薬物事件の保釈は難しい?早期釈放を勝ち取るための条件と弁護活動

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はじめに

「家族が覚醒剤所持で逮捕されてしまった。いつ家に帰ってくることができるのか」
「仕事への影響を最小限にするために、一刻も早く保釈してほしい」

薬物事件でご家族が逮捕された際、残されたご家族が最も懸念されるのは、身体拘束がいつまで続くのかという点ではないでしょうか。

長期間の勾留は、会社や学校などの社会生活に深刻な影響を及ぼします。そのため、起訴された後は「保釈(ほしゃく)」による身柄の解放を目指すことが一般的ですが、薬物事件においては、他の犯罪類型と比較して保釈のハードルが高いと言われることがあります。

なぜ薬物事件の保釈は難しいのでしょうか。また、そのハードルを乗り越えて保釈を認めさせるためには、どのような活動が必要なのでしょうか。

本記事では、薬物事件における保釈の現状、審査で重要視されるポイント、そして保釈許可率を高めるための弁護士の活動について解説します。

薬物事件の保釈に関するQ&A

まずは、薬物事件の保釈について、よく寄せられる疑問にQ&A形式でお答えします。

Q1. 逮捕されたらすぐに保釈を申請できますか?

いいえ、逮捕直後には申請できません。

保釈が請求できるのは、検察官によって「起訴(きそ)」された後です。逮捕から起訴までは最大で23日間(逮捕最大3日+勾留最大20日)かかります。この捜査段階では、証拠隠滅を防ぐために身体拘束が必須とされるため、保釈制度自体が適用されません。起訴されて「被告人」という立場になった時点で、初めて保釈請求が可能になります。

Q2. 薬物事件の保釈金(保釈保証金)の相場はいくらくらいですか?

事案や被告人の資力によって異なりますが、初犯の自己使用や単純所持といったケースでは、一般的に150万円〜200万円程度になることが多いです。

営利目的や組織的な関与が疑われる場合、あるいは再犯回数が多い場合は、より高額になることもあります。なお、このお金は裁判が無事に終わり、逃亡などをしなければ全額返還されます。

Q3. 本人が「もう二度としません」と言えば保釈されますか?

ご本人の反省の言葉だけでは、保釈を認めさせるのは困難です。

裁判所は「証拠隠滅の恐れ」と「逃亡の恐れ」を厳格に審査します。特に薬物事件は、入手ルート(売人や薬物仲間)との口裏合わせや、証拠となる薬物の破棄が容易であるため、客観的にそれらが不可能である環境(しっかりとした身元引受人の存在や、医療機関への入院など)を提示しなければ、保釈は許可されません。

解説:なぜ薬物事件の保釈は難しいのか

「痴漢や窃盗なら保釈されたという話を聞くのに、なぜ薬物はダメなのか」。そう疑問に思われる方も多いでしょう。ここでは、薬物事件特有の事情と、保釈を阻む法的な壁について解説します。

1. 証拠隠滅の容易さと組織性

保釈審査において、裁判官が最も警戒するのは「罪証隠滅(さいしょういんめつ)」です。

薬物事件における証拠隠滅には、以下のようなものが想定されます。

  • 共犯者(売人・仲間)との接触: 「あいつには売っていないことにしよう」と口裏を合わせる。
  • 関連証拠の破棄: 自宅に残っている薬物、吸引器具(パイプや注射器)、顧客リストなどを処分する。

薬物は小さく、トイレに流したり隠したりすることが容易です。また、背後に暴力団や密売組織が存在することが多く、組織的な隠蔽工作が行われるリスクも高いため、裁判所は慎重な姿勢を崩しません。特に、入手ルートを黙秘している場合、「外に出たら証拠隠滅をするだろう」と判断され、保釈が却下される可能性が高まります。

2. 再犯の可能性(依存性)

薬物犯罪の特徴は「依存性」です。

裁判所は、保釈中に再び薬物に手を出してしまうこと(再犯)も懸念します。もし保釈中に再犯すれば、新たな事件の証拠が増えることになり、これも広い意味での証拠隠滅や逃亡の要因となり得ます。

「本人の意志が弱いから」という精神論ではなく、病理的な依存状態にあるとみなされるため、ただ家に帰すだけでは再犯リスクを管理できないと判断されがちなのです。

3. 保釈の種類と要件

法律上、保釈には大きく分けて2つの種類があります。

権利保釈(刑事訴訟法89条)

一定の除外事由(重罪、常習性、証拠隠滅の恐れなど)がない限り、裁判所が保釈を「許可しなければならない」という原則です。

しかし、薬物事件では、前述の「証拠隠滅の恐れ」があると認定されやすく、この権利保釈が認められないケースが多々あります。

裁量保釈(刑事訴訟法90条)

権利保釈の要件を満たさない場合でも、裁判所が諸事情を考慮して「裁量」で保釈を許可する制度です。

薬物事件の実務では、この裁量保釈を獲得できるかが勝負となります。病気治療の必要性、家族による監督体制、勾留が長引くことによる生活への甚大な不利益などを主張し、裁判官を説得する必要があります。

