被疑者・被告人の保釈請求と弁護士の役割

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はじめに

刑事事件で逮捕・勾留されると、被疑者・被告人は警察署や拘置所に身柄を拘束されることになります。しかし、日本の刑事訴訟法上、一定の要件を満たせば「保釈」という制度を利用して、公判が終わる前でも在宅で裁判を受ける道が開かれます。保釈が認められれば、仕事や学業を続けながら弁護士と十分に準備を進められるため、社会生活や家族へのダメージを抑えられるのが大きなメリットです。

ただし、保釈請求が認められるかどうかは事件の内容や被疑者・被告人の経歴、住居や職業の安定性、保釈金の用意など、多くの要素が考慮されます。特に暴力団関係事件や重度の依存症がある場合などは、保釈が認められにくいのが実情です。本稿では、被疑者・被告人の保釈請求に関わる基本的な仕組みや、弁護士がどのように支援し得るかを解説します。

Q&A

Q1:保釈請求は、逮捕後すぐにできますか?

日本の制度では、保釈請求は起訴後(被告人になった段階)でないと行えません。起訴前の段階での釈放を目指すならば、勾留そのものに対する準抗告や勾留理由開示請求による異議申し立てがメインとなります。起訴前の段階で「保釈」という手続きは原則存在しません。

Q2:保釈に必要な「保釈金」とはどのくらいですか?

事件の性質や被告人の経済力によって異なりますが、重大事件や財産犯の被害額が大きいケースでは高額に設定されがちです。保釈金は裁判が終了し、逃亡などの違反がなければ返還されます。ただし、条件に違反すると没取(没収)されるリスクがあります。

Q3:保釈が認められにくい事件とはどのようなケースでしょうか?

代表的には、殺人・強盗・重大な傷害などの凶悪事件薬物や暴力団関係で再犯リスク・逃亡リスクが高い事件などです。また、被告人が過去に保釈中に逃亡した経歴がある場合なども保釈は難しくなります。

ただし、弁護士が身元引受人や監督計画を周到に準備してアピールすれば、可能性を高められることはあります。

Q4:保釈が許可されても、どんな条件を守らなければならないのですか?

一般的に、住居の制限被害者への接触禁止などが付けられます。事件によっては、毎週の所在報告家族の監督誓約書などが課される場合もあります。これらを違反すると保釈取り消しや保釈金の没取、再勾留が行われる恐れがあります。

Q5:保釈金を用意できない場合、分割払いなどは認められませんか?

原則として、保釈金は全額一括で納付しなければ保釈は実行されません。ただし、保釈支援協会などの団体から借りる方法や、保釈金の一部を担保物件(不動産など)で賄う例もあります。

Q6:保釈金を納めるのは被告人本人でなければならないのですか?

実際には、被告人本人、家族・親戚、知人、弁護士名義など、誰が納付するかは自由です。ただし、誰が保釈金を用意するかも裁判所が判断材料に加味する場合があります。家族や企業が立て替えるケースもあります。

Q7:保釈金が没取されると、どうなりますか?

保釈中に逃亡接触禁止命令違反など重大なルール破りがあれば、裁判所は保釈を取り消し、納めた保釈金を没取します。さらに被告人は再度勾留され、今度は保釈が認められにくくなります。

Q8:保釈後に、仕事や家族のもとへ通常通り戻ることは可能でしょうか?

原則可能です。ただし、海外旅行や長期出張などは逃亡リスクと見なされる場合があり、事前に裁判所の許可が必要になることが多いです。また、保釈許可条件で「被害者に近づかない」といった制約があるので、その範囲内で生活することが求められます。

Q9:保釈された後に別の事件で逮捕されたら、保釈金はどうなりますか?

新たな事件で逮捕・起訴された場合、保釈取り消しとなる可能性が高く、保釈金が没取されるかもしれません。加えて再勾留されれば、新事件についても保釈が厳しくなるリスクがあります。

Q10:保釈請求を裁判所が却下したら、再度申し立てはできないのですか?

