駅や商業施設での盗撮。後日逮捕の可能性と逮捕を防ぐ方法

Home » コラム » 【犯罪別】痴漢・盗撮事件の解説 » 駅や商業施設での盗撮。後日逮捕の可能性と逮捕を防ぐ方法

はじめに

駅のエスカレーターや階段、多くの人が行き交う商業施設や書店。こうした場所での盗撮事件は、後を絶ちません。もし、あなたが出来心でスマートフォンを向けてしまったとして、その場で誰にも気づかれず、捕まらなかったとしたら。「バレなかった、もう大丈夫だ」と、胸をなでおろしているかもしれません。

しかし、その安心は、誤りと言わざるをえません。

現代社会は、私たちの想像以上に「監視カメラ社会」です。あなたの行動は、駅や街の至る所に設置された無数の防犯カメラによって、詳細に記録されています。被害者が後から盗撮の事実に気づき、警察に被害届を提出すれば、警察はこれらの映像を駆使して捜査を開始し、ある日突然、逮捕状を手にあなたの自宅のドアを叩く、後日逮捕の可能性が十分にあります。

この記事では、駅や商業施設での盗撮が、どのようにして発覚し、後日逮捕に至るのか、その具体的な捜査プロセスと、逮捕という最悪の事態を回避するための有効な方法について解説します。

Q&A

Q1. マスクや帽子で顔を隠していれば、防犯カメラに映っても特定されないのではないでしょうか?

特定される可能性はあります。警察は、顔が完全に映っていなくても、服装、体格、髪型、持ち物(カバンや靴)、歩き方の癖など、様々な特徴から人物を追跡します。駅の改札を通る際の防犯カメラ、店舗の出入り口のカメラ、周辺の街頭カメラなど、複数の映像をリレー方式で解析することで、あなたの移動ルートや交通手段を割り出します。最終的に、自宅最寄り駅のカメラ映像などから、個人を特定するケースは少なくありません。

Q2. 被害者がその場で全く気づいていないようでした。それでも後から被害届を出されることはありますか?

はい、あります。被害者自身は気づかなくても、周囲にいた他の乗客や買い物客があなたの不審な行動に気づき、後から被害者に「今、盗撮されていませんでしたか?」と教えてくれるケースがあります。また、被害者自身が後から「何かおかしいな」と感じ、警察に相談した結果、防犯カメラの映像から盗撮の事実が発覚することもあります。被害者がその場で騒がなかったからといって、事件化しないとは限りません。

Q3. 警察から「〇月〇日の件で、少しお話を聞きたい」と電話がありました。どうすればよいですか?

これは、警察があなたを被疑者として特定し、捜査を進めている可能性が高い状況です。無視すべきではなく、一人で安易に出頭するのも危険です。 まずは「弁護士に相談してから、改めてこちらから連絡します」と伝え、その場での詳しい話は避けましょう。そして、直ちに刑事事件に強い弁護士に相談することをご検討ください。弁護士があなたに代わって警察に連絡を取り、事件の概要や警察の意図を確認した上で、取り調べに同行するなど、準備を整えてから出頭することが、その後の不利益を避けるために重要です。

解説

「バレなかった」は、希望的観測に過ぎません。後日逮捕の現実と、その回避策を見ていきましょう。

1. 「バレない」は幻想。後日逮捕に至る警察の捜査プロセス

駅や商業施設での盗撮事件が、どのようにして個人の特定と後日逮捕につながるのか。その典型的な捜査の流れは以下の通りです。

ステップ①:被害の覚知と被害届の提出

被害者が盗撮された事実に気づき(あるいは第三者から知らされ)、警察署に相談に訪れます。警察官は、被害者から詳細な状況(日時、場所、犯人の特徴など)を聞き取り、「被害届」または、より処罰意思の強い「告訴状」を受理します。これが捜査のスタートです。

ステップ②:証拠収集と被疑者の追跡

警察は、被害者の供述に基づき、客観的な証拠の収集に乗り出します。

  • 防犯カメラ映像の徹底的な解析
    犯行現場とされる場所のカメラはもちろん、被疑者がそこに至るまで、そしてそこから立ち去った後の足取りを追跡するため、駅構内、改札、周辺店舗、街頭など、考えられる限りの防犯カメラ映像を収集し、リレー方式で解析していきます。
  • ICカード(Suica、PASMO等)の利用履歴照会
    被疑者が改札を通過した時間が特定できれば、その時間帯に通過したICカードの履歴を鉄道会社に照会します。記名式のカードであれば、それだけで個人が特定できます。無記名式でも、チャージした際の防犯カメラ映像や、普段の利用パターンなどから、利用者を絞り込んでいきます。
  • 聞き込み捜査
    現場周辺で、被疑者や犯行の様子を目撃した人がいないか、聞き込みを行います。

