刑事事件の弁護士費用と選び方 ― 逮捕されている場合と在宅事件の場合で弁護士費用はどう違う?

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はじめに

「家族が逮捕された。すぐに弁護士に依頼したいが、費用はどのくらいかかるのか」「在宅事件として捜査を受けているが、弁護士費用は逮捕されている場合と同じなのか」といったご相談は、刑事事件の弁護を検討される方から非常に多く寄せられます。

刑事事件における弁護士費用は、事件の態様(身柄拘束の有無)によって大きく異なります。逮捕・勾留されている身柄事件では、弁護士が迅速かつ頻繁に接見を行い、勾留阻止や早期釈放のための活動が必要となるため、在宅事件と比べて費用が高くなる傾向にあります。本稿では、身柄事件と在宅事件それぞれの弁護士費用の違い、費用が変動する要因、事件類型別の費用目安、そして弁護士選びのポイントについて詳しく解説します。

Q&A

Q1. 身柄事件と在宅事件では、弁護士費用にどの程度の差がありますか?

A. 一般的に、身柄事件(逮捕・勾留されている場合)の弁護士費用は、在宅事件と比べて数十万円程度高くなる傾向にあります。身柄事件では、弁護士が留置施設への接見を複数回行う必要があること、逮捕後72時間以内の勾留阻止活動や勾留延長阻止、保釈請求など、時間的制約の厳しい弁護活動が求められることがその主な理由です。在宅事件では、被疑者・被告人が日常生活を送りながら捜査・裁判に対応するため、弁護活動の緊急性が比較的低く、費用も抑えられる傾向にあります。

Q2. 弁護士費用にはどのような項目が含まれますか?

A. 刑事事件の弁護士費用は、主に「着手金」「成功報酬」「接見日当」「実費」の4つの項目で構成されます。着手金は事件の依頼時に発生する費用であり、成功報酬は不起訴処分、執行猶予判決、減刑などの成果に応じて発生する費用です。接見日当は弁護士が留置施設や拘置所に接見に赴く際の費用であり、身柄事件特有の費目です。実費には、交通費、書類取得費用、鑑定費用などが含まれます。

Q3. 途中で身柄事件から在宅事件に切り替わった場合、費用はどうなりますか?

A. 当初逮捕・勾留されていたものの、勾留満期前に釈放されて在宅捜査に移行した場合や、保釈が認められた場合でも、既に発生した着手金や接見日当が減額されることは通常ありません。ただし、在宅移行後の追加の弁護活動については、在宅事件としての費用体系が適用されるケースもあります。弁護士との委任契約の内容によって取扱いが異なるため、契約時に確認しておくことが重要です。

解説

1. 身柄事件と在宅事件の定義

刑事事件は、被疑者・被告人の身柄拘束の有無によって「身柄事件」と「在宅事件」に大別されます。

(1)身柄事件

身柄事件とは、被疑者が逮捕され、さらに勾留(最大20日間)されている状態で捜査・裁判手続が進行する事件をいいます。逮捕後48時間以内に検察官に送致され、検察官は送致を受けてから24時間以内に勾留請求を行うかどうかを判断します。勾留が認められると、原則10日間(延長を含め最大20日間)の身柄拘束が続きます。起訴後も保釈が認められない限り、裁判終了まで拘置所等に収容されます。身柄事件では、弁護士の迅速な対応が被疑者の権利を守る上で重要です。

(2)在宅事件

在宅事件とは、被疑者が逮捕・勾留されることなく、あるいは一度逮捕されたものの釈放されて、日常生活を送りながら捜査・裁判手続が進行する事件をいいます。警察からの出頭要請や検察官からの呼び出しに応じて取調べを受けますが、それ以外の時間は自由に生活できます。在宅事件は、罪証隠滅や逃亡のおそれが低いと判断された場合に選択されますが、在宅だからといって軽い処分になるとは限らず、起訴されて有罪判決が下されることもあります。

