はじめに
逮捕や捜査を経て、検察官が起訴を決定した段階で、被疑者は被告人の立場となり、刑事裁判を受けることになります。刑事裁判(公判)で有罪が確定すれば前科がつき、場合によっては実刑として服役を余儀なくされるケースもあります。一方、示談や情状弁護が効果を発揮すれば、執行猶予や罰金刑で済む可能性もあるわけです。
本稿では、起訴後に受ける裁判手続きがどのように進行するのか、その大まかな流れや被告人として留意すべき点、そして弁護士がどのように弁護活動を展開するか解説します。初めて刑事裁判に臨む方にとって、手続きの全体像や主要ステップを知ることで不安を緩和し、弁護士と協力しながら最善の結果を追求する一助となれば幸いです。
Q&A
Q1:起訴されたら、すぐに裁判が始まるのですか?
起訴後、公判前整理手続きや準備手続きなどの段階を経て、実際の初公判(第1回公判期日)が設定されます。被疑者は「被告人」として扱われ、公判期日には裁判所に出廷する義務があります。事件内容や証拠の多寡によって、裁判開始まで数週間~数か月かかることもあります。
Q2:裁判はどのくらいの回数開かれるのでしょうか?
軽微な事件や略式罰金の対象なら1回の公判で終わることもありますが、争点が多い場合や重大事件だと数回~十数回以上にわたって開かれる例もあります。裁判員裁判に指定されるような重大事件では、証拠や証人の数が多く、審理期間が長期化します。
Q3:被告人は裁判中、何をすればいいのですか?
基本的には、弁護士と相談しながら自分の主張や証拠を準備し、公判期日に出席して起訴状朗読や検察官・弁護士の主張、証人尋問などを聞きつつ、必要に応じて陳述します。特に被告人質問では自分の言葉で事実関係や反省を述べることが重要です。
Q4:罪を認めたくない場合、無罪主張をするとどうなるのですか?
無罪主張をするなら、検察官が提示する証拠に対して弁護士とともに反論・反証し、無罪の証拠や証人を提出することが必要です。公判が長引く可能性が高いですが、もし証拠不十分や正当防衛などが認められれば無罪判決を得る道があります。
Q5:示談は起訴後でも有効ですか?
はい。起訴後でも公判中に示談が成立すれば、被告人の反省や被害者の処罰感情の変化を裁判所が考慮し、量刑を軽くする要因となります。判決直前に示談が成立して執行猶予判決になった例も少なくありません。
Q6:裁判は公開されると聞きました。プライバシーは守られないのでしょうか?
刑事裁判は原則公開ですが、事件内容や被害者のプライバシー保護が必要な場合、一部非公開(証人の一部非公開など)となることもあります。とはいえ、基本的には一般傍聴が可能であるため、実名や事件の詳細が公開の場に出るリスクがあります。
Q7:起訴された後、保釈を求める方法はありますか?
はい。日本の刑事訴訟法上、保釈請求が可能です。裁判所が「逃亡や証拠隠滅の恐れがない」と判断すれば、保釈金を納付する条件で在宅のまま裁判に臨めます。弁護士が保釈請求書を作成し、家族や職場の監督体制などを整備して認められるよう主張します。
Q8:検察官が「一部起訴、残りは不起訴」という形をとることはありますか?
可能です。たとえば複数の容疑がある場合、一部の容疑のみ起訴して他の容疑は不起訴(嫌疑不十分など)とする例もあります。検察が事件ごとに証拠を評価し、起訴すべきかどうかを個別判断する仕組みです。
Q9:裁判員裁判との違いは何ですか?
裁判員裁判は、殺人や強盗致死傷などの重大事件に適用される仕組みで、一般市民が裁判員として審理に参加します。通常の刑事裁判(裁判官のみ)に比べて、公判審理で被告人や証人への尋問がより丁寧に行われ、審理期間も長くなる傾向があります。
Q10:判決が出たあと、控訴などで争うことはできますか?
