後遺障害認定における弁護士の役割とサポート

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はじめに

交通事故で負ったケガが治りきらず、後遺障害が残ってしまった場合、その程度(等級)によって被害者が受け取る損害賠償額は大きく変わります。一方、加害者としても、被害者の後遺障害等級を正確に把握しておかないと、示談交渉や刑事手続きでどの程度の賠償を支払うリスクがあるのか見通しが立ちにくく、トラブルを拡大させる原因となるでしょう。ここで重要なのが、弁護士による後遺障害認定サポートです。

本稿では、後遺障害等級が争点となり得る事案で、弁護士がどのような役割を果たし、具体的にどのようなサポートを提供できるのかを解説します。加害者・被害者双方にとって、後遺障害認定を正しく進めることは、円滑な問題解決への第一歩です。

Q&A

Q1:弁護士は後遺障害等級の認定にどのように関わるのですか?

被害者側のケースでは、症状固定のタイミングや医師への意見書作成依頼などをサポートして、妥当な等級認定を得るための活動を行います。加害者側のケースでは、被害者の主張する等級が本当に正当か検証し、過大な請求を防ぐための証拠収集や専門家との連携を図ります。

Q2:加害者側が積極的に後遺障害認定に関わるメリットはあるのですか?

はい。被害者が提出した資料に不備や疑問点がある場合、独自に意見書を用意したり、医療記録の詳細を検討したりすることで、後遺障害等級が過大に評価されるのを防ぐことができます。結果的に妥当な範囲の賠償金を算定でき、示談交渉や刑事手続きの見通しを立てやすくなります。

Q3:後遺障害認定の異議申立ては、弁護士に依頼すべきでしょうか?

異議申立ては医学的専門知識と手続き面のノウハウが必要で、被害者単独で行うのは困難です。弁護士が医師や医学アドバイザーと連携し、新たな検査結果や意見書を用意して申立てることで、等級アップの可能性が高まります。

Q4:後遺障害認定において、弁護士が医師に介入することはできますか?

弁護士は治療の内容に直接介入するわけではありませんが、後遺障害診断書の記載内容や検査結果の収集手順などについて医師と連携し、必要情報を十分に盛り込んでもらうよう助言や依頼を行います。ただし、あくまでも医療行為の主体は医師ですので、法的な視点からのサポートが主となります。

Q5:加害者が「後遺障害を大げさに偽っているのでは」と疑う場合、どうすればいいですか?

弁護士を通じて、被害者の治療状況や医療記録の開示を求め、必要があれば独自の専門医にセカンドオピニオンを依頼するなどの対策をとることができます。無根拠に「偽っている」と主張することはリスクがあるため、専門家の客観的評価が欠かせません。

Q6:刑事手続きでも後遺障害認定が使われますか?

被害者が後遺障害を負った事実は、刑事裁判での量刑判断に影響します。検察官や裁判所は被害者の苦痛・生活への支障の大きさを考慮し、加害者の刑事責任を重く評価する傾向があります。弁護士が被害者の症状や障害の程度を正確に把握しておくことは、情状弁護を行う上でも重要です。

Q7:任意保険会社は、後遺障害認定の手続きをやってくれるのでは?

保険会社が「事前認定」や「被害者請求」の手続き上の代行をしてくれる場合もありますが、必ずしも被害者に有利になるとは限りません。複雑な医療知識が絡む場合や、真に適正な等級認定を目指す場合は弁護士のサポートが安心です。

Q8:後遺障害等級の認定で不利な結果が出ても、一度示談した後で再度争うことはできますか?

示談書に「後遺障害に関する一切の請求を放棄する」といった条項が含まれていれば、原則として再度争うのは難しくなります。よほどの例外的事情(詐欺や錯誤など)がない限り、示談後に蒸し返すことは困難です。示談前に慎重な検討が必要です。

Q9:後遺障害認定を巡って加害者・被害者双方がもめた場合、どうやって解決するのでしょうか?

多くは示談交渉や保険会社との話し合いで妥協点を探ります。それでも折り合いがつかなければ民事裁判を提起し、裁判所が最終的に判断を下す形になります。

Q10:後遺障害認定に強い弁護士を選ぶ基準は何ですか?