2. 身柄事件の弁護士費用が高くなる理由

身柄事件の弁護士費用が在宅事件よりも高くなる主な理由は、以下のとおりです。

  • 接見の回数と緊急性:逮捕直後は、弁護士が速やかに留置施設に赴いて被疑者と接見し、取調べへの対応方針を協議する必要があります。勾留期間中も定期的に接見を行い、被疑者の精神的サポートや防御方針の確認を行います。接見1回あたりの日当は3万円から5万円程度が相場であり、身柄事件では合計5回から10回以上の接見が必要となることも珍しくありません。
  • 勾留阻止・準抗告活動:検察官の勾留請求に対して、弁護士は裁判官に対する意見書の提出や勾留決定に対する準抗告を行い、早期釈放を目指します。これらの活動は時間的な制約が極めて厳しく、逮捕後72時間以内という短時間で書面の作成・提出を完了しなければなりません。この迅速な対応が弁護士の負担を大きくし、費用に反映されます。
  • 保釈請求:起訴後に身柄拘束が続く場合、弁護士は保釈請求を行います。保釈請求書の作成、保釈保証金の準備支援、裁判所との折衝など、一連の手続きに相当の労力を要します。保釈請求が一度で認められず、再度の請求が必要となる場合もあります。保釈請求に関する費用は、着手金に含まれる場合と別途発生する場合とがあります。
  • 被害者対応の緊急性:身柄事件では、勾留期間中(最大20日間)に被害者との示談を成立させることが、不起訴処分を獲得するための重要な戦略となります。限られた時間内に被害者への連絡、示談交渉、示談書の作成、示談金の受渡しを完了させる必要があるため、弁護士の業務量は在宅事件と比較して著しく増大します。

3. 在宅事件の費用の特徴

在宅事件の弁護士費用は、身柄事件と比較して以下のような特徴があります。

  • 接見日当が不要:在宅事件では被疑者・被告人が身柄拘束されていないため、留置施設等への接見は原則として不要です。弁護士との打合せは事務所や電話・オンラインで行えるため、接見日当という費目自体が発生しません。この点が身柄事件との最も大きな費用差の要因となります。
  • 着手金の水準:在宅事件の着手金は、身柄事件と比べて低く設定されていることが一般的です。弁護活動の緊急性が比較的低く、弁護士の時間的拘束も少ないためです。ただし、事件の複雑さや罪名によっては、在宅事件であっても高額の着手金が設定されることがあります。
  • 示談交渉の時間的余裕:在宅事件では、勾留期間の制約がないため、被害者との示談交渉に比較的余裕をもって取り組むことができます。ただし、在宅事件であっても検察官の処分決定前に示談を成立させることが望ましいため、時間的余裕があるとはいえ迅速な対応が求められることに変わりはありません。
  • 捜査期間の長期化リスク:在宅事件は、身柄事件と異なり勾留期間の制限がないため、捜査が長期化する傾向にあります。捜査が数か月から1年以上にわたることもあり、その間の弁護士への相談や取調べへの同行などの追加費用が発生する可能性があります。長期化に備えた費用の見通しを事前に確認しておくことが重要です。

4. 身柄事件から在宅事件に切り替わった場合の費用

実務上、当初は逮捕・勾留されていた身柄事件が、途中で在宅事件に切り替わるケースは少なくありません。具体的には、勾留請求が却下された場合、勾留延長が認められなかった場合、保釈が許可された場合、あるいは処分保留で釈放された場合などです。

この場合の費用の取扱いについては、以下の点に留意が必要です。

  • 既発生費用の扱い:身柄事件として受任した際の着手金や、それまでに行った接見の日当については、在宅移行後も返還されないのが通常です。これらは既に提供された弁護活動の対価であるためです。
  • 在宅移行後の追加費用:在宅移行後の弁護活動(検察官との折衝、被害者との示談交渉、公判準備等)については、当初の着手金に含まれている場合と、追加費用が発生する場合とがあります。委任契約書の記載内容により異なります。
  • 成功報酬の算定:成功報酬は、最終的な結果(不起訴、執行猶予、減刑等)に基づいて算定されます。身柄事件として受任し、早期釈放に成功した場合、釈放自体を成功報酬の対象とする事務所もあります。どのような結果が報酬の対象となるかは、委任契約時に明確にしておくべきです。