ステップ③:被疑者の特定と逮捕状請求

これらの捜査によって、あなたの氏名や住所が特定されると、警察はそれまでの捜査で得た証拠をまとめ、裁判官に対して「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、逃亡または証拠隠滅のおそれがある」として、逮捕状を請求します。

逮捕状が発付されれば、警察はいつでもあなたを逮捕できる状態になります。そしてある日の早朝、複数の捜査員があなたの自宅を訪れ、後日逮捕(正式には「通常逮捕」)に至るのです。

2. 後日逮捕を回避するための策「自首」

「いつ逮捕されるか」という恐怖に怯えながら生活を続けることは、精神的にきわめて大きな苦痛です。この状況から脱し、逮捕という最悪の事態を回避するための最も有効な手段、それが「自首」です。

自首とは?

自首とは、まだ捜査機関に犯罪事実や犯人が誰であるかが発覚する前に、自ら警察署などに出頭し、自分の犯した罪を申告して、その処分を委ねることを言います。

自首がもたらすメリット

  • 逮捕回避の可能性
    自ら出頭するという行為は、「逃亡する意思がない」ことを示す強力な証拠となります。また、正直に罪を申告することで、「証拠隠滅のおそれも低い」と判断されやすくなります。その結果、警察が逮捕の必要なしと判断し、身柄を拘束しない「在宅事件」として捜査を進めてくれる可能性が生まれます。これが、自首の最大のメリットです。
  • 刑の減軽
    刑法第42条には、自首した者については「その刑を減軽することができる」と定められています。これは任意的な減軽ですが、裁判になった場合に、刑罰が軽くなる可能性があります。
  • 深い反省の情を示す
    自首は、検察官や裁判官に対して、あなたが自分の犯した罪と真摯に向き合い、深く反省しているという強いメッセージを伝えることができます。これは、後に不起訴(起訴猶予)処分や執行猶予付き判決を得る上で、有利な情状となります。

自首を成功させるためのポイント

自首は、ただ一人で警察署に行けばよいというものではありません。うまく事情を説明できず、かえって疑いを深められ、その場で逮捕されてしまうリスクもあります。

自首を成功させ、逮捕を回避するためには、事前に弁護士に相談し、同行してもらうことが重要です。

弁護士に相談するメリット

後日逮捕の不安を抱えている方にとって、弁護士は心強い味方となります。

  • 自首への同行と、警察との事前交渉
    弁護士は、あなたが一人で警察署に行く前に、まず担当の警察署に連絡を入れます。「被疑者が深く反省しており、自ら出頭して全てをお話ししたいと望んでいる。弁護士である私が責任をもって出頭させるので、逮捕の必要はないはずだ」と、事前に交渉を行います。これにより、逮捕のリスクを低減させることができます。
  • 取り調べへの適切な対応
    弁護士が自首に同行することで、取り調べの際に不当な圧力を受けたり、不利な供述調書を作成されたりするのを防ぎます。あなたに代わって、事件の状況を法的に整理して捜査官に説明することも可能です。
  • 被害者との早期示談への道筋
    自首をすることで、警察の捜査に協力する姿勢を示し、被害者の特定を早めることができます。被害者が特定され次第、弁護士は速やかに示談交渉に着手します。「自首」と「示談成立」の2つが揃えば、不起訴処分となる可能性は高まります。

まとめ

駅や商業施設での盗撮は、あなたが思う以上に簡単に発覚し、個人の特定につながります。「バレなかった」という一時的な安堵は、後日逮捕という、より深刻な事態の前触れに過ぎません。

その恐怖に怯え続けるのではなく、自らの過ちと向き合い、人生を再スタートさせるための、最も賢明で勇気ある一歩が「自首」です。そして、その一歩を成功に導き、逮捕という最悪の事態を回避するためには、刑事事件の専門家である弁護士のサポートが重要です。

もしあなたが、過去の盗撮行為によって後日逮捕の不安に苛まれているのなら、どうか手遅れになる前に、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。私たちが、あなたの勇気ある決断を、全力で支え、守ります。

その他の刑事事件コラムはこちら


初回無料|お問い合わせはお気軽に

keyboard_arrow_up

0298756812 LINEで予約 問い合わせ