はじめに
少年法で保護処分を受けた場合、成人の前科とは異なるため、一般的には「前科がつかない」と言われます。しかし、少年院送致や保護観察といった保護処分の事実は、少年事件の記録として一定期間保管され、成人後の捜査や裁判での量刑判断に影響を及ぼす場合があります。つまり、少年の時に犯した非行が成人後に全く無視されるわけではありません。
本稿では、少年事件の記録がどのように管理され、どのような場面で成人後に考慮される可能性があるのか、解説します。少年院送致などの保護処分は前科ではありませんが、再度の非行や犯罪を犯せば、過去の記録が参照され重い処分や量刑につながることを認識しておくべきです。
Q&A
Q1:少年院送致や保護観察は前科にならないと聞きますが、本当ですか?
はい。少年院送致や保護観察は「保護処分」とされるため、成人における「懲役刑」「罰金刑」とは異なり、前科には該当しません。ただし、少年事件記録が保管され、後に別の犯罪を起こした時に参照される可能性がある点は注意が必要です。
Q2:少年事件の記録はどれくらいの期間保存されるのでしょうか?
事件記録等保存規程では、少年保護事件に係る一定の事件記録等の保存期間を少年が26歳に達するまでの期間(第4条第1項・別表第一第21号)と規定する一方で、第9条第2項は、「記録又は事件書類で史料又は参考資料となるべきものは、保存期間満了の後も保存しなければならない。」としています。
Q3:成人後に犯罪を犯して逮捕された際、少年時の非行歴はどのように扱われるのですか?
捜査機関が被疑者の前歴を調べる際に少年事件記録を照会し、再犯リスクを判断したり、保釈の可否や量刑判断に影響を及ぼす場合があります。成人裁判で量刑を決定する際、過去の少年院送致や保護観察歴が重く見られると、厳罰化されやすいといえます。
Q4:少年の時の非行を就職などで企業に知られる可能性はありますか?
原則として、少年事件の記録は非公開なので、一般企業が自由に閲覧できる情報ではありません。ただし、マスコミ報道やSNS等を通じて、過去の少年院歴が判明するリスクはゼロではありません。
Q5:少年事件のときに弁護士が「今後のために反省しよう」と言うのは、成人後を見据えたアドバイスですか?
弁護士は、少年院送致を避けるためだけでなく、将来の人生において再犯や過去の記録が不利にならないよう、少年が本当に更生するための指導を重視しています。
Q6:少年院からの退院後、もう一度事件を起こしたら前回の少年院歴は量刑に影響しますか?
影響する可能性が高いです。成人後の裁判でも、過去に少年院送致歴があると「再犯性が高い」と判断され、厳罰化されやすいです。少年法上は前科にならなくとも、「非行歴」として評価されるのが実務です。
Q7:少年事件記録があっても、成人後に就職や資格取得ができる人はいますか?
十分にいます。少年事件記録は非公開のため、多くの場合、普通の就職では問われません。実際に立ち直り、社会で成功する少年も多数存在します。つまり、過去の少年院歴が一生を縛るわけではありません。
解説
少年事件の記録とは
少年法に基づき、家庭裁判所が審判を行った結果(保護観察や少年院送致など)や捜査段階の資料を総称して少年事件記録と呼びます。これには調査官の報告書、非行事実に関する証拠、家族・学校の意見などが含まれ、非公開が原則です。
保存期間と管理
事件記録等保存規程では、少年保護事件に係る一定の事件記録等の保存期間を少年が26歳に達するまでの期間(第4条第1項・別表第一第21号)と規定する一方で、第9条第2項は、「記録又は事件書類で史料又は参考資料となるべきものは、保存期間満了の後も保存しなければならない。」としています
成人後の影響パターン
- 再犯時の量刑
- 過去に少年院送致や保護観察があると、成人として犯した犯罪で「再犯性が高い」と評価
- 刑事裁判で厳罰(実刑)が選択されやすい
- 職業・資格制限
警察官、自衛官、弁護士など厳格な身辺調査がある職種で問題視される可能性(ケースバイケース) - 社会的信用
大多数の企業は前科照会システムを持たないが、高度な身辺調査される場合はリスクあり
付添人弁護士のアドバイス
少年事件で保護処分を回避・軽減できれば、記録があっても軽い内容にとどまり、成人後のリスクも相対的に低減されます。弁護士が示談交渉や反省文、家庭環境改善を提案し、不処分や保護観察など軽度の処分に導く努力をする理由は、少年の将来を守る意味合いが大きいのです。
意識すべきこと
- 少年期の非行経験が抹消される制度は日本にはない
- 成人後の再犯で過去の記録が参照され、厳罰につながるリスクがある
- 日常生活や普通の就職において、少年事件の記録が直接問題となることは一般的には少ない
- 付添人弁護士を活用し、できるだけ軽い処分と更生を目指すことが最善策
弁護士に相談するメリット
少年期の処分軽減
弁護士が付添人として家庭裁判所へ働きかけ、不必要に重い処分(少年院送致など)を回避することを模索します。記録が残るとしても、処分内容が軽ければ成人後への影響を最小限に抑えることが期待できます。
再非行予防策の立案
弁護士は少年と保護者の環境改善やカウンセリングを提案し、依存症治療や学校復帰をサポート。成人後に再犯しないよう取り組むことで、記録があっても問題化しない人生へ導く。
保護観察官・家庭裁判所との連携
弁護士が少年の更生プログラムを調整し、審判や保護観察で具体的な支援体制を報告すれば、裁判所の評価が向上して処分の軽減につながり、将来的なリスクを低減。
成人後に再犯した場合の弁護
万が一、成人後に犯罪を犯したときも、少年事件の経緯を把握している弁護士が再度の弁護人となれば、少年の事情を熟知しておりより的確な情状弁護を展開できる。少年時代の記録をどう扱うかも含めてサポート可能。
まとめ
少年事件の記録が成人後に与える影響は、少年法の理念「前科にならない」ものの、捜査機関が保存するデータや家庭裁判所の記録として一定期間残り、後の再犯や特定の職業選択時に影響が出る可能性がある点が重要です。以下のポイントを押さえ、少年事件の段階でできるだけ適切な処分(保護観察など)にとどめる努力を行うことで、将来へのリスクを最小限に抑えることができます。
- 少年院送致や保護観察は前科ではない
しかし記録は存在し、成人後に参照される場合も。 - 再犯時に厳罰化
過去の処分歴が「再犯性が高い」と見なされるリスク。 - 普通の就職で問題化は少ない
ただし、身辺調査は注意を要する。 - 付添人弁護士で軽処分へ
示談や反省文、再犯防止策を整え、少年院送致を回避する。 - 再犯防止が最善策
成人後に犯罪を犯さないことが、過去の少年事件の不利な影響を防ぐ最大の方策。
少年時に非行や犯罪を起こしてしまったら、一度は付添人弁護士の助言を受け、可能な限り軽い処分を得るための戦略を立てることをご検討ください。もし少年院送致など避けられない場合でも、その後のフォローや再犯防止策を徹底することで、成人後の人生に大きな影を落とさずに済むよう、弁護士法人長瀬総合法律事務所がサポートいたします。
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