5. 追起訴・余罪がある場合の追加費用

刑事事件では、当初の被疑事実に加えて、余罪(追加の犯罪事実)が発覚し、追起訴(追加の起訴)が行われることがあります。追起訴・余罪がある場合の弁護士費用については、以下の点を理解しておく必要があります。

  • 追加着手金の発生:余罪について追加で弁護活動を行う場合、追加の着手金が発生するのが一般的です。
  • 再逮捕・再勾留の場合:余罪について再逮捕・再勾留がなされた場合、追加の接見日当や勾留阻止活動の費用が発生します。一度釈放された後に再逮捕されるケースでは、改めて身柄事件としての弁護活動が必要となるため、相当額の追加費用を見込む必要があります。
  • 示談の追加対応:余罪に被害者が存在する場合、新たな被害者との示談交渉が必要になります。被害者の数が増えるほど示談交渉の工数も増大し、費用に反映されます。
  • 公判の長期化:追起訴により公判手続が長期化し、出廷回数が増加する場合、出廷日当や公判準備の費用が追加で発生します。裁判が長期化すれば、それに伴い弁護士費用の総額も増加することになります。

6. 事件類型別の費用目安

刑事事件の弁護士費用は、事件の類型によっても大きく異なります。以下に主要な事件類型ごとの費用目安を示しますが、これはあくまで一般的な参考値であり、事案の難易度や事務所の方針により変動します。

(1)痴漢・盗撮等の迷惑行為防止条例違反

比較的軽微な事件として分類されることが多く、着手金は30万円から50万円程度、成功報酬は30万円から50万円程度が目安です。身柄事件の場合は、接見日当が加算され、総額で80万円から150万円程度になることがあります。被害者との示談成立が不起訴の鍵となるため、示談交渉費用が重要な要素となります。

(2)窃盗・詐欺等の財産犯

事件の規模(被害金額)や態様(単独犯か組織的犯行か)によって費用が大きく変動します。着手金は40万円から80万円程度、成功報酬は40万円から80万円程度が目安です。被害金額が高額な場合や、共犯者が多数いる場合には、弁護活動の複雑さに応じて費用が増加します。余罪が多い場合には追加着手金が発生するため、総額が200万円を超えることもあります。

(3)傷害・暴行等の粗暴犯

着手金は40万円から70万円程度、成功報酬は40万円から70万円程度が目安です。被害者の怪我の程度や加害行為の態様により費用が変動します。被害者との示談交渉が弁護活動の中心となることが多く、示談交渉の難易度によって費用が上下します。重傷事案や凶器を使用した事案では費用が高額になる傾向があります。

(4)薬物犯罪(覚醒剤、大麻等)

薬物犯罪は被害者が存在しないため示談による不起訴を目指すことが困難であり、弁護方針として違法収集証拠の排除や情状弁護が中心となります。着手金は50万円から100万円程度、成功報酬は50万円から100万円程度が目安です。裁判員裁判の対象となる営利目的の密輸入等の重大事案では、さらに高額の費用が発生します。

(5)交通事故(過失運転致死傷等)

交通事故の刑事弁護は、事故態様の軽重や被害の程度により費用が大きく異なります。着手金は40万円から80万円程度、成功報酬は30万円から70万円程度が目安です。飲酒運転やひき逃げなど悪質な態様の場合は費用が高額になります。被害者への賠償が民事上の損害賠償保険で対応される場合もありますが、刑事弁護としての示談交渉は別途必要となることがあります。

