後遺障害が残る事案における不起訴の可能性

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はじめに

交通事故で被害者に後遺障害が生じた場合、加害者は刑事責任を問われる可能性が高くなります。とりわけ重度の後遺障害が残った事案では、検察官も「厳しく処罰すべき」との姿勢で捜査に臨むことが一般的です。その一方で、示談や被害者側の事情によっては、不起訴となる場合もゼロではありません。なかには捜査を進める過程で事故態様に軽微な過失しか認められない場合や、被害者側が処罰を望まずに「寛大な措置」を求めている場合などでは、検察官が起訴を見送るケースもあります。

本稿では、後遺障害が残る事案であっても不起訴処分が得られる可能性や、そのために必要な要素、加害者が取るべき対応策などについて、弁護士法人長瀬総合法律事務所の視点から解説します。

Q&A

Q1:後遺障害が残るほどの事故でも、不起訴になることはあるのですか?

可能性は低いですが、絶対にないわけではありません。被害者側の過失が大きい場合や、加害者の過失が軽微である場合、または被害者が処罰を望まず十分な示談が成立している場合など、さまざまな事情を総合して検察官が起訴猶予と判断することがあります。

Q2:不起訴処分にはどのような種類がありますか?

大きく「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3パターンです。後遺障害事案であれば、事実があっても「情状によって起訴を見送る」起訴猶予が中心となる可能性があります。

Q3:起訴猶予を得るためのポイントは何でしょうか?

示談成立や被害者の処罰感情が弱いことが重要です。また、加害者の反省態度や再発防止策の具体性、前科の有無なども総合的に考慮されます。

Q4:検察官はどの段階で不起訴か起訴かを決めるのですか?

警察の捜査が終了し、書類送検(または身柄送致)を受けた後、検察官が最終的に「起訴・不起訴」を決定します。その際、被害者と加害者の示談状況や事故態様などを総合的に判断します。

Q5:示談金を高額にすれば不起訴になる確率は高まりますか?

示談金の多寡だけでなく、被害者が本当に納得して処罰を望まないという姿勢になっているかが重要です。もちろん、十分な補償を行うほど検察官が起訴を見送る判断をしやすい面はありますが、事故態様が悪質なら起訴猶予が難しいケースもあります。

Q6:後遺障害等級が高くても、被害者が「処罰を望まない」と言えば不起訴になりますか?

被害者の意向は非常に大きな要素ですが、飲酒運転やひき逃げなどの悪質性が強ければ、被害者が処罰を望まない場合でも検察官が起訴することがあります。社会的な影響や再犯防止の観点から「起訴が相当」と判断される場合があるためです。

Q7:不起訴になれば前科はつきませんか?

不起訴処分となれば刑事事件として立件されたまま終結し、前科はつきません。ただし、警察や検察に捜査記録は残る場合があります。

Q8:一度起訴されても、その後に取り下げられる可能性はありますか?

起訴後に公判が開かれる途中で「公訴取り消し」が行われるケースはごく稀です。通常は捜査段階で起訴・不起訴が確定し、公判に進めば原則として裁判での判断を待つ流れとなります。

Q9:不起訴を得るためにはどのような弁護活動が必要ですか?

不起訴を目指すには、被害者との示談交渉検察官への意見書提出反省文の用意などが考えられます。弁護士が捜査記録や医療記録を丁寧に確認し、加害者の過失が軽い点や被害者が処罰を強く望んでいない点を積極的にアピールすることが重要です。

Q10:仮に不起訴が得られなかった場合、どういった見通しになりますか?

起訴された場合、正式裁判で量刑が決定されます。示談や反省文があれば執行猶予判決が期待できる可能性がある一方、悪質性が高いと実刑となるリスクが残ります。弁護士とともに公判での弁護戦略を立案することが重要です。

解説

後遺障害事案における検察官の視点

後遺障害が残る事故は一般的に「重大な結果をもたらした」と見なされ、起訴されるリスクが高いです。検察官は、被害者の人生を大きく変えてしまった事実を重視し、社会的な処罰の必要性や再発防止の観点から厳正な姿勢を取ることが多いでしょう。しかし、以下のような事情が認められれば、起訴猶予(不起訴)を検討する余地があります。

