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後遺障害等級の認定手続きと流れ
はじめに
交通事故で負ったケガが、治療を続けても完全に回復せずに何らかの障害が残ってしまった場合、その障害の程度を「後遺障害等級」として認定してもらう必要があります。後遺障害等級の認定は、民事上の損害賠償(示談交渉)において非常に重要な意味を持ちますが、実は刑事事件の面でも無視できないポイントです。後遺障害等級が高いほど、「被害者の受けたダメージは大きい」とみなされやすく、加害者に対する処罰感情が強まる傾向があるからです。
本稿では、後遺障害等級の認定手続きと流れについて、分かりやすくまとめます。後遺障害の認定がどのように行われるのか、どんな書類や資料が必要か、どんなスケジュールで進むのかなどを理解し、自分自身が加害者あるいは被疑者として手続きをする必要がある場合に備えましょう。ぜひ参考にしていただき、万が一の場合に備えてください。
Q&A
Q1:後遺障害等級はどのように決まるのですか?
基本的には、自賠責保険の「後遺障害等級表」に沿って、医師の診断書・検査結果・症状固定時の状態などを総合的に見て判断されます。最終的な決定は損害保険料率算出機構(調査事務所)が行いますが、被害者側の医療記録や医師の意見書が非常に重要な資料となります。
Q2:後遺障害等級の認定手続きの流れを簡単に教えてください。
- 症状固定(治療してもこれ以上回復が見込めない状態)
- 医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう
- 保険会社や損害保険料率算出機構に書類提出
- 調査事務所による審査・判断
- 後遺障害等級が決定
このプロセスを経て、該当する等級(1級〜14級)が確定します。
Q3:後遺障害等級が認定されるまでにどのくらい時間がかかるのでしょうか?
症状固定後、申請書類を提出してから2ヶ月程度で認定結果が出ることもありますが、事案の複雑さや必要資料の不足などにより、さらに時間がかかる場合もあります。また、異議申立てを行う場合には数ヶ月〜1年以上かかるケースもあります。
Q4:医師が作成する「後遺障害診断書」は重要ですか?
はい。後遺障害診断書は、後遺障害等級を認定するうえでの最重要資料といえます。医師がどのように症状を記載するかで、等級が変わる可能性があります。正確な検査結果や症状の詳細を、漏れなく記載してもらうことが大切です。
Q5:後遺障害等級が認定されると、刑事事件でも量刑が重くなるのですか?
後遺障害等級そのものが刑事裁判で必ずしも直接的に適用されるわけではありませんが、「被害者が重い障害を負った」という事実は裁判官や検察官の判断材料になります。結果的に量刑が重くなる可能性も否定できません。
Q6:もしも後遺障害等級の認定結果に納得いかなければ、どうすればいいですか?
「異議申立て」を行うことが可能です。新たな医証や専門医の意見書などを提出し、再度審査を求めることができます。ただし、そのためには医学的根拠や説得力のある資料が不可欠です。
Q7:後遺障害の程度が低いと、示談金はあまりもらえませんか?
後遺障害の等級が高いほど損害賠償額(慰謝料、逸失利益など)が大きくなるのは事実です。しかし、等級が低い(あるいは非該当)場合でも、怪我の期間や日常生活の支障度合いなどに応じて賠償金の交渉は可能です。
Q8:後遺障害の認定結果が出る前に示談を進めてもいいのでしょうか?
後遺障害等級が確定していない状態で示談をすると、適切な損害賠償額を算出できない恐れがあります。通常は、症状固定後に後遺障害等級が認定された後で示談交渉を本格化するのが一般的です。
Q9:刑事事件が進行中でも、後遺障害等級の手続きは並行して進められますか?
はい。刑事手続きとは別に、民事上の損害賠償(後遺障害の認定や示談)は並行して進められます。ただし、どのタイミングでどのように交渉を行うかは、弁護士と相談して戦略的に進めるとよいでしょう。
Q10:加害者側が後遺障害の認定を急かしたり、妨害したりすることはできますか?