7. 弁護士選びのポイント

刑事事件の弁護士を選ぶ際には、費用面に加えて以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 刑事事件の実績と経験:刑事弁護は、民事事件とは異なる専門性が求められます。逮捕後の限られた時間内に適切な弁護活動を行うためには、刑事事件の経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。刑事弁護の経験件数、取扱い事件の類型、不起訴率などを確認することをお勧めします。
  • 初動対応の迅速さ:身柄事件では、逮捕後できる限り早く弁護士が接見に駆けつけることが重要です。深夜や休日でも対応可能か、接見までのスピード感はどの程度かを確認してください。初動の遅れが取調べ対応に悪影響を及ぼすことがあります。
  • 費用体系の透明性:弁護士費用の内訳、支払時期、追加費用が発生する条件などが明確に説明されているかを確認してください。見積書の提示を求め、想定外の費用が発生しないよう事前に十分な説明を受けることが重要です。分割払いやクレジットカード払いに対応している事務所もあります。
  • コミュニケーションの質:刑事事件は、ご本人やご家族にとって精神的な負担が非常に大きい出来事です。弁護方針についてわかりやすく説明してくれるか、質問に丁寧に答えてくれるか、連絡が取りやすいかなど、コミュニケーションの質も弁護士選びの重要な判断要素です。
  • 総合的なサポート体制:刑事事件は、民事上の損害賠償問題や、職場・学校への対応など、刑事手続以外の問題にも波及することがあります。刑事弁護に加えて、関連する民事問題にもワンストップで対応できる体制を有しているかも確認すべきポイントです。

弁護士に相談するメリット

刑事事件において弁護士に早期に相談・依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  • 早期釈放の実現:逮捕・勾留されている場合、弁護士が勾留阻止活動や保釈請求を迅速に行うことで、早期の身柄解放を目指すことができます。身柄拘束の長期化は、仕事や家庭生活に深刻な影響を及ぼすため、早期釈放は非常に重要です。
  • 取調べへの適切な対応:弁護士が接見を通じて取調べ対応のアドバイスを行うことで、不利な供述調書の作成を防止し、被疑者の権利を適切に守ることができます。黙秘権の行使や調書への署名拒否など、具体的な対応方針を弁護士と相談できます。
  • 被害者との示談交渉:被害者との示談交渉は、不起訴処分の獲得や量刑の軽減に直結する極めて重要な弁護活動です。弁護士が間に入ることで、被害者との円滑な交渉が可能になります。
  • 不起訴処分の獲得:弁護士が検察官に対して、示談成立の事実や被疑者に有利な情状を適切に主張することで、不起訴処分(前科がつかない結果)を獲得できる可能性が高まります。
  • 精神的な支え:逮捕・勾留された方やそのご家族にとって、法律の専門家である弁護士が味方として寄り添い、今後の見通しを示してくれることは、大きな精神的支えとなります。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、茨城県内4拠点(牛久本部・日立支所・水戸支所・守谷支所)及び東京支所で刑事事件に関するご相談を承っております。逮捕・勾留されている身柄事件については、ご連絡をいただいてから迅速に接見に赴く体制を整えております。刑事事件でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

本稿では、刑事事件における弁護士費用について、身柄事件と在宅事件の違いを中心に解説しました。要点を整理すると以下のとおりです。

  • 身柄事件(逮捕・勾留あり)は、接見の必要性や弁護活動の緊急性から、在宅事件と比べて弁護士費用が高くなる傾向がある
  • 弁護士費用は「着手金」「成功報酬」「接見日当」「実費」の4項目で構成され、身柄事件では特に接見日当の負担が大きい
  • 在宅事件は接見日当が不要で着手金も低めだが、捜査の長期化による追加費用に注意が必要である
  • 身柄事件から在宅事件への切り替わり時の費用の取扱いは、委任契約の内容により異なる
  • 追起訴・余罪がある場合は追加着手金や示談交渉費用が発生し、総額が大幅に増加する可能性がある
  • 弁護士選びでは、費用の透明性に加え、刑事事件の実績、初動対応の迅速さ、コミュニケーションの質が重要である

刑事事件の弁護士費用は、事件の態様や進行状況によって大きく変動します。「逮捕されたが弁護士費用がどのくらいかかるか知りたい」「在宅事件で弁護士に依頼すべきか迷っている」「追起訴の可能性があり費用の見通しを知りたい」など、刑事事件の弁護士費用に関するお悩みがございましたら、弁護士法人長瀬総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

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