再度の保釈請求は可能です。却下された後も事情が変われば再請求が認められ、監督体制や身元引受人が強化されたり、示談成立などが起きれば状況が変わるため、弁護士が再度保釈を働きかけることができます。

解説

保釈請求の手続き

起訴後、被告人もしくは弁護人が保釈請求書を裁判所に提出。裁判所は逃亡・証拠隠滅のおそれがないかを中心に検討し、保釈を許可・不許可の決定を下します。認められれば保釈許可決定が出て、保釈金の納付が完了すれば被告人は釈放されます。

保釈金の額

裁判所は事件内容や被告人の資力、前科状況などから適正額を算定します。逃亡再犯のリスクが高いほど高額に設定される傾向です。医師や弁護士、企業経営者など収入が多い被告人の場合、保釈金は数百万円以上になることも珍しくありません。

保釈が認められやすい・認められにくいケース

  • 認められやすい例
    • 初犯で軽微な罪、住居・職業が安定、家族の監督体制が整っている
    • 被害者との示談が成立し、処罰感情が低い
    • 逃亡歴や違反歴がない
  • 認められにくい例
    • 殺人や強盗などの重大事件
    • 暴力団関係や再犯率の高い薬物事案
    • 過去に保釈中の逃亡・違反歴がある

保釈中の禁止事項

保釈許可書に条件が付されるのが通例で、例えば「海外旅行禁止」「被害者や共犯者への接触禁止」「住居の無断変更禁止」などが挙げられます。違反すれば保釈取り消しや保釈金没取、再勾留のリスクが非常に高いです。

弁護士が果たす役割

  1. 身元引受人や監督計画書の作成:保釈請求書と併せて提出し、裁判所に逃亡・隠滅のおそれが低いと示す
  2. 保釈金立替・担保交渉:保釈支援協会などを利用した資金確保を案内
  3. 保釈後の注意点:保釈条件を守るよう被告人に指導、違反を未然に防ぐ
  4. 再保釈申請:却下後に新たな事情が出てきた際、改めて保釈を求める

弁護士に相談するメリット

適切な保釈請求書の作成

弁護士が事件内容・被告人の環境を踏まえた説得力ある書面を整備し、保釈が認められる要素(身元引受人、監督体制、反省文、示談状況など)を具体的に示すことで、裁判所の心証を高められます。

スピーディーな手続き

私選弁護であれば、弁護士が逮捕直後から関与して状況を把握しているため、起訴後すぐに保釈請求書を提出できるなど機動的に動けます。

違反の防止策

保釈条件を被告人にしっかり説明し、違反しそうになったら弁護士に連絡するよう指導することで、保釈金没取や再勾留を避けるサポートが可能です。万が一のトラブル時には速やかに裁判所に相談・弁明するなど対応できます。

量刑上のプラス効果

保釈中に示談再発防止プログラム参加などを進めれば、公判での情状弁護に大きく活かせます。弁護士が連携して活動すれば、在宅状態でより密に裁判対策を行える利点が大きいです。

まとめ

被疑者・被告人の保釈請求は、逮捕後・起訴後の身体拘束を解き、社会内で防御活動(示談交渉・証拠収集など)を進められる大切な制度です。保釈が許可されれば、仕事や家庭へのダメージを軽減でき、執行猶予や量刑軽減のための準備も効率的に行えます。ただし、保釈が認められるには一定の要件を満たす必要があり、事案の内容や逃亡・隠滅リスクを低く示す監督計画が不可欠です。以下のポイントを踏まえ、早期から弁護士と連携して保釈の可能性を探ることが肝要です。

  1. 保釈請求は起訴後
    逮捕直後〜勾留中は、保釈ではなく準抗告での釈放を検討。
  2. 保釈金は後から返還される
    違反がなければ全額戻るが、違反で没取されるリスクあり。
  3. 認められやすい・認められにくい事件
    軽微な犯罪や初犯は有利、重大事件や暴力団事件は厳格審査。
  4. 保釈後の条件違反に要注意
    海外渡航や被害者接触など裁判所のルールを破ると取り消し。
  5. 弁護士が鍵
    保釈請求書と身元引受計画をきちんと作成し、審査を通す。違反が起きそうなら即対応。

もし逮捕後・勾留中で保釈を検討している状況、あるいは保釈金保釈条件に関して疑問がある場合は、お早めにご相談ください。事件内容や被告人の環境を踏まえた最適な戦略を提案し、裁判所に対する保釈請求をサポートします。


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