企業の刑事事件対応:暴行・傷害事件が発生した際の法的リスクと対応方法

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はじめに

Q:従業員が会社内外で暴行や傷害事件に関わった場合、企業としての対応や責任についてどのように考えればよいでしょうか?

A:企業内で従業員が暴行・傷害事件に関与した場合、まず刑事責任が個人にあることが一般的です。しかし、企業は場合によっては民事上の責任を負う可能性があり、被害者への示談交渉や損害賠償が必要になることもあります。従業員が業務中に事件を起こした場合や、企業の管理体制が問われるような状況では、企業としての対応が非常に重要です。以下では、具体的な事例をもとに、企業の責任範囲と対応方法について解説します。

1. 企業内で発生した暴行・傷害事件の責任範囲

企業が負うべき刑事・民事責任について

従業員が個人的に起こした暴行や傷害事件について、企業が直接刑事責任を負うことは基本的にはありません。刑法上の暴行罪や傷害罪は、実際に行為を行った個人に対して適用されるため、企業が刑事罰を受けることはありません。ただし、企業は「使用者責任」(民法第715条)に基づき、従業員が業務中に引き起こした損害に対する民事責任を負う場合があります。企業の管理体制が問われたり、業務中の行為と認定される場合には、企業としての対応が必要です。

2. 具体的な事例とその対応方法

事例1:建設会社における作業員同士の喧嘩による傷害事件

  • 状況
    建設会社で、作業員Aと作業員Bが作業中のトラブルから口論となり、やがて取っ組み合いの喧嘩に発展しました。喧嘩の中でAがBに暴力をふるい、Bが負傷しました。
  • 対応
    この場合、Aの行為は刑法上の傷害罪に該当する可能性が高く、刑事責任はAに帰属します。しかし、事件が業務時間中かつ職場で起きたことから、建設会社は「使用者責任」に基づいて民事責任を負う可能性があります。被害者であるBは、加害者であるAに加え、雇用主である建設会社にも損害賠償を請求することができるため、会社は責任を果たすために適切な対応が求められます。事件の早期解決を図るため、被害者と示談交渉を行い、適切な条件での解決を目指すことが推奨されます。

事例2:携帯販売店における従業員と顧客が口論となった結果の暴行事件

  • 状況
    携帯販売店で従業員Cが接客中に顧客Dとサービス内容について意見が対立し、口論に発展しました。口論がエスカレートした結果、従業員Cが顧客Dを突き飛ばし、Dが軽傷を負いました。
  • 対応
    このケースでは、Cの行為が暴行罪に該当する可能性があり、刑事責任はC個人にあります。しかし、業務中に発生した事件であるため、携帯販売店も「使用者責任」を問われる可能性があります。顧客Dは、従業員Cに対してだけでなく、販売店に対しても損害賠償請求が可能です。企業としては、従業員の行動が招いた結果に対して誠実な対応を示すためにも、示談交渉に協力し、解決を目指すことが望ましいです。

3. 企業が取るべき具体的な対応策

1.迅速かつ公正な事実調査

事件発生後は、関係者からの事情聴取を通じて正確な事実関係を確認することが重要です。第三者を交えた社内調査チームを編成し、事実の把握と証拠収集を徹底することで、適切な対処が可能になります。

2.被害者との示談交渉の支援

被害者との早期の和解を目指すため、企業として示談交渉に関与することが推奨されます。示談の際には、口外禁止条項や清算条項なども考慮し、再発防止を意識した解決策を模索します。示談交渉には弁護士のサポートを受けることで、法的に適切な対応が可能となります。

3.社内教育・再発防止策の導入

暴行・傷害事件の再発を防ぐため、従業員に対するマナーやコンプライアンス研修を定期的に実施し、職場環境の改善に取り組むことが重要です。特に、リスクの高い業務に従事する従業員には、トラブルが発生した場合の対処法や報告体制についても指導を行うことが有効です。

4. 弁護士に相談するメリット

企業内で刑事事件が発生した際には、早期に弁護士に相談することで以下のようなメリットが得られます。

  1. 法的リスクの軽減
    弁護士が関与することで、企業が負うべき責任の範囲を明確にし、法的リスクを最小限に抑えることができます。
  2. 交渉の円滑な進行
    示談交渉に弁護士が介入することで、被害者との交渉が円滑に進み、企業の負担が軽減されます。
  3. 再発防止策の提案
    弁護士からの指導により、法令遵守と職場環境の改善を両立させた再発防止策が講じられます。

まとめ

企業内で従業員が暴行・傷害事件を引き起こした場合、迅速で適切な対応が企業の信頼維持にとって不可欠です。特に「使用者責任」による民事責任が問われる可能性があるため、弁護士の助言を受けつつ、事実調査と示談交渉、再発防止に向けた対策を講じることが重要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、刑事事件に関する初回無料相談を行っております。ぜひお気軽にご相談ください。

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