原則としてできません。後遺障害等級の認定はあくまで被害者側(および保険会社)の手続きです。加害者側が認定手続きを妨げる行為は、むしろ印象を悪くするだけでなく、刑事裁判上も不利に働く可能性が高いでしょう。
解説
症状固定と後遺障害診断書
交通事故の被害者は、治療を続けてもこれ以上改善が見込めない状態になった時点で「症状固定」となり、その後の治療費は原則として損害賠償の対象外となります。そして症状固定後に医師が作成するのが「後遺障害診断書」です。ここで正確に症状を記載してもらうことが、後遺障害認定のカギとなります。
認定の流れと必要資料
後遺障害の認定では、主に下記のような資料を提出します。
- 後遺障害診断書(医師記入)
- レントゲン・MRI・CTなどの検査画像
- カルテや診療報酬明細書
- 担当医師の意見書(必要に応じて)
これらを保険会社経由、または被害者自身が直接損害保険料率算出機構に提出し、調査事務所による審査を受けるのが一般的です。
後遺障害等級と刑事事件の関係
後遺障害が残った場合、被害者とその家族の生活への影響は非常に大きくなります。刑事事件の量刑判断でも、被害者の受けた被害の深刻度合いが考慮されるため、重度の後遺障害が認定された場合、加害者の刑事責任が重くなる可能性があります。もっとも、あくまで「運転者の過失や態様」が主たる考慮要素である点は忘れてはなりません。
等級に不満がある場合の異議申立て
一度決定した後遺障害等級に対しては、被害者が「低すぎる」と感じるケースが多々あります。その場合、異議申立てをすることで再審査を請求できます。必要となるのは、新たな医療証拠や専門医の意見書など。医師との連携が非常に大切であり、弁護士がサポートすることで、より適切な主張が可能になります。
後遺障害等級が確定した後の流れ
後遺障害等級が確定すると、被害者はその等級に応じた示談金(慰謝料、逸失利益など)の増額を求めることができるようになります。加害者側としては、示談交渉が本格化する段階です。刑事事件でも被害者の損害が明確になり、検察や裁判所が量刑を判断する材料がそろうことになります。
弁護士に相談するメリット
医療記録の収集・専門医紹介
弁護士が後遺障害等級の問題を扱う場合、医療記録の収集や必要に応じたセカンドオピニオンの手配など、専門的なサポートを行うことが可能です。被害者との示談交渉を見据える上でも、適切な医療データが重要になります。
異議申立て手続きのサポート
異議申立ては医学的知識や手続きの知識が要求されるため、被害者が単独で行うのは難しいことがあります。弁護士が書面作成や必要資料の取得をサポートし、認定等級を引き上げるチャンスを最大限に活かすお手伝いをします。
刑事裁判との連動
後遺障害等級が上がるほど被害者の苦痛が深刻というアピールが強まり、加害者にとっては厳しい情況にもなり得ます。弁護士がいれば、示談交渉を通じて賠償を早期に行うことで、刑事処分の軽減を図るなど、戦略的な対応が可能です。
加害者側・被害者側双方の視点
ここまでの説明は主に被害者目線でしたが、加害者の立場であっても、被害者の後遺障害等級がどう認定されるかは示談金額や刑事事件の処分に直結します。弁護士は加害者側に立って、被害者請求の妥当性を検証し、必要があれば交渉で解決を図ります。
まとめ
後遺障害等級の認定手続きは、交通事故の民事・刑事両面に大きな影響を及ぼす重要なプロセスです。とくに死亡事故でなければ「後遺障害」によって被害者が長期にわたる苦痛を負うケースも多く、加害者としてもその責任を真摯に捉える必要があります。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 症状固定後に「後遺障害診断書」を作成してもらう
適切な検査や医療記録の整備が必要。 - 認定手続きは主に損害保険料率算出機構が担当
必要書類や画像資料を漏れなく提出する。 - 等級が高いほど示談金が高額になりやすく、刑事責任が重くなる可能性も
運転態様や示談状況など、多角的に検討すべき。 - 異議申立てには医学的根拠が必須
適切な医師の協力が重要で、弁護士のサポートが有効。 - 弁護士を活用して全体をスムーズに進める
医療証拠の収集、異議申立て、示談交渉、刑事手続きへの対応などを一括して依頼できる。
万が一、加害者として後遺障害問題に直面している場合は、早期に弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。後遺障害認定手続きをめぐるノウハウから示談交渉・刑事弁護に至るまで、幅広くサポートいたします。
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