲酒運転がバレるのが怖い」として現場から逃走し、酔いを冷ましてから出頭するという悪質なケース(いわゆる「逃げ得」狙い)が問題視されました。

これに対処するため、「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車運転死傷処罰法 第4条)」が設けられています。

  • 内容:アルコールの影響がある状態で事故を起こし、その影響の有無を確認できなくするために、更にアルコールを摂取したり、その場から逃走したりする行為。
  • 刑罰12年以下の拘禁刑

つまり、逃げても罪が重くなるだけであり、決して逃げ得は許されません。

3. 行政処分と民事責任の厳しさ

飲酒運転の人身事故は、刑事処分だけでなく、行政処分(免許)と民事責任(賠償)においても破滅的な結果を招きます。

免許は「一発取り消し」かつ「長期欠格」

飲酒運転の点数は非常に高く設定されています。

  • 酒酔い運転:35点
  • 酒気帯び運転(0.25mg/l以上):25点
  • 酒気帯び運転(0.25mg/l未満):13点

ここに「人身事故の付加点数(怪我の程度により数点〜20点)」が加算されます。

結果として、どのような軽微な事故であっても、飲酒運転であれば免許取り消しは免れません。さらに、欠格期間(免許を再取得できない期間)は、3年から最大10年という長期間に及びます。

「仕事で車が必要」という事情は、飲酒運転においては一切考慮されません。

億単位の損害賠償と自己負担

被害者が死亡したり重い障害が残ったりした場合、賠償金は数千万円から数億円に上ることがあります。

前述の通り、被害者への賠償は対人保険でカバーされることが多いですが、加害者自身の車の修理費や怪我の治療費は保険が出ません。また、被害者側から「慰謝料の増額」を求められることも多く、示談交渉は難航を極めます。

4. 逮捕後の流れと捜査の厳しさ

飲酒運転による人身事故の場合、在宅捜査(家に帰される)になることは稀で、逮捕・勾留される可能性が高いです。

原則として逮捕・勾留される

飲酒運転をする人物は「規範意識が低い」「証拠隠滅(口裏合わせなど)の恐れがある」と判断されやすいためです。逮捕されると、最大23日間、留置場から出られなくなります。

起訴前の弁護活動が重要

検察官は、勾留期間中に「危険運転致死傷罪」で起訴するか、「過失運転致死傷罪」で起訴するかを決定します。

一度「危険運転」で起訴されてしまうと、裁判でそれを覆すのは容易ではありません。そのため、起訴される前の段階で、弁護士を通じて「正常な運転が困難とまでは言えなかった」という主張や証拠を提出し、罪名のランクを下げる活動(過失運転致死傷罪への変更を求める活動)を行うことが重要になります。

5. 弁護士に相談するメリット

飲酒運転の人身事故は、弁護士にとっても難易度の高い事件の一つです。しかし、だからこそ早期の専門家の介入が重要です。

正当な罪名での処罰を求める

「お酒を飲んでいた」という事実だけで、安易に「危険運転致死傷罪」が適用されてしまうと、実際の行為に見合わない重すぎる刑罰を受けることになります。

弁護士は、事故当時の状況を客観的に分析し、もし「危険運転」の要件を満たしていないのであれば、その旨を検察官や裁判官に強く主張します。これは罪を逃れるためではなく、「犯した罪に見合った適正な処罰」を受けるために必要な権利です。

被害者対応と示談交渉

飲酒運転の被害者感情は峻烈を極めます。「絶対に許さない」「顔も見たくない」と拒絶されることがほとんどです。

加害者本人が交渉することは不可能に近いため、弁護士が代理人として謝罪の意を伝え、粘り強く示談交渉を行います。示談が成立するかどうかは、量刑(刑の重さ)に大きく影響します。

社会復帰に向けた環境調整

実刑判決のリスクが高い事案だからこそ、もし執行猶予の可能性がわずかでもあるならば、家族の監督体制の構築や、アルコール依存症治療への通院誓約など、再犯防止策を裁判所に具体的に提示する必要があります。弁護士は、ご家族とも協力しながら更生計画を作成し、情状酌量を求めます。

まとめ

飲酒運転による人身事故は、被害者の人生を奪うだけでなく、加害者の人生も一瞬にして崩壊させます。

特に「危険運転致死傷罪」が適用されれば、10年以上の懲役刑も現実味を帯びてきます。

  • 刑罰:危険運転致死傷罪なら最高拘禁刑20年。
  • 行政処分:免許取り消し&長期欠格期間。
  • 社会的責任:職を失い、多額の賠償責任を負う。

「やってしまったことは取り返しがつかない」と絶望する前に、まずは弁護士にご相談ください。

どのような状況であっても、法律の専門家として、適正な手続きを守り、被害者への償いとあなた自身の更生のために最善のサポートを行います。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事件・刑事事件の経験豊富な弁護士が、緊急の相談に対応いたします。事態は一刻を争いますので、お一人で悩まずご連絡ください。

次にあなたがすべきこと

ご家族やご自身が飲酒運転事故で逮捕された、あるいは捜査を受けている場合、直ちに弁護士の接見(面会)を依頼してください。

最初の取り調べでどのような供述をするかが、その後の運命(罪名決定)を左右します。当事務所は迅速な対応をお約束します。まずは初回相談をご利用ください。

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