はい。第一審(地方裁判所)の判決に不服がある場合、被告人・弁護人は控訴して高等裁判所で再度審理を求めることが可能です。さらに高裁判決に不服があれば、最高裁判所へ上告できる場合もあります。
解説
起訴後の手続きの全体像
- 起訴(公判請求)
検察官が事件を裁判にかけると決定し、被疑者が被告人の地位になる - 公判前整理手続き(大きな事件や争点が多い場合)
証拠や争点をまとめ、裁判をスムーズに進めるための手続き - 初公判(第一回公判期日)
起訴状朗読、被告人の罪状認否(認めるか否認か)を行う - 証拠調べ・証人尋問
検察官が犯罪立証の証拠を提出、弁護側は反証や情状証拠を提示 - 論告・弁論
検察官が求刑、弁護士が最終弁論を行い、被告人が最終意見陳述 - 判決
有罪・無罪、量刑(罰金・懲役・執行猶予など)が言い渡される
公判前整理手続きの役割
争点と証拠を明確化し、公判で円滑に審理できるよう調整する手続きです。検察側・弁護側が提出する証拠を事前に整理し、どの部分が争点か、証人を何人呼ぶかなどを協議します。傷害事件や交通事故など争点が複雑な場合にもスピーディーな審理を目指すために行われます。
裁判での被告人の役割
- 罪状認否:起訴状に書かれた事実を認めるか否認するか
- 被告人質問:裁判官や検察官、弁護士から事実関係や動機、反省等を問いただされる
- 最終意見陳述:被告人が自分の言葉で最後に意見を述べる機会
被告人自身が誠実に経緯を説明し、反省の意思や示談の進捗を伝えることで、量刑に影響を与えることができます。
量刑判断の基準
裁判所は以下のような要素を踏まえて刑を決定します。
- 犯罪行為の悪質性:故意や計画性、暴力の程度など
- 被害者の被害状況:ケガの深刻度や示談有無、処罰感情
- 被告人の反省度合い・再発防止策:反省文や家族の監督体制、カウンセリング受講
- 前科前歴:同種犯罪の再犯か、初犯かなど
判決後の控訴・上告
地裁の第一審判決に納得がいかない場合、被告人・弁護人は14日以内に控訴でき、さらに高裁判決にも不服があれば上告できる制度があります。ただし、控訴や上告には一定の法的要件(判決に重大な誤りがある、量刑不当など)が求められ、単なる不満だけで認められるわけではありません。
弁護士に相談するメリット
公判前整理手続きでの戦略的対応
弁護士が裁判前に検察官との証拠整理を進め、争点を明確にしつつ、不要な争点を絞ることで迅速な審理を目指す。被告人が不利な証拠をどう扱うか、弁護側に有利な証拠をどう提出するか等の戦略を綿密に立案する。
執行猶予や減刑を狙う情状弁護
公判において示談成立や被告人の反省文、再発防止策を主張し、裁判所に「被告人を社会内で更生させる方が適切」と判断させるようアピールする。初犯や誠実な態度を強調し、実刑回避を目指す。
証拠調べ・証人尋問での弁護活動
- 検察提出の証拠に対する異議申立てや信用性のチェック
- 弁護側証人(被告人の家族や職場上司など)を呼び、被告人の人柄や生活環境を説明させる
- 専門家証人(交通事故の鑑定人、医師など)を用意する場合もあり、事故の過失割合や傷害の程度を争う
判決後の控訴・上告の検討
判決が出た後でも、量刑不当や事実誤認などを理由に控訴・上告を行うか否かの判断をサポート。再度の審理でより有利な結果を勝ち取るために、どのような論点を押さえて上級審に臨むかを指揮する。
まとめ
起訴後に受ける裁判手続きは、刑事事件の結果を決定づける最終ステージです。公判での審理を経て裁判所が判決を下し、有罪となれば前科がつき、罰金刑・懲役刑・執行猶予などが科されます。以下のポイントを理解しつつ、弁護士との連携を密に行うことが望ましいといえます。
- 公判前準備で争点・証拠を整理
弁護士が検察官と協議し、争点を明確化しつつ証拠過多を防ぐ。 - 示談成立や反省文は量刑を大きく左右
被害者が処罰意思を弱めていれば、執行猶予の可能性が高まる。 - 被告人質問で誠実に意見陳述
自分の言葉で事実関係・再発防止策をアピールする。 - 長期化する場合もある
複雑・重大な事件は何度も公判が開かれ、裁判員裁判が適用されることも。 - 弁護士が戦略的に弁護活動
有利な証拠提出、検察側証拠への異議、公判での情状主張で刑を軽く。
もし起訴され、公判を迎える状況にある方は弁護士へお早めにご相談ください。刑事裁判の経験豊富な弁護士が、示談交渉や裁判戦略を総合的に立案し、執行猶予や罰金刑で済ませるための最善を尽くします。
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