保釈を認めてもらうための弁護活動

薬物事件で保釈を勝ち取るためには、漫然と申請書を出すだけでは不十分です。裁判官が抱く「証拠隠滅・逃亡・再犯」の懸念を払拭するための、具体的かつ強力な証拠作りが不可欠です。

私たち弁護士は、以下のような活動を通じて、保釈許可決定を目指します。

1. 信頼できる「身元引受人」の確保と指導

保釈申請において最も重要なのが「身元引受人(みもとひきうけにん)」の存在です。通常は同居の家族(配偶者や親)がなります。

単に名前を貸すだけでは不十分です。弁護士は身元引受人に対し、以下の役割を担えるか確認し、裁判所に提出する「身元引受書」に具体化します。

  • 被告人と同居し、日々の生活を監視すること。
  • 携帯電話の管理や外出の制限を行い、かつての薬物仲間との連絡を断つこと。
  • 公判期日(裁判の日)には必ず出頭させること。

家族が高齢である、あるいは関係が疎遠であるといった事情がある場合は、より具体的な監督プラン(一日に数回連絡を入れる、GPSを持たせるなど)を策定し、裁判所へ提案します。

2. 薬物依存治療へのアプローチ(医療機関との連携)

再犯の恐れを払拭するために有効なのが、専門医療機関への通院や入院です。

特に、薬物への依存傾向が強い場合、自宅に戻るのではなく、そのまま「ダルク」などの更生施設や、専門病院へ入院することを条件に保釈を請求する手法があります。

「病院という管理された環境に身を置くため、再犯も逃亡もできない」という主張は、裁判官にとって非常に説得力を持ちます。弁護士は、受入先の病院を探し、医師と連携して受入証明書を取り付けるなどの調整を行います。

3. 入手ルートとの遮断(携帯電話の解約など)

売人や薬物仲間との縁を物理的に断ち切ることも重要です。

具体的には、使用していた携帯電話を解約し、電話番号を変更する手続きを行います。その解約証明書を裁判所に提出することで、「もう連絡を取る手段がない」という客観的な事実を示します。

また、SNSのアカウント削除や、引っ越し(住環境の変更)を検討する場合もあります。

4. 却下決定に対する「準抗告(じゅんこうこく)」

万が一、最初の保釈請求が却下された場合でも、諦めずに「準抗告」という不服申し立てを行います。

最初の判断がなぜ不当なのか、裁判官の事実誤認を指摘し、別の裁判官(合議体)による再審査を求めます。この準抗告によって判断が覆り、保釈が認められるケースも少なくありません。

また、状況の変化(被害者との示談成立や、公判が進み証拠調べが終わったタイミングなど)を捉えて、再度保釈請求を行うことも可能です。

弁護士に相談するメリット

薬物事件における保釈請求は、スピードと戦略が命です。

ご自身やご家族だけで対応しようとしても、「何をアピールすればよいか分からない」「裁判所の手続きが複雑」といった壁に直面します。

弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 迅速な対応: 起訴されたその日に保釈請求を行うなど、最短での身柄解放を目指します。
  • 説得力のある書面作成: 裁判官の判断基準を熟知した弁護士が、保釈の必要性と安全性を法的に論証します。
  • 家族へのサポート: 身元引受人となるご家族に対し、面談や法廷での証言についてのアドバイスを行い、精神的な不安を軽減します。

特に、2025年6月から施行された「拘禁刑」制度の下では、裁判所も「社会内での更生が可能かどうか」を慎重に見極める傾向にあります。保釈中の生活態度や治療への取り組みは、その後の判決(執行猶予が付くかどうか)にも大きく影響するため、保釈段階からの弁護戦略は重要です。

まとめ

薬物事件の保釈は、証拠隠滅や再犯のリスクが懸念されるため、決して容易ではありません。しかし、「難しい」からといって「不可能」ではありません。

適切な身元引受人の確保、再犯防止策の提示、そして法的に説得力のある主張を行うことで、保釈認められる可能性は十分に高まります。

一日も早い社会復帰は、被告人本人の更生のためにも、ご家族の生活を守るためにも必要不可欠です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、薬物事件における保釈請求に多数の実績があります。

「家族を早く家に帰してあげたい」「職場に判明する前に何とかしたい」

そのような切実な思いに寄り添い、私たちは全力でサポートいたします。

逮捕・勾留中であっても、弁護士は自由にご本人と面会(接見)し、準備を進めることができます。手遅れになる前に、まずは当事務所へご相談ください。

【弁護士法人長瀬総合法律事務所】

刑事事件は時間との闘いです。特に保釈請求はタイミングと準備が結果を左右します。

ご相談・接見のご依頼は、当事務所のウェブサイトのお問い合わせフォーム、またはお電話にて24時間受け付けております。

※本記事は一般的な法律知識の解説であり、具体的な事案の解決を保証するものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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