  1. 被害者側にも大きな過失がある(飛び出しなどで事故を誘発)
  2. 加害者の前歴がなく、過失が極めて軽微
  3. 充分な示談金・謝罪で被害者が「処罰を望まない」と明言
  4. 加害者の反省度合いが著しく高く、再犯可能性が低い

示談がもたらす効果

後遺障害が残る事故であっても、示談成立により被害者が処罰感情を緩和していれば、検察官は「刑事処罰を強く望む必要がない」と判断しやすくなります。特に被害者が「加害者を厳しく処罰するつもりはない」という意向を文書化(嘆願書等)して検察官に提出すれば、起訴猶予の可能性は高まるといえます。

捜査段階と検察段階のポイント

  • 捜査段階
    警察による取り調べに対し、誠実かつ一貫性のある供述を行う。被害者のケアや示談交渉も並行して進める。
  • 検察段階
    弁護士が検察官と協議を重ね、意見書や示談書、被害者の処罰意思を示す書面などを提出。起訴猶予の判断を仰ぐ。

軽微な過失事例の具体例

たとえば、被害者が急に道路へ飛び出して回避困難な状況だった場合や、加害者が法定速度を守りつつも視界不良の場所で停車車両を避けきれなかった場合など、不可抗力に近い状況であれば、加害者の責任を限定的に捉えることが可能です。ただし、後遺障害が残った事実は重いので、確実に不起訴になるわけではありません。

不起訴が難しいケース

  • 飲酒運転・薬物使用
    悪質性が高く、被害者に後遺障害がある事案はほぼ確実に起訴。
  • ひき逃げ
    救護義務違反が重視され、不起訴の可能性は極めて低い。
  • 極端な速度超過や信号無視
    危険運転の適用が検討されるレベルだと、示談があっても起訴することが多い。

弁護士に相談するメリット

示談交渉で被害者の処罰感情を緩和

弁護士が適切な金額や支払い方法を提案し、謝罪文の作成や対面謝罪のサポートを行うことで、被害者が「処罰を強く望まない」との意向を示してくれる可能性が高まります。被害者との関係が悪化している場合でも、第三者として冷静に交渉を進められるのは大きな利点です。

検察官への意見書提出

弁護士は事故の態様や被害者の寛大な気持ち、加害者の反省度合いなどを整理し、検察官へ意見書として提出できます。捜査機関が見落としている事実や加害者の再犯防止策などを強調することで、不起訴処分を目指します。

捜査手続きのサポート

捜査段階での取り調べに同席できるケース(逮捕後の勾留中など)や、面談を通じて加害者が供述で不利にならないようアドバイスできるのも弁護士の役割です。供述内容の不整合や矛盾を抑え、捜査官の心証を悪くしない対応が求められます。

万一の起訴に備えた弁護活動

もし不起訴が得られなかった場合でも、弁護士が早期に動いていれば、公判での弁護戦略をスムーズに構築できます。示談内容や加害者の反省文などを適切に証拠化し、執行猶予や量刑軽減を目指す展開に移行できるわけです。

まとめ

後遺障害が残るほどの重大事故では、加害者として起訴されるリスクが高いのは事実です。しかし、事故態様や被害者側の意向によっては、不起訴処分(特に起訴猶予)の可能性がゼロではありません。以下のポイントを再確認しましょう。

  1. 被害者の処罰感情を和らげる示談が鍵
    十分な補償・謝罪で被害者が「処罰を強く望まない」と表明してくれるかが重要。
  2. 悪質性が低い場合に期待
    被害者自身の過失や、加害者の過失が軽微である事実などを整理・主張する。
  3. 飲酒運転やひき逃げは厳しい
    社会的悪質性が高いため、不起訴のハードルは非常に高い。
  4. 弁護士による意見書・示談交渉が有効
    捜査機関への働きかけや被害者の説得など、専門家のサポートで不起訴が得られる可能性が高まる。
  5. 不起訴が無理でも執行猶予等の弁護活動へ
    準備を怠らず、公判へ備えることが大切。

もし「後遺障害事案だけれども不起訴になり得るか?」と疑問をお持ちの場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。捜査や示談、検察官への対応など、具体的な戦略を練りながら不利な結果を回避するための最善の道を一緒に考えます。


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