はじめに
刑事事件で有罪判決を受けた場合や、執行猶予で社会内に放たれた後に、同じ失敗を繰り返してしまうことは大きなリスクです。再犯を防ぐには、ただ「もう二度とやらない」と述べるだけでは不十分であり、依存症の克服や暴力衝動の制御など根本原因へのアプローチが必須となります。近年は、刑事司法の現場でも更生プログラムの重要性が認識され、保護観察所やNPO、専門医療機関が協力して再犯防止策を提供する流れが強まっています。
本稿では、再犯防止のための取り組みとして、具体的な更生プログラムの内容や種類、そしてその導入が刑事処分(量刑)に与える影響を解説します。事件を起こした人が二度と同じ罪を犯さないために何ができるのか、その具体策を学びましょう。
Q&A
Q1:更生プログラムにはどのような種類がありますか?
代表的なものとして、薬物依存を対象とした専門外来やリハビリ施設、飲酒運転防止のためのアルコール依存治療、DV加害者向けのカウンセリング、性犯罪加害者向けの認知行動療法などがあります。保護観察所が主催するグループワークや自治体の更生支援プログラムも存在します。
Q2:更生プログラムに参加すれば、本当に執行猶予や減刑が期待できるのですか?
参加だけで必ず軽くなるわけではありませんが、実際の実務では「具体的に再犯防止策を実践している」と裁判所に認められれば、執行猶予付き判決や量刑軽減の可能性は上がります。特に初犯や依存症が原因のケースでは効果的です。
Q3:更生プログラムを受ける費用は誰が負担するのでしょうか?
多くの場合、本人が自己負担します。民間施設や専門医療機関では治療費が高額になる場合もあります。経済的に困難なら、親族・知人の援助や自治体の補助制度を検討することが必要です。
Q4:薬物事件で依存症を治さずに出てきてしまうと、再犯率が高いと聞きますが?
薬物事件の再犯率は高い傾向にあります。専門の医療機関やリハビリ施設に通わず、ただ「もう使わない」と決意するだけでは意思が揺らぎやすいという面もあります。裁判所も依存症治療の見通しを重要視するため、プログラム受講や断薬継続に関する具体的計画があると量刑上有利に働きます。
Q5:アルコール依存の治療プログラムはどれくらいの期間かかるのですか?
個人差が大きいですが、継続的に治療やグループミーティングに参加する例もあります。
Q6:就職支援プログラムというのもあるのでしょうか?
はい。保護観察所や自治体、NPOが連携して就労支援を行うケースがあります。仕事を得ることで社会復帰をスムーズにし、再犯の動機(経済的困窮など)を減らす狙いがあります。刑務所出所者を支援するNPOも積極的に雇用サポートを実施しています。
解説
更生プログラムの目的
更生プログラムは、事件を起こした原因(依存、暴力衝動、思考の偏りなど)を根本から改善し、再犯リスクを下げることを主眼とします。プログラムの有効性が認められれば、裁判所は「被告人には社会内で更生する可能性がある」とみなし、執行猶予や減刑を求めやすくなります。
参加形態
- 任意参加:起訴前や執行猶予期間に自主的に参加
- 保護観察中の義務:裁判所がプログラムを特別遵守事項と定める
- 刑務所内の更生教育:受刑者が刑務所の教育プログラムを受講(性犯罪、薬物など)
プログラム内容の例
- 薬物依存プログラム
グループセラピーで自分の依存トリガーを把握し、再使用を回避するスキルを学ぶ。 - DV加害者プログラム
怒りの管理やパートナーとの対等なコミュニケーション手法を学ぶ。 - 飲酒運転防止プログラム
アルコール依存度をチェックし、飲酒運転の危険認知を深める教育を継続。 - 性犯罪者更生プログラム
被害者の視点理解、歪んだ思考パターンの修正、衝動管理技術の習得。
量刑への影響
更生プログラム受講の実績や指導者の評価は、裁判官が再犯防止策が機能すると判断する材料となり得ます。初犯かつ示談が成立していれば、執行猶予付き判決の可能性が上がります。再犯者でもプログラムを真剣に受講し、改善が見られれば前回よりも重い刑を避けられるかもしれません。
弁護士のサポート
- プログラムの選定
事件内容や依存状況を把握し、適切な施設や団体を紹介 - 公判でのアピール
既に受講を開始している事実、進捗レポートを提出し、量刑軽減を主張 - 継続的監督
保護観察所との連携や家族の協力体制を構築し、受講を途中断念しないようフォロー
弁護士に相談するメリット
最適なプログラム・施設の紹介
依存症やDV・性犯罪など多岐にわたるプログラムの中から、事件内容や加害者の背景に合ったものを弁護士が検討します。入所施設か通所型か、地域の支援機関かなど幅広い選択肢を比較検討。
裁判所への明確な説明
プログラムを受講するだけでなく、具体的な参加頻度や期間を公判で示すことで、裁判官に「再犯を防ぐ意思がある」と理解させやすい。弁護士が計画書や医師・カウンセラーの意見書を提出する場合もあります。
保護観察の特別遵守事項の調整
保護観察付き執行猶予で、どのプログラムにどれほど参加するかを裁判所と協議し、実行しやすい計画を弁護士が主導して作成。違反せず継続できるように制度設計を行う。
再犯時のダメージを最小限に
万一再犯しそうな兆候が出た段階で弁護士が早期に動き、依存治療の追加プログラムや家族サポートの強化を手配すれば、逮捕や勾留を回避できる可能性があります。再度の量刑でも被告人の更生可能性を示す資料となります。
まとめ
再犯防止のための取り組みと更生プログラムは、加害者が根本的原因(依存症・衝動制御など)を克服し、二度と犯罪に手を染めないための一つの手段です。裁判所も「被告人が更生プログラムを受ける具体的意欲と環境が整っている」と判断すれば、執行猶予や量刑軽減を検討する可能性があります。以下のポイントを意識して、弁護士とともに最善策を組み立てることが重要となります。
- プログラム選択の重要性
事件内容・依存の有無に応じて、専門外来や支援団体を活用。 - 単なる「やる気」の問題ではない
実際の通院・参加予約・施設の確保など具体策を示す。 - 保護観察付き執行猶予との併用
裁判所がプログラムを特別遵守事項にし、定期報告を義務付けるケースが増加。 - 弁護士のサポート
適切な施設紹介や公判での情状弁護を行う。
もし刑事事件を起こし、再犯リスクや依存症などを自覚している場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。更生プログラムの選定や裁判所への伝え方をアドバイスし、執行猶予や在宅処分、量刑減軽などの可能性を引き出す弁護活動をお手伝いいたします。
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