交通事故案件の豊富な実績や、医学的知識を持つ弁護士または顧問医師との提携がある事務所を選ぶと安心でしょう。依頼前に相談実績や方針をしっかり確認することが大切です。

解説

後遺障害認定手続きの流れと弁護士の関与

  1. 症状固定
    医師が「これ以上治療を続けても症状は改善しない」と判断する時期。
  2. 後遺障害診断書の作成
    医師が被害者の症状を詳細に記載。
  3. 損害保険料率算出機構(調査事務所)への提出
    事前認定か被害者請求のいずれか。
  4. 認定結果の通知
    等級1〜14級、非該当など。
  5. 異議申立ての検討(認定結果に不服がある場合)。

弁護士が症状固定のタイミングに助言したり、医師に診断書の記載内容を丁寧に依頼したりすることで、誤解や不備を減らし、適正な等級認定を得やすくなります。

弁護士が果たす主な役割

  • 医療記録の取得・検証
    被害者が開示を拒む場合や資料が散逸している場合でも、弁護士を介して整合性をチェックする。
  • 異議申立ての書面作成
    追加の画像検査や専門医の意見書を用意し、新たな視点で後遺障害を再評価してもらう。
  • 保険会社対応
    保険会社が低い等級を提示してきた場合に対し、交渉や訴訟も見据えた対策を講じる。
  • 示談交渉
    最終的な賠償額に直結するため、後遺障害等級を前提とした適切な金額を算定し、相手方と折衝する。

加害者側弁護士の視点

被害者が高い等級を主張してきた場合、それが本当に適正かどうかを検証し、場合によっては「その障害は事故に起因しない」とか「等級の根拠が不十分」と反論する余地があります。ただし、被害者の主張を真っ向から否定するのはリスクも伴うため、医学的根拠を伴わない限り、感情的対立を招きやすい点には注意が必要です。

刑事手続きへの影響

後遺障害が重い場合、検察官や裁判官は加害者の刑事責任を重く見る傾向が強まります。弁護士はそのような状況を踏まえて、「示談で十分な補償を行っている」「加害者が再発防止に努めている」などの情状をアピールし、執行猶予や量刑軽減を目指すことが重要となります。

スムーズな解決のためのポイント

  • 早期に弁護士へ相談
    後遺障害手続きは時間がかかるため、事故直後から準備を進めるほど良い。
  • 医療と法の橋渡し
    医師の言葉を法的文書へ落とし込み、検査結果を示談交渉や裁判で活かす。
  • 客観的証拠の重視
    画像検査や専門家の意見書など、客観的エビデンスを揃えることで説得力を高める。

弁護士に相談するメリット

法律と医学の両面をカバー

弁護士は単に法的手続きを進めるだけでなく、医療記録の読み解きや専門医との連携を通じて、後遺障害認定をめぐる問題を多角的に分析できます。特に後遺障害の因果関係が争われる際、専門家の意見を法的論点と結び付ける役割が大きいです。

異議申立ての成功率向上

一度認定結果が出ても、追加資料や専門医の所見を揃えた上で異議申立てを行えば、等級が上がる可能性があります。弁護士は書面作成のプロであり、「どの論点が評価されなかったのか」「どう追加の証拠を示せばよいのか」を的確に見極めるため、成功率が高まります。

示談交渉の円滑化

後遺障害の評価は示談金の算定に直結するため、保険会社との折衝で意見が対立しやすい部分です。弁護士が適切な資料をもとに交渉することで、被害者側・加害者側いずれの場合も、納得感のある合意を得やすくなります。

刑事事件の情状弁護

後遺障害が重いほど、加害者の量刑が重くなる傾向があります。弁護士が後遺障害の内容や示談状況、加害者の反省文などを整理し、裁判所に訴えることで、執行猶予を得たり刑を軽減したりする可能性を引き上げられます。

まとめ

後遺障害認定は、被害者・加害者双方にとって極めて重要な問題であり、その正否が損害賠償額や刑事責任に大きな影響を及ぼします。以下のポイントを押さえて、弁護士のサポートを有効に活用することがトラブル回避の近道です。

  1. 症状固定から認定手続きまでの流れを把握
    医師の診断書や損害保険料率算出機構への提出など、正確なプロセスを踏む。
  2. 異議申立てで等級が変わる可能性
    不満があれば、追加検査や専門家の意見書を用意して再審査を求める。
  3. 加害者・被害者双方にとって弁護士が要
    適正な認定のために必要な証拠や書類を収集し、保険会社や裁判所を説得する。
  4. 刑事手続きにも影響
    後遺障害が重いほど量刑が厳しくなりやすいが、示談や反省文で情状を訴えることが可能。
  5. 早期相談で不安を減らす
    事故後できるだけ早く弁護士に相談し、後遺障害認定をめぐる手続きに備える。

万が一、後遺障害認定をめぐるトラブルや不安を抱えている場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。医療と法の接点で培った知識・経験をもとに、示談交渉から刑事手続きまでサポートを提供いたします。


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