はじめに
刑事事件で取り調べを受ける被疑者・被告人は、しばしば捜査機関の圧力にさらされ、違法な捜査手法によって権利を侵害されるリスクがあります。しかし、日本国憲法や刑事訴訟法は、取り調べの適正や無罪推定の原則、黙秘権や弁護人依頼権など、捜査対象者の人権を幅広く保障しており、捜査機関がそれを無視する行為は許されません。本稿では、刑事手続き上の人権保障がどのように構築され、どんな違法捜査が問題視されるのか、そしてそれに対抗するためにどう動くのかを解説します。取り調べで不安を感じたら、すぐに弁護士へ相談することをご検討ください。
Q&A
Q1:捜査機関が行う取り調べで「違法捜査」とは具体的にどんなものですか?
典型的には、暴行・脅迫による自白強要、長時間・深夜の取り調べ、弁護士との接見を妨げるなどが「違法捜査」の代表例です。また、家宅捜索で令状を示さずに私物を勝手に持ち去るなども違法とみなされます。
Q2:もし取り調べで暴言や脅迫を受けた場合、どうすればいいでしょう?
すぐに弁護士に知らせることが大切です。弁護士が捜査機関や裁判所に対して違法捜査を主張し、証拠能力の排除などを求める可能性があります。また、準抗告や監察請求などの手段で正当性を争うことも考えられます。
Q3:黙秘権を行使したら心証が悪くなると聞きましたが、本当ですか?
黙秘権は憲法で保障される正当な権利であり、行使しても本来は心証が不当に悪くなることはないとされています。ただ、実務上は「何か隠しているのでは」と捜査官や裁判官が感じるリスクはあります。弁護士と相談して、どの範囲を黙秘し、どこを話すか戦略的に決めることが重要です。
Q4:違法捜査で得られた証拠は裁判で使えないのですか?
違法収集証拠排除法則により、著しく違法な方法で収集された証拠は証拠能力を否定されます。たとえば、暴行・脅迫で得られた自白や、令状なしの強制捜索で得られた証拠などは裁判で排除される可能性があります。
Q5:違法捜査を受けた結果、虚偽の自白をしてしまいました。修正できるでしょうか?
取り調べの後でも、自白が嘘であったと判明すれば弁護士を通じて訂正の主張が可能です。捜査段階で弁護士が早期に介入すれば、調書への署名前に修正し、違法な誘導を記録させないようアドバイスできます。
Q6:違法捜査があったとき、捜査官に損害賠償を請求できますか?
状況次第で、国家賠償請求や刑事告訴を検討できます。ただし、立証は容易ではなく、損害と違法行為の因果関係を明確に示す必要があります。弁護士が違法捜査の証拠を確保し、裁判で争う形です。
Q7:起訴前に違法捜査を受け、無理やり自白してしまったら起訴後に弁護士はどう反論しますか?
起訴後の公判で「自白調書の証拠能力」を争う形となります。弁護士が違法捜査の詳細を法廷で主張し、裁判所に「違法収集証拠排除を適用すべき」と説得する流れです。認められれば自白調書が証拠から排除され、結果に大きな影響を与えます。
解説
刑事訴訟法と人権保障の原則
日本の刑事訴訟法は被疑者・被告人を無罪と推定する(無罪推定の原則)、黙秘権や弁護人依頼権の保障などのルールを定めています。違法捜査で得られた証拠は排除されるという違法収集証拠排除法則という原則もあります。
主な違法捜査例
- 暴力・脅迫による自白強要
叩く・怒鳴る・長時間にわたる威圧的な取り調べ - 令状なき家宅捜索
必要な令状を示さず住居を捜索し、物品を勝手に押収 - 弁護人接見の妨害
面会を許可しなかったり、警察官が立ち会おうとする - 任意同行の強制化
任意同行と称して実質的に拘束している
違法収集証拠排除の論理
裁判所は、捜査機関が著しく違法な手段で収集した証拠を「証拠能力なし」として扱います。これは「公正な裁判を維持するため」「違法捜査抑止のため」という目的で確立された法理です。暴行や脅迫により得た自白や、違法侵入で得た物証などが典型例とされます。
弁護士の実務活動
- 取り調べ手法の確認
依頼者が受けた行為をヒアリング - 違法性の指摘
具体的にどの法律条文に違反しているか示し、証拠として排除を要求 - 準抗告・申立
勾留理由開示などの場面で違法捜査をアピール - 無罪・不起訴主張
違法収集証拠を外せば立証不足となる可能性を示す
近年の取り調べ可視化
一部の重大事件では取り調べの録音・録画(可視化)が導入され、捜査官の違法行為を減らす効果が期待されます。しかし、対象事件が限定的であり、すべての刑事事件で可視化されるわけではありません。弁護士の関与がない事件では、依然として違法捜査を検証しづらいのが現状です。
弁護士に相談するメリット
違法捜査の早期発見・主張
取り調べでの威圧や接見妨害などがあった際、弁護士へ伝えることで、準抗告や警察幹部・検察上層部への抗議など、必要なアクションを早期に起こすことが可能です。長期間放置すると証拠が散逸し、立証が困難になります。
証拠排除による無罪・減刑
暴行・脅迫による自白や違法収集証拠が排除されれば、捜査官が立証できなくなって不起訴や無罪の可能性が高まる場合があります。たとえ有罪でも、違法捜査があった事実を情状で考慮し量刑を軽くする主張を弁護士が行えます。
接見交通権の確保
弁護士が接見交通権を盾に、不当に面会を拒否されないよう捜査機関と交渉。もし排除されるならすぐに申し立てをして、違法な妨害をストップさせられます。
取り調べでの黙秘権・供述戦略
弁護士が「ここまでは話してよい」「ここは黙秘した方がよい」と助言し、捜査の誘導に乗らないよう指導することで、違法捜査への抵抗力が増し、不必要な自白を防げます。
まとめ
刑事手続き上の人権保障と違法捜査の問題は、被疑者・被告人が憲法や刑事訴訟法で認められた権利を適切に行使するかどうかにかかっています。実際の捜査現場では、取り調べの誘導や過度な拘束時間、弁護士接見の妨害など違法行為が起きるリスクはゼロではありません。以下のポイントを念頭に、自身の権利を理解し、違法な扱いに直面したら早急に専門家へ助言を求めることが重要です。
- 黙秘権や弁護人依頼権を遠慮なく行使
心証を気にして無理に話す必要はない。 - 取り調べの無理強いには抗議
暴言や長時間拘束は違法の可能性。弁護士へ即報告。 - 接見交通権は不可侵
警察官が立ち会おうとする・時間を制限しようとするなら違法。 - 違法収集証拠は排除されうる
証拠能力を否定し、無罪や減刑を目指せる。 - 弁護士のサポートが不可欠
違法捜査を見抜き、適切な手段で排除を主張するには専門知識が要る。
もし取り調べでの強要や接見妨害など違法捜査の疑いを感じた場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所へ直ちにご連絡ください。長年の実務経験を活かし、違法捜査を排除法則で争い、依頼者の権利を最大限に擁護するための弁護活動を迅速に展開いたします。
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