保釈・釈放の違いとポイント

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はじめに

刑事事件で逮捕された場合、被疑者やその家族にとって最も切実な問題の一つは、早期に身柄を解放することです。逮捕された後に行われる「保釈」と「釈放」の手続きは、その解決に向けた大きなポイントとなります。しかし、保釈と釈放には重要な違いがあり、それぞれ異なる手続きが必要です。本記事では、保釈と釈放の違いと、それぞれの手続きにおける重要なポイントについて解説します。

Q&A

Q: 家族が逮捕されてしまいました。早期に解放するために何をすればよいのでしょうか?

A: 逮捕後に身柄を解放するためには、「釈放」または「保釈」の手続きが必要です。釈放は、主に逮捕直後に行われる手続きであり、警察や検察が被疑者を解放することを指します。一方、保釈は起訴後に保証金を支払って一時的に身柄を解放する手続きです。どちらの手続きも迅速に進めることが重要であり、特に釈放は逮捕後の短期間で決定されるため、すぐに弁護士に相談することが大切です。

保釈とは

保釈とは、起訴された被告人が、一定の保証金を支払うことで勾留から解放され、裁判が終了するまでの期間を自由に過ごすことができる制度です。保釈が認められる場合、裁判所が保釈金の額を設定し、被告人がその金額を納付することで、勾留が一時的に解除されます【刑事訴訟法第89条】。

保釈の目的

保釈の目的は、被告人の裁判における防御権の確保と、裁判が適正かつ迅速に進行することを保障することにあります。被告人が身柄を拘束されたままでは、十分な準備ができず、公平な裁判が行われにくい状況が生じる可能性があります。そのため、保釈によって一時的に解放されることで、被告人が裁判に向けて十分な準備を行うことができます。

釈放とは

釈放は、被疑者が逮捕された後、警察や検察の判断で身柄が解放されることを指します。釈放は逮捕直後に行われることが多く、警察や検察が被疑者の身柄を拘束する必要がないと判断した場合に実施されます【刑事訴訟法第203条、第205条】。

釈放の目的

釈放の目的は、不必要な拘束を避け、被疑者の人権を守ることにあります。法律では、被疑者の勾留は厳格な要件の下でのみ認められており、これに違反するような不当な拘束は避けなければなりません。逮捕後、捜査の進展や新たな証拠により、留置の必要がないと判断された場合は、速やかに釈放されることが法律で義務付けられています。

保釈と釈放の違い

保釈と釈放には明確な違いがあります。

タイミングの違い

  • 釈放は、主に逮捕直後に行われる手続きで、被疑者が警察や検察によって解放されることを指します。釈放は、逮捕されたが起訴されていない段階で行われます。
  • 保釈は、被疑者が起訴された後に行われる手続きであり、裁判所が設定した保証金を納付することで、被告人が勾留から解放されることを指します。

金銭的な要件の違い

  • 釈放は無料で行われ、被疑者やその家族に金銭的な負担はありません(略式罰金による釈放を除きます)。
  • 保釈には、保釈金の支払いが必要です。この保釈金は事件の内容や被告人の経済状況に応じて決定され、通常は150万円から300万円程度が相場です【刑事訴訟法第93条】。

    対象者の違い

    • 釈放は、逮捕された全ての被疑者に適用される可能性があります。
    • 保釈は、起訴された被告人にのみ適用される手続きです。

    保釈の要件と手続のポイント

    保釈は、すべての被告人が申請できるわけではありません。保釈が認められるには、法律で定められた条件を満たす必要があります。以下は、保釈が認められるための主な要件です。

    権利保釈

    刑事訴訟法第89条は、原則として被告人の保釈を認めていますが、次のような事情がある場合には保釈が認められにくい傾向があります。

    1. 死刑または無期懲役、もしくは懲役1年以上の重罪に該当する場合
      これらの重罪に該当する場合は、逃亡や証拠隠滅のリスクが高いとされ、保釈が認められにくくなります。
    2. 被告人に前科がある場合
      特に、過去に重罪で有罪判決を受けたことがある場合は、保釈が認められにくくなります。
    3. 被告人が常習犯である場合
      被告人が常習的に犯罪を犯している場合も、保釈が認められないことがあります。
    4. 証拠隠滅の恐れがある場合
      被告人が証拠を隠滅する恐れがあると判断された場合も、保釈は認められません。
    5. 被害者への危害の恐れがある場合
      被害者や関係者に危害を加える恐れがある場合も、保釈が制限されます。
    6. 被告人の身元が不明な場合
      住所不定や身元が明らかでない場合も、保釈が認められにくくなります。

    裁量保釈

    上記の条件に該当する場合でも、裁判所が保釈を適当と判断した場合には、保釈が認められることがあります。これを「裁量保釈」といい、被告人の健康状態や経済状況、社会的な背景などが考慮されます【刑事訴訟法第90条】。

    保釈金の設定

    保釈が認められた場合、裁判所は保釈金を設定します。保釈金は、事件の性質や被告人の資産状況に応じて決定されます。通常の保釈金は150万円から300万円程度です。

    保釈金の返還

    保釈金は、刑事事件が終了すると全額返還されます。無罪判決の場合も、有罪判決の場合も返還されますが、逃亡や証拠隠滅などの違反行為があった場合は、没収されることがあります【刑事訴訟法第93条】。

    保釈金の立て替え制度

    保釈金を準備することが難しい場合、日本保釈支援協会の立て替え払い制度を利用することができます。この制度を利用する際には、弁護士が手続きをサポートしますが、手数料が発生します。

    釈放のポイント

    釈放の手続きには、以下の4つの方法があります。

    1. 検察官に送検される前に釈放
      逮捕後、検察官に身柄が送られる前に、留置の必要がないと判断された場合に釈放されます。この時点で釈放されることができれば、勾留を避けることができます。
    2. 勾留阻止による釈放
      検察官が勾留請求を行わない、または裁判官が勾留請求を却下した場合、被疑者は釈放されます。この場合、被疑者は在宅での捜査に切り替わり、自宅から警察署や検察庁に出頭して取り調べを受けることになります。
    3. 不起訴による釈放
      捜査の結果、起訴されずに不起訴処分となった場合、被疑者は釈放されます。この場合、前科がつくこともなく、日常生活に復帰することが可能です。
    4. 略式手続きによる釈放
      検察官が簡易な手続きによって罰金を科す略式請求を行った場合、罰金を支払うことで釈放されます。この場合、被疑者は前科がつきますが、速やかに日常生活に戻ることができます。

    弁護士に相談するメリット

    保釈や釈放の手続きを適切に進めるためには、経験豊富な弁護士のサポートが不可欠です。特に逮捕後の重要な48時間以内に迅速に対応することで、被疑者の早期釈放を目指すことが可能です。また、保釈が認められるための要件や手続きを正確に把握し、最適な対応を行うことが、裁判における有利な結果を引き出すための鍵となります。

    弁護士法人長瀬総合法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が、釈放・保釈の問題に対して迅速かつ丁寧に対応し、最善の結果を目指します。逮捕や勾留に関する不安がある場合は、まずは当事務所までご相談ください。

    まとめ

    保釈と釈放は、刑事事件における重要な手続きであり、被疑者やその家族にとって身柄の解放は非常に重要な問題です。それぞれの手続きには異なる要件と手順が存在し、迅速かつ適切な対応が求められます。信頼できる弁護士とともに、早期に対応することで、身柄の解放を目指しましょう。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、皆様の力強い支えとなり、最良の結果を目指して全力でサポートいたします。


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